たぶん日本代表のサッカーを少しでも見ている人なら賛成してくれると思うのだが、監督がジーコからオシムにかわって最大の違いは、いわゆる「国内組」への熱視線だろう。
ジーコは国内組がいくら健闘しようが、海外組の調子が悪かろうが、後者に全幅の信頼を置き、その序列を頑として変えなかった。オシムは、積極的に国内視察を行ない、就任一年目の去年から今年にかけて、長らく一度も海外組を召集せず、国内組のみで代表戦を戦った(今は混合)。
これで、Jリーグ内での代表選抜への競争意識が活性化したことは疑い得ない。頑張れば自分にもチャンスが回ってくるかもしれない。名前ではなくプレーを見ているという基準が明確化すれば、選手の目の色も変わってくる。
研究者も同じである。頑張っている若手にチャンスを与えるとは、「鍛えてやる」というだけではなく、生き残りのために業績作りのチャンスを与えるということである。大学の紀要に書かせるという以上のチャンスを、である。それを見つけてくるのもまた、一定以上の年齢の研究者の任務なのだろう。
例えば、昨年のブランショ国際コロックは、優秀な若手研究者に、海外の研究者の前での発表の機会を与えていた。いずれ(今年はまだ無理だが)、我々の領域でもこういった機会を少しずつ増やしていければと思う。
ただ、「フランス語を勉強しろ」とお題目のように唱えても、駄目なのだ。実際に目の前で示して見せないと。海外リーグの試合が日本で見られるようになったこと、海外の選手と対等に渡り合う日本人選手の姿を見ることが、国内で頑張る若手選手の意識にどれほどの顕在的・潜在的な影響を与えたことか。
業績作りはたしかに目的化、「お仕事」化してはいけない。札束で頬をひっぱたくがごとき、悪弊の師弟関係も復活させるべきではない。だが、綺麗ごとで人は動かないというのもまた厳然たる事実だ。魅力あるチャンス・メイキングと連動させてこそ、「鍛錬系」は真に駆動しうるのではないか。
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<サッカー日本代表>オシム監督、裾野拡大で近藤らに視線毎日新聞 - 2007/5/14 21:56
サッカー日本代表候補の合宿が14日夜、千葉県習志野市内で始まった。4月に続き、強化目的の3日間の短期キャンプで、最終日には大学生チームとの練習試合も組まれている。オシム監督は裾野拡大をテーマに挙げ、23歳のDF近藤(柏)、左サイドのスペシャリストである村井(磐田)らに注意深い視線を注いだ。
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