講義を準備すべく、ドゥルーズの『アベセデール』を観直している。オペラと題してOの項で語っているのだが、音楽体験についての対話が面白かった。
パルネ曰く、あんたは音楽についてけっこう語っているけど、実際にはほとんど音楽は聴かない(コンサートには行かない)し、ましてやオペラはベルクの『ルル』や『ヴォツェック』だけ好んで聴いている。そして日常的には大衆歌謡、特にピアフ(とかクロード・フランソワ)が好きじゃないかと。
そしてとどめの言葉。映画や絵画についてはまるまる一冊(以上)本を書いているのに、音楽については書いてない。あんたはほんとはvisuelな人間なんじゃないか、と。
これに対するドゥルーズの答えは揺らいでいる。グールドのコンサート・ドロップアウトに関する説明がそうであるように。
・コンサートにほとんど行かないのは、コンサートの予約は展覧会に行くより手間がかかるから。
・コンサートは自分のréceptivitéを超えているから。
・音楽について語るのはきわめて難しいから。
しかし、文章を書いたり読んだりすることの中で、自分にとって最も重要な要素が聴覚的なものである点で、やはり自分は音楽的なのだ、と強調していた。
ドゥルーズと音楽の関係は見かけ以上にねじれた関係なのかもしれない。
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