Sunday, December 23, 2012

ウサギとカメ

三遊亭歌之介『爆笑120分パート1』より。

目的をしっかり持ったうえでの明るい考えなんですよ、みなさん。(…)

〔真打昇進試験で、5人中2人だけ受かったにもかかわらず、こぶ平だけにマスコミの取材が集中し〕向こうは27社群がって、私はゼロ。もう涙が出そうになりましてね、バッグを担いで、私は楽屋から走って逃げました。人に涙を見せるのが悔しいから、私は電車に乗ったんです。その車両で、お世話になりましたヨウダミノル社長が乗ってました。「暗い顔をしてるよ」と。「なんかあったか」と。「真打が決まりました」つったら、「真打が決まったの?一発で試験受かった?大したもんだ。もっと喜ばにゃ。どうしてそんな暗い顔すんだ?」。
U「こぶ平さんと真打が決まったんです」
Y「よかったじゃないか。こぶ平君と一緒でね」
U「そしたら社長、マスコミはこぶ平君にばっかり集まるんですよ」
Y「うん、それで?」
U「僕んとこは、どこも来ないですよ」
Y「うん、それで?」
U「…そんだけです」
Y「そんだけで暗くなっとったの?馬鹿みたいだ」
U「馬鹿みたいですか?」
Y「馬鹿だと思う。君の人生の目標はこぶ平君か?」
U「…いいえ、違います」
Y「だったら、いいじゃない。ウサギとカメの話を知ってるか?」
U「知ってますよ。高校を出てるんです」
Y「ウサギはどうしてノロマなカメに負けたんだろう。言ってごらん」
U「油断があったんです。カメがノロマだから、ウサギはいつでも抜けると油断したんです。昼寝をしました。その隙にカメが抜いて行ったんです。人生は油断しちゃいかん、怠けちゃいかん、という戒めです」
Y「本当にそう思っとった?100点満点のうちの0点じゃ。ウサギとカメの真意はここにありゃせんか。カメはね、相手がウサギであろうがライオンであろうが、何でもよかったはずだ。なぜだろう?なぜなら、亀はね、一回も相手を見てないんだよ。どこを見とったんだ、亀は?旗の立っている山の頂上だよ。あそこに行くぞ、亀は全力で登って行った。ウサギは山の頂上なんか見てない。いつもカメのことしか見てなかったよ。あいつはあんなところだ。寝よう。まだあそこだ。寝よう。相手のことばっかり気にして、たった一度しかない人生の目標を一回も頭に入れんかった。だからウサギはカメに負けたんじゃないか。賢いカメになんなさい。目標をしっかり頭に入れて、それに向かって歩き続けるの。どんな急な坂道が現れても、止まったらダメだよ。苦しい時はね、感謝感謝の気持ち。なんとありがたい急な坂道だろう(観客笑い)。この急な坂道はありがたい坂道だ。俺を鍛えてくれているじゃないか。なんとありがたい坂道だろう。感謝の気持ちをもつことだよ。有難いという字はね、難が有るから有難いんだよ。その有難いの感謝の気持ちがあったら、楽しくなって止まらずに歩けるから。歩き続けるの。歩くという字はどういう字を書くんだ?止めるを少ないと書いて、歩くという字が出来上がっている。賢いカメになって頑張んなさい」
U「あの一言で、私はね、目が覚めたんですよ。この話を熊本のある小学校でさせてもらいましたら、最後に質問コーナーでした。一年生の男の子が「せんせえー、カメさんはどうしてウサギさんを起こさなかったんですか?」(会場笑い)
「この男の子は私に言いましたよ、『ボクがカメさんだったら、ウサギさんを起こすんです。だって、一人で登る山はつまらない。二人で登った方が、センセイ、楽しいもん!』…教わったですよ、7歳の彼に。彼の方が人間が大きいです。自分の人生の目標に向かってがむしゃらに頑張るのも、確かに大事なことでしょう。でも、もっと大事なことを彼は教えてくれましたね。励ますことなんです。協力し合うことなんです。相手の立場を理解して、本当に力を合わせることが、人生において、どんなに大事なことか。」 

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