Friday, October 06, 2023

NAVIGOと銀行の話

普通に研究者として滞在しているだけなら、日本のクレジットカードだけでほぼ対応できると思いますが、子どもが絡んだり、病気が関係すると、少し事情が違ってくるかもしれません。今回の滞在ではかなり苦い思いを何度もしたので、後続の人のために記しておきます(あくまで個人の体験談なので、正確さは保証の限りではありません)。

子どもが毎日パリの高校に通うとなると、NAVIGO Imagine R(イマジネールと読む)Scolaireという定期券を買った方がよい。メトロの切符一枚が2ユーロ少々。往復で4ユーロ少々、一週間で20ユーロ、年間に100日程度休みがあるそうだから、30週通うとして、単純計算で600ユーロかかる。上述の定期だと年間370ユーロ前後なので、定期を買うという選択肢一択である。9月4日(月)に作業開始。

ここでクレカの問題になる。NAVIGOのアカウントを作り、Imagine Rの申し込みをしようとしても、どうしても最後の段階で日本の銀行のクレカの情報を受け付けてくれない。

2023年9月5日(火)近くの小さな駅に行って、駅員に尋ねる。ネットでしか受け付けは出来ないとのこと。定期は駅で簡単に買えるだろうという甘い期待は打ち砕かれる。

しょうがないので、カスタマーサービスに電話をするのだが、サービスのクオリティが信じられないくらいひどい。悪夢のような悪循環を4回繰り返した。

A1:NAVIGOの電話カスタマーサービス:「駅のサービスカウンターでないと出来ません。とにかく駅に行ってください」

9月16日(土)どうしようもないので、駅に行く。どこの駅でもいいというわけではない。いくつかの大きな駅しか駄目。私はサンラザール駅に行った。

B1:駅のNAVIGOサービスカウンター:毎回人によって言うことが違う。一回目の説明:あなたは子供の名前でアカウントを作っていた。それが入金できなかった原因」。アカウントを私の名前に変え、すべての情報変更をやってくれた。しかし入金出来ない。家族の病気のこともあり、抜本的な対策を見出せぬまま、ただクレカの入力を試しては失敗するということを繰り返しながら、十日以上が過ぎていった。

A2:気持ちを奮い立たせて「どうしてもクレカの情報を入れられない」と電話で訴えると、「明日やり直してください」。すでに二週間以上やっているんだが、というと「明日やり直してください」という無表情な青年の声。いや、だからこちらとしては手は尽くして、どうしていいかわからないから電話してるんです。「明日やり直してください」。いやそうですか、どうもありがとうございました、と電話を切る。

怒りを抑えてもう一度電話すると、今度は若い女性の的確な指示(のように聞こえた):「生年月日と性別が違っていたから(だけど、それは駅の係の人がやったんだけどね)、出来なかったんだと思います。残念ながら生年月日の変更は駅の窓口でしか出来ないので、行ってみてください」

B2:9月20日(水)二度目のサンラザール駅:駅に行って性別と生年月日を変更してもらう。しかしクレカの入力は出来ない。二回目の説明:「申請を一度すべて取り消して、もう一度初めから申請し直すしかない」。もう一度最初から申請し直すも、クレカの入金は出来ず。疲れ果てて帰る。

しょうがなく、フランスの銀行口座を作ることにする。ところが、研究滞在であり、しかもある研究者のお宅に間借りさせてもらっているので、税法的にはséjournerであって、résiderではないらしく、普通の支店では口座を作れないという(BNP Paribasのパンテオン支店でそう言われた)。それでBNPのアジア方面専用だというオペラ支店に電話したり、BNPのHPで予約したりしたのだが、一向に返事がない。

A3:どうしても入金できないんですがと電話すると、またしてもあの青年。「明日やり直してください」。この人には一週間の間に二度当たったので、Réessayez demainという言葉を自動音声のように繰り返すフランス人青年の声が今も耳にこびりついている。

向こうからは何も提案してこないので、こちらから「駅の窓口で現金で入金できるのか?」と訊くと、「できます」との答え。「本当にそうなのか?もう二度も駅に行ってるんだが」ともう一度念を押すと、うんざりしたような溜息とともに「そうです」との答え。うんざりしているのはこちらなのだが。

B3:9月21日(木)三度目のサンラザール駅:駅の窓口「二回目以降はたしかに現金で入金できますが、一回目だけはクレカ(CB)でないとダメです」。日本のクレカも使えず、フランスの銀行に口座を作れず、困っているのだがと相談すると、Nickelというカードならタバコ屋で簡単に作れるという。「これ以上詳しいこと(あなたが入金できない原因)は私たちには分かりません。NAVIGOのカスタマーサービスに問い合わせてください」。疲れ果てて帰る。

ちなみに、出来る限り親切に対応してくれたこの駅員は、NAVIGOのカスタマーサービスの質の悪さについて、こう推測していた。「今は新学期で大量の問い合わせが来ていて、アルバイトが大量に雇われていますが、必ずしもしっかりとした教育を受けないままに現場に出されているので、適当なことを言ってしまうんだと思います」。まあ、銀行の窓口でも、クロノポストのカスタマーサービスでも、郵便局の窓口でも対応の悪さは同じだったのだが、「新学期」「アルバイト」というのはたしかに関係しているかもしれない。

ところが、NICKELの口座をネットで作ろうとすると、最初の質問がDans quel pays résidez-vous?であり、しかも対象国がヨーロッパ諸国しかない。これでは作れないのでは…?

途方に暮れていると、最近親しくなったカンボジア系フランス人のビジネスマンがRevolutというイギリスのネット銀行なら住所などの情報もなしで数分で口座を作れるよ、と提案してくれた。実際、早速口座は作れた。もちろんお金はまったく入っていないのだが。口座情報を入力すると、なぜかNAVIGO Imagine R Scolaireの申請は受諾される。

B4:しかし、実際問題として引き落としが出来ず、また申請が却下されては元も子もない。そこで週明けに早速、駅に向かう。

9月25日(月)駅の窓口に前述の友人(カンボジア系のフランス人)が一緒に行ってくれるというので待ち合わせ。彼はサンシールの陸軍士官学校を出たという経歴の持ち主で、私の周りにはあまりいない、いわゆるビジネスエリート?なので、話していると、世界がまったく違っていて面白い。

待ち合わせ場所は、将校(と関係者)しか入れないというCercle national des Armées。今後二度と来なさそうな、威圧感のある場所でしばらくお茶をして、いざサンラザール駅へ。

駅員の説明:「なぜかわからないけど、8回の分割払いになっていて(私は一回払いで申し込んでいた)、最初の一回目が引き落とされていないので、利息として8ユーロかかっている。一回目に関しては現金で払えるが、全額を今すべて現金払いすることはできない」。

もはや理解することを諦め、とにかく一回目の支払いだけ現金で済ませる。

9月25日(月)の夜に「imagine R : Demande de souscription validée et passe en cours de fabrication」というメールを受け取る。

残りの支払いは何としてもRevolutで済ませねばならない。ところが、入金しようとすると、最後に日本のクレカからお金を入れる段階でまたもストップ。日本の銀行側がストップをかけているという。クレジットカード専用の電話窓口にわざわざ国際電話をかけても、「Revolut?なんですかそれ?クレカで銀行に入金?」という対応であった。

しかし「入金=チャージ」であることを説明すると、「それなら可能かも」となり、上司との相談を経て「できます」に変化。これが9月28日(木)のことである。最終的には入金できたので良かったのだが、AIが自動識別でストップをかけているため、今後もいちいち入金のたびに日本の銀行に国際電話をかけることが必要だと言われた。そんな入金ってありますか・・・?福岡の銀行だからなのか?日本の銀行全般がそうなのか?

ともあれ、これで一件落着である。9月4日から始めて、すべての手続きを終了したのが9月25日、子どもの手に定期が渡ったのが9月30日である。この件だけで三週間以上を費やしました。もちろん、私の情報不足、認識不足が原因かもしれず、もっと簡便に済ませることもできたのかもしれませんが、、

ここまでくると、やはりフランスの銀行口座も開いておいた方が安全だという結論に至り、クレディ・リヨネで口座を開くことにしました。

パリに腰を据えて生活をされている方はこういう経験はないと思いますが、一年だけの研究滞在で家族同伴という場合は、上記のようなケースもありうると思います。

No comments: