Friday, November 02, 2007

哲学と大学(第一回)

「哲学と大学」第1回に参加してきた。楽しく刺激的な時間を過ごさせていただき、どうもありがとうございました。

とりわけynさんの活躍ぶりを間近に見ることが出来てよかった。あらためて「色んな分野で活躍している人たちというのは、やりたいこととやるべきことをきちんとやってのけているんだな」という思いを深くした。

討議での発言を幾つか拾っておこう(後記:討議についての報告が既にUTCPのHPに掲載されている。簡にして要を得た、見事なまとめである。この報告を読まれた後に、以下の文章を読んでいただくと、問題の所在が分かりやすくなるように思う)。

1.「宛先」の問題

こういった議論を始めるにあたっては、常に議論の「場」がどのように形成されているのかに注意を払わねばならない。言い換えれば、「ここにいない者」に注意を払わねばならない。

a(・女性)*女性はいらっしゃったので。
b・「崖っぷち弱小大学」(杉山幸丸)の存在
 *「一流大学」との両極だけでなく、中間層(例えば、地方大学)も考慮に、との声もあった。
c・自然科学・理工系の存在
 *自然(自然科学)と人間(人文科学)の間の社会(社会科学)も考慮に、との声もあった。
d・非西洋系の存在

この「宛先Adressat」の問題は、今回取り上げられたレディングズの『廃墟のなかの大学』についても指摘された。誰に向かって書かれているのか?大学人に向かって書いていていいのか。

a・性差などマイノリティの問題は、カルスタの勃興を通じて明瞭に意識されている。
・その一方で、「大学は従来、国民文化と強く結びついていたが、グローバリゼーション状況下でその結びつきが決定的に解消される」という図式が、例えば戦後日本にどれほど当てはまるのか、疑問が残る。言い換えれば、本書においては「文化」と「国民文化」がほぼ同一視されてしまっているように思えるが、果たしてそれは妥当か。この同一視は、日本のように大学の数がきわめて多い国における

b)大学と文化の関係、教育と研究の関係(大学に「文化=教養」を求めるのか、ノウハウ=各種資格を求めるのか)、
c)文科系と理科系の関係(文科系が圧倒的に多い)、
d)カルスタの現状

を分析する上で、見逃しえない影響を及ぼすように思われる。

2.『廃墟のなかの大学』の大枠

・批判的分析の部分(主に1~3章)および
・歴史的経緯の部分(主に4~9章)はおおむね的確と言えるが、
・積極的提言の部分(主に10‐12章)にはかなり不満が残る、 といった印象が共有されたように思う。

批判的分析に関して「的確」というのは、現状を客観的に分析するに際して、「エクセレンス」概念がそのイデオロギー的な性格を暴露するところまで徹底的に議論を進めることによって、この「空疎な概念」に批判的な射程をもたせたからであり、

「おおむね」というのは、その批判的射程が厳密に(とりわけ特殊日本的に)どこまで届きうるものなのか、未だ判然としないところも残るからである。

もう少し時間があれば議論を深めたかったのは、むしろ後半部について、とりわけ「不同意の共同体」や「大学をめぐる信の問い」の真の射程についてであった。

3.商業主義(commercialism)と消費者主義(consumerism)

 エクセレンスを量的一元化志向と捉えるとしても、大学によって追求するエクセレンスは質においても量においても異なる。研究における学問的エクセレンスを追求する姿勢が文科省によって奨励・推進されるという事態と、「即戦力」教育・資格取得を強調することで少しでも多くの学生を囲い込もうとする事態は、まったく同じ事態の裏表ではないように思われる。

では、前者は国際競争における生き残りを賭けた闘いであり、後者は少子化を踏まえ生き残りを模索する闘いであると定義できるだろうか。これについてはもう少し考えてみる必要がある。

エクセレンスの「本性の差異」に対して、あらゆる大学を貫く傾向、「差異の本性」として指摘できるのは、学生や学費を払う親を「消費者」として位置づける消費者主義の蔓延ではないだろうか。周知のように、オープン・キャンパスなどの試みはすべて、学生獲得競争の一端にほかならない。


企業の研究職社員、学士の3割期待外れ…文科省調査
10月30日13時42分配信 読売新聞

 研究職で採用した社員が「期待を上回った」と考える企業は1~2%程度にとどまっていることが、文部科学省の調査でわかった。

 「期待はずれだった」とする企業の割合も、大学の学部卒者(学士)で3割にのぼるなど、企業に利益をもたらす新規事業や新製品開発を担う中心的な人材として採用されながら、期待に沿えない企業研究者が相当数いることが浮き彫りになった。

 調査は今年2~3月、研究開発を行う資本金10億円以上の企業1791社を対象に実施。過去5年間に採用した学士、大学院の修士、博士の各課程修了者、博士号を取得済みの「ポストドクター(ポスドク)」の四つに分けて、研究者の資質などを聞いた。有効回答は896社。

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