2022年7月12日
小林康夫先生より、ご高著『クリスチャンにささやく 現代アート論集』(水声社、2022年5月30日)をご恵投いただきました。「現代アート論集というよりは、アートへと接近するわたしなりのクリティークの方法を、
ある種のゆるやかな物語(レシ)の構成として編集したもの」(191-192頁)、
つまり先生なりの「哲学」ないし「思考」の実践と受け止めました。
84年に訳されたデュラスの『死の病』に始まり、90年代初期から2020年代まで、
「一貫した「スタイル」(…)一言で言えば、三人称的に論じるのではなくて、
二人称的に語りかける「態度」、「二人称のクリティーク」(…)あくまでも一‐二人称の語りのエクリチュールを、わたしはずっと実践してきた」(176-177頁)。以前伺った「自分なりの哲学を」を今一度、身をもって示していただいた気がしています。私も私なりの思考の舞踊に精進してまいります。
2022年7月16日
平井靖史さんより、ご高著『世界は時間でできている――ベルクソン時間哲学入門』(青土社、2022年)をご恵投いただきました。
圧倒的な本ですね。「「その先」について100号の絵を描いて見せてくれたものはどこにもなかった。だから書いた」(363頁)。時間の哲学者として知られる人物の時間哲学入門が今までなかったとは、、今まで折に触れて平井さんのご発表を聴き、ご論文を読んできましたが、このサイズ感は圧倒的です。ようやく全貌が見えた感じです。とはいえ、私の手にはまったく余るものであり、「全貌が見えた」などとは到底言えませんが。
この本を英語に翻訳するのは、世界のベルクソン研究にとってのみならず、「心理学、生物学、物理学、脳科学や人工知能学の分野に身を置きながら意識や心の理論化に関心を抱くすべての人」(362頁)にとっても、本当に大切なことだと思います。お忙しいのは重々承知していますが、この数年で何を措いてもなされるべき仕事だと考えます。
2022年8月27日
川瀬雅也先生、越門勝彦さんより『ミシェル・アンリ読本』をご恵投いただきました。
現象学者としてのみならず、レジスタンス活動に身を投じ、野蛮やマルクスを論じた政治的・社会的側面や、小説家としての側面などから、実に多面的にアンリを描き出しておられますね。しかも松永先生のような大家から若手まで老壮青が絶妙に協働されており、日本ミシェル・アンリ哲学会を切り盛りされてこられた川瀬先生のご尽力によるところが大きいと拝察いたします。
2022年9月28日
馬場智一さんより『レヴィナス読本』(法政大学出版局、2022年9月30日)をご恵投いただきました。
本当に恥ずかしいことながら、2018年にレヴィナス協会が設立されていたとは存じ上げませんでした。峰尾公也さんなど最近お仕事をご一緒させていただいた方もいらっしゃるのにと猛省しております。ネット検索もあまりやらないので、どんどん取り残されていきますね、、、
馬場さんの執筆部分だけとりあえず大急ぎで拝読しました。「全体性」の部分では、百科事典の項目として執筆された「全体性と全体化」(1970年)における全体性の扱いには存在論批判に収まらないより精緻な議論が見られるという点、『貨幣の哲学』では、血で血を洗う復讐を超える貨幣による補償としての「損害賠償」にも貨幣の肯定的機能を見出していたという点など、勉強させていただきました。
『諸国民の時に』や「レヴィナスと哲学史①古代~中世」では、実に繊細な手つきで解説されており、とりわけヘブライ語とギリシア語の関係やプラトンの正当な嫡子としてのレヴィナスといった側面にあらためて気づかされました。私もいつだったか書いたレヴィナスとベルクソン論のバージョンアップが特に共同体問題について必要だと痛感した次第です、、他の方々の御論考も追って拝読させていただきます。
2022年9月29日
澤田直先生より、ご高訳エドガール・モラン『百歳の哲学者が語る人生のこと』(河出書房新社、2022年6月20日)をご恵投いただきました。
モランはクラカウアーに似た存在なのかと何となく思っておりましたが、哲学者・社会学者という枠組みに収まらず、自然科学まで自在に横断する存在という澤田先生の解説を拝読して、そう言えば、フランスにはミシェル・セールやコスタス・アクセロスなど、最良の意味での「知識人」、18世紀的な意味での「フィロゾーフ」が未だに現れてくるなと思いました。
2022年11月30日
檜垣立哉先生より、『日本近代思想論――技術・科学・生命』(青土社、2022年11月30日)をご恵投いただきました。大学の内外であまりにお忙しく、また重責を担われているなかで、これほどの圧倒的な質・量を誇る著書を次々と送り出すのは、本当に人間業とは思えません。「自分も道半ばでありつづけ、可能なかぎり、本書で提示した課題をさらに追いつづけ、自分の生をまっとうしたいと考えるのみである」(379頁)。檜垣先生の背中を遠く仰ぎ見つつ、私も(規模は全く違いますが)同じ道を歩むことができればと願っております。
2022年11月30日
日本大学の久保田裕之さんより、『結婚の自由――「最小結婚」から考える』(白澤社、
2022年12月28日
東北大学の森一郎先生より、ご高著『アーレントとの革命の哲学——『革命論』を読む』(みすず書房、2022年12月16日)をご恵投いただきました。『革命論』のご高訳をいただいたのが4月、あれからほとんど時を経ずして、その副読本とも言うべきテクスト読解が出るとは。しかも、現代日本の状況に照らし合わせるための目配せがふんだんに散りばめられ、最後には「革命やれたらきっともっと愉しいだろうなあ」(307頁)という本音まで(笑)。
ちょうど刊行日である12月16日には安保3文書が閣議決定され、まったく逆方向への「歴史的転換」がなされつつありますが、私もまた、私の道程の上で「革命」へのささやかな
(あまりにもささやかな)寄与をできればと願っています。まずはアーレントとベルクソンについての或る種の政治哲学的考察から、、
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