Friday, December 04, 2009

授業

今日は、自分の大学の気になる先生の授業を覗きに行った。イギリス人の先生なのだが、英語のグループワークの仕方が巧みだという評判を小耳にはさんだので、自分の授業の何かの参考になるかと思って授業見学を申し出たのである。

彼は私と同じで、授業に対してはっきりとした「プリンシプル」をもっている。モチベーションのある学生を自分の授業に惹きつける努力を最大限行なったうえで、要求度の高い授業をしようという基本姿勢である(カリキュラムの構成上、不可避的にそうでない学生が集まる授業には、もちろん別のプリンシプルをもって臨む)。

私からすると小声で早口の英語だが、学生たちは確実に指示を理解し、こなしていく。チーム別の英語でのプレゼン。パワーポイントもすべて英語で作成。英語のレベルはまちまちだが、フランス語関係者としては、英語を使ってプレゼンをさせられるというだけで羨望を覚える。先生の求心力が高いと、いろんなことをさせられるのだと再認識させられる。



授業は、英語教授法に関するテキストを使って、学生と一緒に「いかに英語を教えるか」を考えるという、メタ的な授業で面白そう。授業後半では、「では、この授業自体を改善するにはどうしたらいいか?」と自己言及度がさらにアップ。問いかけの一つに「例えば、私があなた方との関係をもう少し親しみやすいものにすれば、あなた方のモチベーションは上がるでしょうか?」というものがあり、彼はそちらへと議論を収束させていく。

彼の考えでは、教師と学生のしっかりした関係を構成する要素は四つある。
1)trust(信頼)
2)fairness(公平さ)
3)availability(どれくらい学生のために時間を割いてくれるか)
4)friendliness(親しみやすさ)
最近の学生は4を重要視するようだが、自分の考えでは1~4の順に重要度は低くなる、そう彼は言っていた。私もまったく賛成である。「けれど、これは私のオピニオンにすぎません。皆さんのオピニオンを来週までに書いてきてください。これが宿題です」。最後まで見事に準備され、見事にコントロールされた授業だった。90分の密度が濃い。

もちろん「信頼」ですらも入口にすぎない。それを通じて、どれほど学問の世界の魅力を伝えられるか。そこからが本当の勝負である。どこまで行けるだろうか。

研究も大切だが、授業も大事にしていきたい。私が今そこに照準を合わせざるを得ないレベルにあっても、真剣に取り組んでいれば、授業も必ず何かを与えてくれる。そう思っている。

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