Saturday, June 06, 2020

ハイデガーのキェルケゴール評

メモとして。決して同意しているわけではありません。

《ニーチェをキルケゴールと組み合わせることは、茶飯事になりはしたが、だからといってその疑わしさが減じたわけではなく、ニーチェが形而上学的な思索者としてアリストテレスへの近さを護っているということを見誤っており、しかも思索の本質の誤認に基づいて見誤っているのである。キルケゴールはアリストテレスの名をしばしば挙げてはいるが、彼はアリストテレスに対して本質の上で遠い所に留まっている。なぜならば、キルケゴールはいかなる思索者でもなく、一個の宗教的文筆家であり、しかも数ある中の一人ではなく、彼の時代の命運に適った無双の文筆家であったからである。このような語り方がとにかく誤解というものではないとするならば、彼の偉大さはそこに安住しているのである。》「ニーチェの言葉「神は死せり」」、ハイデッガー全集第5巻『杣径』(茅野良男、ハンス・ブロッカルト訳)所収、創文社、1988年、278頁(GA5, 230)。

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