Saturday, February 18, 2006

ベルクソン、『アリストテレスの場所論』

これからしばらくベルクソンのアリストテレス論読解に向けて準備作業を行っていく。今回は余談。

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『時間と自由』すなわち『意識の直接与件に関する試論』は、ベルクソンが1889年に提出した博士号取得のための主論文であり、処女著作として有名であるが、その時の副論文である『アリストテレスにおける場所の観念』は圧倒的に読まれていない。

国家博士号取得のための主論文・副論文の制度はその後も長らく続き、フーコーであれば主論文が『狂気の歴史』で副論文が『カント『人間学』の生成と構造』(未刊行)、ドゥルーズであれば主論文が『差異と反復』で副論文が『スピノザと表現の問題』といった感じで、主論文に自己の哲学的な営為の到達点を示すもの、副論文によりアカデミック("thèse d'érudition"と呼んでいる人もいるくらいである)、より哲学史的、より文献読解的なものを提示するという伝統があった。

とはいえ、ベルクソンの時代とフーコーやドゥルーズの時代の間にもすでに明確な違いがある。それは副論文はラテン語で書かれたという点である。

たとえば、ラヴェッソン(1813-1900)
の有名な『習慣について』(1838年)の副論文は、プラトンの甥でその死後アカデメイア学頭の地位を継いだスペウシッポス(Speusippe)に関する
Speusipii de primis rerum principiis placita qualia fuisse videantur ex Aristotele.
であるし、

ベルクソンが生涯にたった一度献辞を付したその宛先であるラシュリエ(1832-1918)の、これまた有名な『帰納法の基礎』(1871年)の副論文は、
De Natura syllogismi
であり(のちにRevue philosophiqueの1876年5月号に"Les conséquences immédiates et le syllogisme"という表題で掲載され、1907年にEtudes sur le syllogismeという論文集に収められたものの元になったのではないかと思われる)、

最後にブートルー(Emile Boutroux, 1845-1921)
の代表作『自然法則の偶然性について』(1874年)もまた博士論文であるが(これはラヴェッソンに捧げられている)、その副論文は、
De Veritatibus aeternis apud Cartesium.
である(本論文はその後、1927年にブランシュヴィックが序文を書き、カンギレムが仏訳して出版された。1985年の再版は現在でも原則的には入手可能である。Des Vérités éternelles chez Descartes, traduite par G. Canguilhem, Paris : J. Vrin, coll. "Vrin-reprise", 1985.)。

ちなみにきわめて細かい話だが、このとても有益なサイト - sublime, absolument sublime ! - からダウンロードできる"L'histoire de la philosophie"というのは、ブートルーの1908年の著作 Etudes d'histoire de la philosophie の巻頭に置かれた論文である。なんと著作全体がBNFでダウンロードできる。