Thursday, January 28, 2016

【クリップ】「後でちゃんとやる」が口ぐせ。多忙な”ジャグリング男子”との付き合い方

ジャグリング男子。。



「後でちゃんとやる」が口ぐせ。多忙な”ジャグリング男子”との付き合い方

「後でちゃんとやる」が口ぐせ。多忙な”ジャグリング男子”との付き合い方

“恋バナ収集ユニット”桃山商事のメンバーが、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』!
◆今回のお悩み◆
・彼がいつも忙しくてなかなか会えない
・仕事が繁忙期に入ると、メールの返信もよこさなくなる
・「落ち着いたら旅行にいこう」と何度も言われているが、一度も落ち着いたことがない
・忙しさを理由に家事や子育てに非協力的

●この本がなぜ恋愛と関係あるのか

■「いつも時間がない」男性、あなたの近くにもいませんか?
 今回は、読者のみなさんがおそらく一度は出会ったことのあるタイプの男性について考えていきます。ひょっとしたら、今の彼氏や夫がまさに当てはまる方もいるかもしれません。
 それは「いつも時間がない」男性です。仕事に常に追われていて、なかなか会えないどころかメールの返信さえなくなり、一時的に音信不通になることもしばしば。結婚していても毎日帰りが遅くて、共働きなのに家事や子育てをしない。「ひと段落したら旅行にいこう」と口にはするが、いつまで経っても「ひと段落」する気配がない……こういったタイプの男性です。

■多忙・カードローンの悩み・ダイエットに共通するもの
 ここで取り上げる書籍は、行動経済学者のセンディル・ムッライナタンさんと、エルダー・シャフィールさんの著書『いつも「時間がない」あなたに』です。タイトルだけ見ると、いかにもライフハック系の時間管理術の本に見えます。しかし、本書はそれよりもずっと射程範囲の広いテーマを扱っています。
 これは「欠乏」についての本です。本書によると欠乏とは「自分が持っているものが必要と感じるものよりも少ないと感じること」で、言うなれば「足りていない!」という主観的な感覚です。この感覚はさまざまな問題と直結しています。(・・・)
 このように時間やお金に欠乏を感じている時に、人の心には何が起こるのか。また、それがどのように選択や行動を決定するのかを、著者たちは豊富な研究事例を挙げて論じています。

■欠乏は「処理能力」の低下を招く
 欠乏が人の心に及ぼす最大の影響は、「処理能力の低下」を招くことです。処理能力とは「計算する能力、注意を払う能力、賢明な決断をする能力、計画を守る能力、そして誘惑に抗する能力」のことで、人が意識的に行うほとんどの活動に関係します。
 欠乏が処理能力を低下させるのは、それが人の心を占拠するからです。例えば仕事の締め切り間近で切迫している時には、家にいてもついそのことを考えてしまいます。(・・・)
 これは、バックグラウンドで重いプログラムを開いているパソコンに似ています。重いプログラムはパソコンの処理能力を消費して、動作を鈍らせる。同様に欠乏も、人の心のプロセッサーに負荷をかけ続けることによって、目前の事柄に向けられる心を少なくします。
 忙しい仕事の合間にアマゾンで衝動的に爆買いしてしまうときには、処理能力が低下していて「賢明な決断」ができなくなっているのです。
 次のページでは、欠乏がもたらす具体的な選択や行動についてさらに見ていきます。
多忙な“ジャグリング男子“とは?
■「ほったらかし」の原因となるトンネリング
 欠乏を感じると、人はそのことだけに集中します。仕事で締切を設定することは、時間的な欠乏状態を意図的につくっていることであり、これは欠乏のポジティブな側面です。
 しかし1つのことに集中することは、他のことをほったらかすことにほかなりません。「本やテレビ番組に夢中になりすぎて、隣にすわっている友人からの質問に気づかなかった経験」は誰にでもあるでしょう。いわゆる視野狭窄の状態です。欠乏によって目前の切迫した問題への対処だけに心がとらわれ、視野狭窄に陥ることを、本書は「トンネリング」と呼んでいます。トンネルの内側のものは鮮明に見える一方で、トンネルに入らない周辺のものは何も見えなくなります。

■多忙と欠乏の共犯関係
 このようにトンネリングを起こしている人は、締切が目前に迫った「重要かつ緊急なこと」だけに集中し、放置しても平気な「重要だが緊急でないこと」を先延ばしにします。
 1ページ目で例として挙げた「いつも忙しい男性」にとっての彼女と会う約束やメールの返信、家事、子育て、旅行の計画もこれに当たります。また、仕事中でも、「重要だが緊急でない案件」は後回しにします。「いますぐやらなくてはならないことがほかにある」からです。
 これはローンの借り換えに似ています。昨日から今日に延ばしたことのせいで、今日やろうとしたことが先送りになります。しかし、次にやろうとしたときに前より時間がたくさんあるわけではありません。そこで時間という負債を次々に借り換えていきますが、ローンの利子と同じように、後回しにした仕事を片付けるには、本来かかる時間よりも少しだけ余分な時間がかかります。
 こうして、多忙と欠乏は「手に手を取って」進んでいくのです。

■ジャグリングとは何か
 トンネリングが続くと、やがて著者が「ジャグリング」と呼ぶ状態に突入します。それは「緊急の課題を曲芸並に次から次へとやりくりすること」です。ジャグリングに陥った状況を、著者は次のように記述しています。〈(空中にはたくさんのボールが投げられているが)落ちようとしているボールに集中するせいで、どうしても全体像を見ることはできない。遅れを取り戻そうと躍起になるのをやめたいのはやまやまだが、やるべきことがありすぎて、どうすればいいかわからない。いまはあのプロジェクトの期限を守らなくてはならない。長期的な計画は明らかにトンネルの外だ。〉(本書p.172)
 このように、欠乏は処理能力に負荷をかけて人の心を占拠し、彼を「今」に縛りつけます。明日も時間が乏しいかも知れませんが、それは別の問題なので放っておきます。しかし気付いたときにはそれが「今」の問題としていきなり目前に迫り、焦ってその場しのぎの対応をすることになる……「なぜ、あらかじめ決まっている出来事を、まるで突然の出来事であるかのように受け止めているのだろう?」。
 これが、多くの「いつも時間がない」男性に起こっていることです。
 言うなれば彼らは“ジャグリング男子”なのです(読者のみなさんの中には、“ジャグリング女子”もいらっしゃるかもしれません)。次の頁では、そんなジャグリング男子と付き合うなかで出てくる問題点について考えていきます。
“ジャグリング男子”と付き合うと……
■ジャグリング男子の“ちゃんとやる幻想”
 ジャグリングについて理解しても、「メールを返信する時間くらいあるだろ」と思う方も多いのではないでしょうか。ほかならぬ私もジャグリング男子の一員なのでわかるのですが、我々は「重要だからこそ後に回す」と発想してしまうことがあります。なぜなら自分にとって重要なことほど、対応に必要とする処理能力が大きくなるからです。
 「今はそれをやる時間がない。後でちゃんとやろう。」
 これがジャグリング男子に見られる“ちゃんとやる幻想”です。前のページで見たように、ジャグリング状態にある限りは“ちゃんと”やれる時期など永遠に来ないのですが、渦中にいるとそれがわかりません。こうして書きながら私は、自分の“ちゃんとやる幻想”によって引き起こした仕事上の失敗や、大切な人の信頼を失った不義理な行いをいくつも思い出し、たいへん落ち込んでおります。

■典型的な“ジャグリング男子との別れ”
■徹底的に決断を迫るとどうなるか?
■問題は「時間」ではなく「処理能力」の不足
 Sは当時のことを、「訓練はきついし、その後に控える試験は『不合格なら失職する』から勉強にも必死で、そこに結婚式の手配が重なって、自分のキャパを完全に超えていた」と振り返っています。
 ジャグリング男子に「新たな課題」を突きつけることは、必死なジャグラーに向かってもうひとつ玉を投げ入れることと同じです。とはいえ、「だから彼女や妻が後回しになるのを我慢せよ」というのでは、何の解決にもなりません。大切なのは、何が問題なのかを正確に捉えることです。本書では次のように述べられています。〈人はスケジュールを立てるとき、処理能力を見落とすことが多い。普通考えるのは、やることリストを片付けるのにかかる時間であり、それにかかる処理能力、あるいはかける処理能力ではない。〉 (本書p.250) 
 多くの場合、問題なのは「時間」よりも「処理能力」の不足だと言えそうです。ある調査によると、ふだんは子どもに対して真摯に向き合う「良い親」である人物も、仕事が多忙になると子どもをほったらかす「悪い親」になる傾向があるといいます。
 「良い親」でいるための「心がけ」を実行するには、処理能力が必要なのです。これは「良い恋人」も同じだと思います。

■「ほったらかし」を防ぐための方法
 トンネリングによる「ほったらかし」を防ぐために、著者は次のような方法を提案しています。〈トンネリングはほったらかしを誘発するので、ほったらかされがちなことを一回限りで解決できるようにすることは、とても効果的と考えられる。必ず子どもと時間を過ごそうとしても、あなたの心がけ頼りではうまくいかないが、週一回の親子活動に参加申し込みすれば、毎週最低限のすばらしい時間をともに過ごせる。〉 (本書p.271)  ここで私が思い出したのが、桃山商事のもう一人のジャグリング男子・清田代表とその彼女のことです。清田はフリーのライターなので、仕事の管理を全て自分の「心がけ」だけで行わなければならず、これは普通の会社員よりもジャグリングしやすい環境です。実際に、過去の恋人との付き合いでは、「いつ会えるかわからない」ことが大きな問題となっていました。

■うまくいった“朝活”
 清田と現在の彼女は付き合い出してからほどなくして、平日の出勤前の早い時間に、とある駅近くのカフェでデートするようになりました。2人はこれを“朝活”と呼び、平日は毎日行っています。おしゃべりすることもあれば、それぞれ仕事や読書をするだけのこともあるそうです。
 2人が朝活を始めたとき、私は「いつも『時間がない』清田が、続くわけないよ」と密かに思っていました。ところが驚いたことに1年以上続いており、2人の関係も大変良好な模様です。
 この朝活が成功しているポイントは、最初に「平日は毎朝やる」というシンプルな運用方法を決めたことで、スケジューリングの必要がなくなった点だと思われます。スケジューリングするには処理能力が要りますが、ジャグリング状態にある人はまさにそれが不足しているからです。
 仕事で忙しくなって何も考えられなくなっても、朝起きてとにかくあの店に行けば彼女に会える……。なんて贅沢な環境でしょうか。
 とはいえ起きられない時もあるようですし、時間などの微調整も行っているとのことですが、そういった“緩い運用”も、2人の朝活が優れている点のひとつです。〈欠乏の心理についてひとつ言えるのは、トンネリングに備え、ほったらかしを防ぐ必要がある、ということだ。それはつまり、トンネリングを起こしている一瞬にまちがった選択をしにくいようにうまく舵取りをして、あまり心がけなくても良い行いができるように手はずをととのえ、ただしときどき現状を見直すようにすることである。〉 (本書p.272) 

 もしもジャグリング男子と付き合うことになったら(あるいは付き合っているとしたら)、彼の「処理能力」の一部を解放する方法を二人で考えてみてはどうでしょうか。
 そうした浮いた分の「処理能力」を、自分(彼女・妻・家族)に向くように舵取りをする。本書にはそれを考えるための事例や方法がたくさん書かれています。個人的にも、目からウロコが落ち続けた読書体験でした。腹の底からオススメいたします。

文/森田専務(桃山商事)

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