10月25日(日)仏文学会ワークショップ「分身について」での発表(レチフ?)@福岡大学⇒オンライン開催(提題者:阿尾安泰・相野毅・藤田尚志)
分身―その増殖のプロセス
コーディネーター・パネリスト:阿尾 安泰(九州大学)
パネリスト:相野 毅(佐賀大学)、藤田 尚志(九州産業大学)
分身というのは、月並みな問題のようにも思える。現代においては、文学、芸術のみならず、思想的、社会的問題にもなりうるほか、マンガ、アニメ、ゲームの世界にも見出すことができる。また歴史的に考えても、ナルシスの場合から考えていけば、その射程の広さも感じることができる。
それではこの主題は、そうした広がりの中に解消されていくに任せていけばいいのだろうか。 むしろこのテーマをそうした普遍性から離れて、ある種の特殊性の観点から探究してみたい。というのも、分身という問題が、19世紀以降特に大きな発展を見せていくように思われるからである。歴史的な長いスパンの中に現れる、この不均衡なプロセスに光を当ててみたい。なぜ19世紀以降に急にこの主題が広がっていくのだろうか。18世紀後半から19世紀、20世紀そして21世紀へと至る流れの中で何が変わったのだろうか。
こうした問題はこれまで、文学的な次元から個々のテクストの内的、構造的な分析等を通じてアプローチされることが多かった。確かにそうした方向で研究の深化を図る道もあるだろうが、それに加えて、自己と他なるものが取り結ぶ関係の中にこの問題を広く位置づけながら、 従来とは異なる方向にも探究を向けていきたい。意識に関わる哲学的な観点、また可視性の変貌などをめぐる認識論的なアプローチも考えられるだろう。さらに分身という主題体系が作り出す作品群を享受する層の発生を巡る文化論的探求、政治、社会状況の変化の下での新たなメディアの出現という観点からの分析も想定できるかもしれない。このワークショップにおいては、そうした主題出現の条件、出現をもたらした環境の変容に重点を置いて考えてみたい。
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