水曜日の一限に(!)、芸術関係の学部で、実験的に「芸術の哲学」というか「芸術と哲学」の講義をやっている。今週は建築について。古代ギリシア建築と中世ゴシック建築について話す。来週は、20世紀の三大建築家とも言われる、ライト、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエについて話そうかと思っている。
それで毎週、授業外に補足のレクチャーをやろうと思っている。木曜5限にDVD観賞会などをしていこうと思っている。今日はフランク・ロイド・ライトについてのDVD。160人いた講義受講者に告知したにもかかわらず、参加者はたったの一人(先週はゼロ)。笑ってしまった。でも、そのたった一人の参加者がえらく興味を持ってくれたようでよかった。彼の話がなかなか面白かったので、来週は彼を授業の壇上に上げて、対話形式で授業を始めてみようかと思っている。
160人のうちの1人。でも、ここにうちの大学で私なりに戦うべき戦いがある気がする。
負け戦だろう。勝つのはいつも時流に乗っていくアクチュアルな「彼ら」だ。だが、それがどうした。
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今日はその鑑賞会の時間にちょうど「入学前教育」に関する報告会があったので、それに出席せねばならず、親しい学生にお願いして、代わりに観賞会をしてもらった。
「入学前教育」とは、授業を聞く以前に「人の話を黙って集中して聴く」「大学で友達を作る」ことに極度の困難を覚えている一部の学生たちに対して、「友達づくり」と「コミュニケーション能力の向上」を目指して入学直前に行われる教育のことである。企業の新入社員研修――近頃は「社の精神を叩き込む」場ではなく、やさしく、ソフトに行くのだそうだ――のようなものだと思ってもらってもいいかもしれない。私の理解した限りでは、要するに、ここ十数年、絶大な人気を誇っている「自己啓発」である。
学習困難な学生を大学に定着させようという意図に基づいて行われているこの取り組みには全面的に賛成である。プロジェクトの細部には多々改善の余地があるにせよ(なぜ桁外れの予算が請求されるに違いない外部発注なのかなど)、方向性そのものにはまったく異論がない。
しかし、この措置はあくまでも例外的措置として行われるべきものであり、大学全体がこれをモデルとして進んでいくことには危ういものを感じる。
私たちのような小さな大学の教員が忘れてはいけないこと、それは「私たちが手放してはいけないものは何か」ということだ。
受験者減・定員割れ対策、離学(休学・退学)率の低下が、地方私立大学の最優先課題であることは明白だ。問題は、何によってそれを達成しようとするのか、である。もちろん「あれか、これか」の二者択一ではない。「あれもこれも」の多方面からの同時展開が望ましいことは言うまでもない。
だが、本分が忘れられている気がする。何か新しいアクションを起こすことが、大学改革だと思われている。そのための箱モノ行政、外部発注。
学生と教員がお友達になることが離学率に歯止めをかけ、学生の勉強意欲を増進するのだ、と。そのためには、教員はできるかぎり大学にいて、学生の対応(話し相手!)をしなければならない、と。さまざまな小規模大学で、大学教員の「タイムカード制」が始まっている。
しかし、授業をいかに面白くするのか、それが一番大事であろう。そのために会議を減らし、無意味なお役所仕事的書類を減らし、委員会のための委員会を減らすことこそが、最も重要な大学改革であるという気さえする。どうでもいいことに丁寧に行き過ぎ、大切なことに時間が割けない。本末転倒だ。
直球勝負の学問は面白い。そのことを感じさせずに、なんの大学だろうか。
「そこ一番大事なとこ」をフォーカスせずに、なんの大学だろうか。
家や図書館にこもって、時間をかけて、静かに授業準備する、その当たり前のことが当たり前に理解されなくなりつつある。大量の会議に追われ、大量の書類に追われ、大量の講義を受け持たされ、大量の学生の話を聞かされ、責任ある対応を任される…。二週間ゼミに出てこなかった学生に電話をかけ、悩み相談に乗るというのは、私たちにとってもはや他人事の笑い話ではない。完全に日常になりつつある。
「学生は変わった」?「友達が作れなくなった」?「コミュニケーション力が落ちた」?なるほど、そうなのかもしれない。だが、最も変わったのは、大学が置かれた社会的状況・布置である。それまで「大学で教える」ということの意味について、「哲学と大学」というごく当たり前の考えるべき主題について考えをめぐらせてこなかった、「平和」な時代のツケを、私たちは今、支払わされているという思いが拭いきれない。
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いえ、DVDも面白かったのでむしろお手伝い出来て良かったです。芸学の男の子の話を聞いていたら「芸術の哲学」にも少し興味を持ったので、水曜日の授業も出てみようかなと思っています。
あと友達から先生宛てのメールが届いているのでそのまま転送しておきます。
なんだかえらくかしこまっていますが(笑)、
とにかく「前に受けた哲学より面白かった」「分かりやすかった」、「授業が始まったらいきなり静かになるのがすごい(神奈川の大学は授業崩壊?したりしていたらしいので)」との事でした^^
帰る頃にはうちの大学気に入ってたようなのでちょっと嬉しかったです。
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本日はf教授の授業に参加させていただき, また温かく受け入れて下さり有り難うございました。
在学中に哲学の授業を履修していましたが, f教授の生徒との触れ合いを織り交ぜた授業方針は
とても新鮮で, 90分をあっという間に感じる授業になりました。
またもし福岡に来た際は挨拶しに伺わさせていただきたいと思います。
本日は有り難うございました。