Friday, September 30, 2011

ベースボールと野球、フィロゾフィーと哲学?

米大リーグ:イチローの足跡 米紙コラムニストに聞く

 2001年のメジャー移籍以来、数々の記録を打ち立ててきたイチロー。連続シーズン200安打が途切れても、その偉業があせることはない。イチ ローが大リーグに刻んだ足跡の意味を、大リーグ取材歴が半世紀にわたる米ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ジョージ・ベッシーさんに聞いた。【聞 き手・小坂大】

 ◇揺るがない強い意志

米国ではベーブ・ルースの時代から本塁打が好まれてきた。本塁打は「今、すぐに答えがほしい」という米国人の気質を満足させる。筋肉増強剤の使用 が問題になっても、「本塁打を打つためなら構わない」と言う人さえいた。だからヒットを数多く打つことへの関心は低かった。この価値観は米国の個性だ。
 日本でも王貞治の本塁打を誰もが愛したが、一般的には「チームとしていかに点を奪うか」という技術や作戦が野球を考える上での基礎になっている。日本独自のスタイルであり、イチローもこうしたスタイルのたまものだ。米国と異なった文化の選手だと思う。
 大リーグの歴史にも、ヒット量産に生きた選手たちはいる。8年連続200安打を放ったウィリー・キーラーや、4256安打の大リーグ通算安打記録を持つピート・ローズなどだ。
 イチローはもっと本塁打が打てるはずだが、打率を下げるようなまねはしない。体格の不利など己をよく知り、批判されても正しいと思わないことはや らない強い意志がある。イチローは「試合で何をすべきか」と自らの考えを持つことが正しいということを思い起こさせてくれた。イチローが達成した素晴らし い記録や、その個性を思えば、米国野球殿堂入りが考慮される初めての日本選手となるだろう。私は実現すると確信している。
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 ◇ジョージ・ベッシー

1960年から大リーグ取材を続ける。五輪、サッカーのワールドカップなど国際大会のほか、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世、トニー・ ブレア元英首相らのインタビューなどスポーツ以外も手掛ける。著書「野球 アメリカが愛したスポーツ」(クロノス選書)は日本でも翻訳された。ニューヨー ク出身。72歳。
 
毎日新聞 2011年9月29日 東京夕刊

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