毎日少しずつ読み進めて、ようやく読み終わった。
秦剛平(はた・ごうへい)
『美術で読み解く 聖母マリアとキリスト教伝説』、ちくま学芸文庫、2009年12月。2011年6月15日読了。
『美術で読み解く 旧約聖書の真実』、ちくま学芸文庫、2009年11月。2011年8月9日読了。
『美術で読み解く 新約聖書の真実』、ちくま学芸文庫、2009年10月。2001年8月29日読了。
個人的に一番おもしろかった(お勉強になった)のは『聖母マリア~』。次が『旧約』。それでも彼の強烈な(学者にありがちな)「個性」にはいささか辟易する。彼の言う「真実」――「キリスト教の隠された秘密」「名画の裏に隠されたキリスト教の衝撃の秘密」――は、裏表紙を読んで予想できる類のもの。収穫はもっと末端の具体的な事柄。
残念なのは、これだけ絵を見せていながら、まったく「絵を観ている」気になれないこと。単なる聖書物語の図解になってしまっており、「美術で読み解く」ことになっていない。神が描かれるべき場所に、三重冠を被った教皇が描かれるという醜悪な伝統が中世に出来上がってきた、などなど、一つ一つの絵をじっくり観なくても分かるようなことばかり。
したがって、この三冊の一番正しい読み方は、『新約聖書』『旧約聖書』および聖書外典のストーリーを、有名な絵とともに追いかけられるという入門書的な読み方だと思う。この場面の絵ならこれ、といった「おさらい」にはきわめて有益。
それから、いろいろな重要著作の翻訳家でもあられるらしく、ユダヤ史家ヨセフスや教会史家エウセビオスなどの名前に親近感を持てるようになったのもよかった。
キリスト教絵画をさらっと復習したいという人はご一読ください。
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