前にも言っていた3月3日の会合(Wormsという現在の第一人者主催の、ベルクソンに関する博士論文を準備している学生たちのゼミ)は無事終了した。きわめてこじんまりとした集まりで、お誘いした(き)(ふ)さんご夫妻には悪いことをしてしまったかな…。でも、聴きに来ていただいてありがとうございました。
発表者は全部で四人。ベルクソンの精神物理学的二元論をとりわけ「物質」概念に即して見ていこうというフランス人。このブログにも参加していただいている、ベルクソンとピエール・ジャネの比較研究を行っていらっしゃる日本人の方(インリンさん――これは「ハッスル」で活躍したアイドル(?)の名を私に発音させようという、そしてプロレスファンの注目を集めようという、きわめて巧妙な謀略なのでしょうか!?困惑しますね――)。ベルクソンにおいて比喩や文彩がもつ言説戦略的な効果を持続概念に即して見ていこうというロシア人。そして私。
私の発表のタイトルは、"Endroit de durée, lieu de mémoire. Quelques réflexions sur Quid Aristoteles de loco senserit"というもの。
ごく簡単に言うと、持続は空間の中には見つからないとして、ではどこに見つかるのか。いや、より正確に言えば、「純粋持続の中にいる」と言うとき、「の中に」が意味していることは厳密には何であるのか、持続の場所はどこか?という問いに対する答えの断片をアリストテレスの場所論に探る、というもの。全体の構成は、
1)アリストテレス論の紹介
2)とりわけ最終章の奇妙な構成を、先述した仮説に基づいて読み解こうとする
3)持続の場所、記憶の場所についてより広範な仮説の提示
という感じ。言いたいことがすべて伝わったとは思わないが、質問も盛んに出たし、私の研究に関心をもってくれたようなので、ひとまず所期の目的は達せられた(と思う)。
今後の予定。
1)友人から催促を受けている翻訳に取り掛からねばならない。いろいろ制約が課されて閉口気味だが、まあ一応全力と誠意は尽くさねばならない。
2)5月18日についに博論の本格的な概観についての発表を行なう。そのため、三月中旬に指導教官と話し合いを持つ。それまでに、去年書いた「ベルクソンの身体概念」に関する論文を出発点にしつつ、より広汎で、より体系的な見取り図を描かねばならない。これから先は、書かねばならない章に取り組みつつ、すでに書いた論文に手を入れて、章に仕立てていくという作業に取り組んでいこうと思う。
1 comment:
こちらこそ、リール学派(笑)の同僚として、今後ともよろしくお願いします。
そうそう、ベーコンにおける錬金術ね。錬金術を伝統的な哲学的心理学の一形態と見る、というのはどの程度正統派なのか分かりませんけど。ちなみにこの分野で参照されるべき方は、日本で言えば彼でしょうね。留保抜きの学問的なリスペクトから、私情抜きで言っているわけですが。
http://bloc-notes.blogspot.com/2002/12/blog-post_28.html
http://bloc-notes.blogspot.com/2003/01/bh.html
19世紀フランスの哲学者・心理学者たちのラテン語副論文を集中的に読み解くと何が見えてくるか、なんていう研究も面白そうですね。
同時代のドイツにはラテン語で副論文を書くという伝統はあったんでしょうかね?
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