Thursday, January 25, 2007

ベント・プラドJr.逝去


ベント・プラドJr.が亡くなった。私が『ベルクソン読本』の「世界におけるベルクソン研究の動向」で特筆していた人物の一人である。これで日本にお呼びすることが永遠に叶わなくなった。享年69歳。

今年の十二月にはサン・パウロでも『創造的進化』百周年ブラジル版が予定されており、彼が主催者の一人として名を連ねていた(実質的な責任者であった)だけに、さぞ無念であったろう。ようやくフランスでも彼の仕事が認知されつつあったというのに。

せめてもの手向けに、FAPESP(Fundação de Amparo à Pesquisa do Estado de São Paulo サンパウロ州研究支援財団?)の「おくやみ」を生齧りのポルトガル語から翻訳しておく(したがって正確さは保証のかぎりではありません)。

日本でもせめてベルクソン研究の文脈において彼の業績がきちんと導入され吸収・消化されることを祈ってやまない。



ベント・プラドJr.逝去、享年69歳

FAPESP通信 哲学者のベント・プラドJr.氏が1月12日金曜日の午前1時ごろ、サンカルロスの病院で亡くなった。享年69歳。ブラジルの哲学界を代表する人物の一人であった氏は、サンカルロス連邦大学(UFSCar)の哲学・科学方法論科で教鞭をとっていた。

UFSCarの発表によると、死因は喉頭がんの悪化による心肺機能停止。埋葬は同日、サンカルロスの墓地にて執り行われた。

UFSCar哲学科長 José Eduardo Marques Baioni 氏は、プラド氏をブラジルにおける哲学研究の構築における主要人物の一人であり、「哲学、文学、芸術の間のきわめて興味深い境界領域を、卓越した手腕をもって探求していた、偉大な著述家」であった、と語っている。

ベント・プラドJr.の哲学への最も偉大な寄与の一つは、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンに関する業績である。1965年に諮問を経た彼の博士論文『現前と超越論的領野。ベルクソン哲学における意識と否定性』は、今もこの主題に関する国際的なレフェランスであり続けている[そのとおりである!]。本書は2002年に翻訳され、フランスで出版された。

「ベルクソンをめぐるあらゆる研究は、サルトルやメルロ=ポンティを含む二十世紀のフランス現象学についての研究同様、ベント・プラドの諸研究との対話を続けることを必要とする」とバイオニは語っている。

サンパウロのJaúで生まれた Bento Prado de Almeida Ferraz Júnior は、1961年から1969年までサンパウロ大学で教鞭をとっていたが、軍事独裁政権が倒れ、大統領令によって大学から追放された。同法令によってCaio Prado Júnior、Octavio IanniやFernando Henrique Cardosoなど23人の教員が退職を余儀なくされた。1998年に、USPの名誉教授号を得た。

1970年から1974年まで、プラドは、フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者としてポストドクター職を得た。1977年にUFSCarに入る。

なによりもまず教育者

最近、プラドは、20世紀のフランス現象学とアングロサクソンの分析哲学が共通の根を持ち、繋がりを保ち続けていることを示す研究を展開していた。

「2006年の最後まで彼は授業を続け、大学院の学生を指導し続けていた。2007年度に予定されている哲学科の学部の授業の編成を主に担当するなど、最後までUFSCarに重要な遺産を残した」とバイオニは語る。

「ベント・プラドのおかげで、私は教育的で啓発的な哲学研究というものが存在するという感覚を学びました。したがって彼のおかげで私は、学生と知の間に先生がしゃしゃり出てこない場合に哲学教育というものがあるということを学んだのです[…]。学生自身が「先生」になりえたとき、哲学教育というものは成り立つ。なぜなら、先生とはすべての者に開かれた、無限の研究のサインに他ならないからです。言葉を換えて言えば、ベント・プラド先生のおかげで、私は教え学ぶことに潜む自由の感覚を発見したのです」と、哲学者 Marilena Chauí さんは雑誌『高等研究』(Estudos Avançados)2003年号に発表された論文の中で語っていた。現在USPで教鞭をとる彼女は、かつて1967年にDEA課程に在籍しベント・プラドの指導を受けたのであった。

ベント・プラドはまた、カンピナス州立大学(Unicamp)やサンパウロ州立大学(Unesp)、カトリック司教大学(PUC-SP)などの機関でも研究に従事していた。

ベルクソンの哲学以外に、ベント・プラドJr.氏は、哲学史、認知哲学・言語哲学、心理学・精神分析のエピステモロジーなどの領域で活躍した。代表作には上記の博士論文のほかに、
『幾つかの試論:哲学、文学、精神分析』(Alguns ensaios: Filosofia, literatura e psicanálise),
『誤謬、錯覚、狂気』(Erro, ilusão, loucura
『精神分析の哲学』(Filosofia da psicanálise
などがある。

1 comment:

Anonymous said...

Thanks for writing this.