Tuesday, February 16, 2016

国際シンポジウム《移動という経験―東アジアから考える―》@大阪大学

大阪大学大学院文学研究科
日本学研究室/文学環境論コース/グローバル日本研究クラスター主催

国際シンポジウム

《移動という経験―東アジアから考える―》


日程:2016年 2月20日(土) 10:00~17:30 / 21日(日) 13:00~17:00

会場:大阪大学中之島センター 講義室703(20日)・講義室301(21日)

   〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53

   https://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/index.php


2月20日(土)

10:00~12:00 趣旨説明と発言

 司会・趣旨説明 平田由美(本研究科教授)・宇野田尚哉(本研究科准教授)

 発言⑴ 伊豫谷登士翁さん(一橋大学名誉教授)

「〈人の移動〉という問い―「逸脱」を越える―」

 発言⑵ 安岡健一さん(本研究科特任講師)

「近代日本の農村とその「他者」」

 発言⑶ 申寅燮さん(建国大学校アジア・ディアスポラ研究所所長)

「〈多文化〉もしくは移動の語り: 韓国多文化文学を例として」


13:00~15:00 コメントと討論

 ディスカッサント(発言順)

美馬達哉さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)

西川祐子さん(元京都文教大学教授)

孫歌さん(中国社会科学院文学研究所研究員)

ブレット・ド・バリーさん(コーネル大学東アジア学部教授)

朴裕河さん(世宗大学校日本文学科教授)


15:30~17:30 オープン・ディスカッション



2月21日(日) サブ・テーマ「移動から問う戦争」

 司会・趣旨説明 
    
 北原恵(本研究科教授)・宇野田尚哉(本研究科准教授)

 講演 

 北村毅さん(本研究科准教授)「戦争の記憶と人の移動」

 研究報告⑴ ガラシーノ・ファクンドさん(本研究科大学院生)

 「スペイン語圏から日露戦争後の日本を書く
 ―E・G・カリージョの紀行文を中心に―」

 研究報告⑵ 稲田光太郎さん(本研究科大学院生)

 「戦地に赴く仏教者―従軍僧佐藤巌英と「念仏師団」の兵士たち―

 研究報告⑶ 猪岡叶英さん(本研究科大学院生)

 「シマを出る位牌―沖縄の祖先祭祀の継承にみる戦争の影響―」


 ※初日の発言者・ディスカッサントが,2日目も討論に参加します


参加申込:準備の都合上,なるべく事前にidosympo@gmail.com  まで
     お名前と参加予定日(両日,20日のみ,21日のみ)を
     お知らせください。会場の定員に達していない場合,
     お返事は差し上げませんので,当日会場においでください。
     
なお,諸般の事情により発表者・演題等が変更になる場合がありう
ことを申し添えておきます。

お問い合わせ先:大阪大学大学院文学研究科日本学研究室
        宇野田尚哉(unoda@let.osaka-u.ac.jp )


国際シンポジウム「移動という経験―東アジアから考える―」趣旨

近代という時代は,資本主義の世界的な拡大とともに,大規模な人の移動
が起こった時代でした。大陸内で繰り返されてきた移動とともに,19世紀に
は数千万人の人々が 大西洋や太平洋を越え,21世紀の現在はおよそ2億
人の人々が生まれた国を離れて暮らしているといわれています。膨大な人
の移動は,国民国家や植民地を形成し,国民国家は,一方では,組織的に
人を送り出し,あるいは受け入れるとともに,他方では,自国民と他国民を
峻別して国境を越える移動を管理し,人々も,「想像の共同体」としての国民
国家に自らのアイデンティティを求めてきました。このような,移動する人々と
それを管理しようとする国民国家とのせめぎあいは,近代という時代を捉えな
おすうえで,重要な視座をなしているといえます。

しかしながら,国民国家の学として形成され,制度化されてきた既存の人文・
社会諸科学は,必ずしもそのような視座には立ってきませんでした。国民共
同体の存在を暗黙の前提としてきた既存の学問は,〈人の移動〉を,ある地点
からある地点に至るまでの一時的・過渡的な現象,あるいは正常から逸脱した
現象と捉えがちで,移動そのものよりも起点と終点の国民共同体に力点を置く
ような発想に囚われてきたからです。

今日,人の移動は現代世界を理解する重要な鍵であるにもかかわらず,その
課題を解く糸口すら見出せない状況にあるのは,移動そのものを問うてこなかっ
たからではないでしょうか。

第二次世界大戦後にいわゆる移民問題が大きな政治課題となってきた西欧諸国
に比べて,日本を含むアジアにおいては,必ずしも人の移動への関心は高くはあり
ませんでした。

しかし東アジアにおいても,人の移動は重要な政治的イシューとなってきていま
す。その大きな要因のひとつは,帝国日本の形成・拡大・崩壊,言い換えるなら,
植民地支配と戦争,そしてその後の冷戦体制とアメリカによる占領であり,その
なかで生じた膨大な〈人の移動〉は,たとえば「引揚げ」といったかたちで語ら れて
きました。第二次世界大戦後の膨大な人の移動は,あるべき国民共同体への
回帰として語られてきており,移動そのもの,あるいは,人が移動することで成
立した接触空間において生まれたものについては,いまだ十分には問われてい
ないのです。

「移動から場所を問う」という問題関心に基づいて,最近,「戦後」といわれ続
けた時代,「日本」という場所を再考するプロジェクトにおいて,この問題に関
わる重要な共同研究の 成果がまとめられました(伊豫谷登士翁・平田由美編
『「帰郷」の物語/「移動」の語り:戦後日本におけるポストコロニアルの想像
力』,平凡社,2014年)。本シンポジウムでは,このプロジェクトの問題提起を
承けつつ,またこの共同研究の成果を踏まえつつ,日本・韓国・中国・アメリカ
の研究者が一堂に会することにより,この問題をめぐる議論を次のステージに
押し上げたいと考えています。多くの方々のご参加をお待ちしております。

なお,本シンポジウムの2日目は,「移動から問う戦争」をサブ・テーマとして,
若手研究者による個別研究報告を中心に構成します。1日目の発言者・ディス
カッサントは,2日目も討論に加わり,1日目の内容をゆるやかに踏まえつつ,
個別具体的な議論の裾野を広げていきます。
シンポジウム2日目にも,みなさん奮ってご参加ください。

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