Friday, January 19, 2007

短すぎる夏の輝きよ―阿部良雄墜つ

個人的な面識はなかったが、常々仏文学者、いや端的に学者の典型のような人だと敬意を抱いていた(2000年6月1日の項。MLの気安さも手伝ってとんでもなく若い)。確か彼がノルマルへの留学第一号ではなかったか。今、仏文科の学生はフランスで博論を書くのがかなり当たり前になりつつある。彼以降の先人たちの地道な、継続的な努力のおかげである。

制度を整えていくには、友愛と信頼に支えられた連携作業が必要不可欠である。

私がフランス詩をいくらか暗誦するようになったのは、フランスに行く一年ほど前だったろうか。友人たちが彼の家に招かれ、詩の暗誦大会などをやって楽しんだ、という話を伝え聞いてからであった。

それまでは「詩を暗誦する」などとはなんとなくスノッブで厭だったのだが、その話を聞いて肩の力が抜けた気がした。そうか、そんな風にワイワイやってもいいのか、それなら自分にも出来そうだな、と。

フランス語の練習ももちろん兼ねていた。詩の暗誦は今もやる。言葉はスポーツと同じだ。やればやっただけ上達するし、やらなければ忘れる。プロとしての心構え。これも私が阿部良雄から(一人合点して)受け取った「教え」の一つかもしれない。

Bientôt nous plongerons dans les froides ténèbres ;
Adieu, vive clarté de nos étés trop courts!


<訃報>阿部良雄さん74歳=東京大名誉教授、仏文学者
1月18日0時43分配信 毎日新聞

 阿部良雄さん74歳(あべ・よしお=東京大名誉教授、仏文学者)17日、急性心筋こうそくのため死去。葬儀は25日午前11時、東京都渋谷区西原2の42の1の代々幡斎場。自宅は非公表。喪主は妻文子(ふみこ)さん。ボードレール研究で知られ、著書に「西欧との対話」などがある。95年度に和辻哲郎文化賞を受賞。
最終更新:1月18日0時43分

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