ずっと好きだった。曲の緻密なつくり、歌詞で展開するストーリーの秀逸さ、ふざけたライブパフォーマンスをやりきるサービス精神、自分の歌やピアノの技術に対する謙虚さ、音楽へのひたむきな情熱。業界はまったく違うのだが、いつも憧れていた。
去年刊行した著作の帯には《安息》の歌詞を、あとがきでは《エキストラ》をそのまま引用したかったのだが、著作権の関係で難しいということで、多少変えて使わせていただいた。
《エキストラ》はミュージシャンが音楽への愛を歌った歌だと思う。《かなわぬ恋なんて言うに及ばぬ途方にくれるような片思い 決してこの思いが届かなくても 大好きです それだけ》
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曲を分析的に聴いているからだろう。特徴を捉えて、自分のものにすることに長けている。元々ビリー・ジョエルっぽい曲、ビートルズっぽい曲などもけっこうあるが、日本のミュージシャンの特徴をうまく掬い取った曲も多い。Perfumeっぽい曲として作られた《REGIKOSTAR~レジ子スターの刺激~》(2010)や槇原敬之の楽曲を「理論的に分析」して作られた《車は走る》(2010)も悪くない。個人的に曲として好きなのは、ASKAを意識して作られた共作《予定どおりに偶然に》(2010)とスキマスイッチの20以上の曲を文字通りパズルのように自在に組み上げた《回奏パズル》(2017)である。
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もちろん何のご縁もなく、ライブに行ったこともなかったのだが、とても悲しく、最近は追悼のラジオや過去のライブ映像をよく聴いている。
追悼ラジオでは、槇原敬之さん、秦基博さんのもよかったが、スタレビの根本要さん、ウルフルズのトータス松本さんのラジオは特に好きだった。
過去のライブ映像としては、ミスチルの《and I love you》を歌っている映像が一番惹かれる。あの夏の感じ。もう何回観たか分からないくらい観ているが、何度観てもいい。
ライブ音源として好きなのは《予定通りに偶然に》。ASKAとのセッションは、アルバム版より好きだ。
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好きな曲は上に挙げた曲以外にも《50年後も》《永遠》《1989》《世界でいちばん好きな人》《けやき通りがいろづく頃》《よければ一緒に》《秋、多摩川にて》《カサナルキセキ》《君が好き 胸が痛い》《何の変哲もないLove Song》《Day By Day》《Moon》《まゆみ》《すべての悲しみにさよならするために》などなど、本当にたくさんあるのだが、《東京ライフ》は個人的に本当に好きなので、平井堅さんが名前を挙げてくれたり、
《ちょうどKANさんがベストアルバムを出す寸前だったんですね。The Very Best of KAN。で、そのときに私はもう、何様かという、ちょっとダメ出しをしてしまいまして。選曲にね。やれ《永遠》が入ってないだの、《東京ライフ》とか《恋する二人の[834km]》…いつも数字が覚えられない》(2008年1月のラジオ)
大江千里さんが2023年12月17日の追悼ラジオで《東京ライフ》をかけてくれたのはとてもうれしかった。
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心よりご冥福をお祈り申し上げます。