みなさん、こんにちは。
しばらくご無沙汰していたのは、5月17日リールで開催された「ベルクソンをめぐって」という小さなコロックでの発表を準備するためでありました。
コロックと言っても、「研究発表会」のようなもので聴講者も多くて20人程度、発表者も私ともう一人の博士課程の学生K(といっても彼はAMNというお偉い肩書きがあるので、私と同列に並べるわけには行きませんが)を除けば、DEAの学生ばかり。
当たり前の話だけれど、やっぱりフランスの「制度」の外にいるんだなという疎外感を感じますね。例えば、Kとは普段けっこう親しくしていて、ほとんど毎週のように一緒に飲みに行ったりもする仲なのだけれど、彼などはアグレジェ(大学教員資格保持者)で、AMN(Assistant Moniteur Normalien「高等師範学院研修奨学生」とでも言えばいいのかな)。要するにフランスのエリート中のエリート。コロックでも期待を集めているのがよく分かる。
私なんて片言のフランス語で30分程度の発表を準備するのに息絶え絶え。自分でも拙い物言いしかできていないと言うことが分かるだけに、会う人皆「発表よかったよ」などと言ってくれるのがPCのようでよけいにつらい…。後から聞いてみると、Kの発表は私の指導教官が今秋刊行する予定の『二源泉』に関する論文集[2005年の註:Les Annales bergsoniennes, volume I]への掲載を打診されていると聞いて、なおさらがっかり。
まあでもそういう「利害関係」ないし「羨望」を抜きにすれば、エリート候補生の生態を間近から眺めているのは面白い。僕の知っている数人はいずれも、仕事ぶりは凄まじい。授業を行ない、授業を受け、博論を執筆する徹底して合理的な生活運営(とりわけ博論執筆を進める腕力、確立されたメソッドに則って着実に博論を前に進めていく手腕)。それでいて生活に優雅さが欠けているわけではない。フランス人である彼らはむろんバカンスをこよなく愛している。こういう奴らがゆくゆくは大学教授になっていくのかと思いますね。
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さて、コロックを終えて、アムステルダムへ行ってきました。そうです、極右党首が選挙の数日前に暗殺され、その後その極右政党が第二党に躍進したというあのオランダです(ちなみに途中で乗り換えた駅はこれまた住民の30%が極右支持というとんでもない町、アントワープでした)。。。
ハーグでも途中下車し、マウリッツハイスへ。フェルメールの「真珠の少女」「デルフトの眺望」、レンブラントの「老自画像」、ヴェイデンの「ピエタ」、ホルバインもなかなかいいです。sさんもヨーロッパへお立ち寄りの際には、オランダも良いかもしれませんよ。
翌日は、ハーレムと言うアムス近郊の町で自転車を借りてサイクリング。十年に一度とかいう「フロリアーデ」という日本でいう「花博」のようなものを見物してきました。ああいうのはパビリオンより屋外に力を入れたほうが良いですね。とても気持ちのいい一日でした。
そしてアムスでは、話題の「ゴッホ&ゴーギャン展」。タヒチ以前のゴーギャンをまとめて見られたのはよかった。かなりゴッホ偏重な解説だけれど、ゴッホ美術館なので仕方ない。
あと、アムスAMSでよかったのは本屋。英・独の原書がけっこうあって(オランダ語と半々くらい)、リールで英語の本欠乏症の私は、思わずジジェクのイデオロギーアンソロジーを買ってしまいました。そこで知ったんですが、ジュディス・バトラーって、ガダマーのもとでヘーゲルの欲望概念についての博論を書いたようですね。[2005年の註:より正確に言えば、"Subjects of Desire is my 1984 dissertation, revised in 1985-86. I wrote on the concept of desire, concentrating on Hegel's Phenomenology of Spirit and some of the central appropriations of that theme in twentieth-century French philosophy. Prior to my graduate studies, I was a Fulbright Scholar studying Hegel and German Idealism at the Heidelberg Universität, attending the seminars and lectures of Dieter Henrich and Hans-Georg Gadamer. (...) I wrote the dissertation under Maurice Natanson, a phenomenologist (...)" (Judith Butler, Subjects of Desire, Hegelian Reflections in Twentieth-Century France (1987), Paperback Edition with a new Preface, New York: Columbia University Press, 1999, p. vii).]
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