Tuesday, November 18, 2014

いただきもの(2014年1月‐10月)

そう言えば、ここ最近、忙しさにかまけて、いただいた本のご紹介をしておりませんでした。


大森晋輔『ピエール・クロソウスキー 伝達のドラマトゥルギー』(左右社、2014年9月)
クロソウスキーの全著作を「伝達の言語」という広義の言語論の一貫した視点から読み解いてみせる大森さんの手つきの鮮やかさ、見事でした。全てを注ぎ込んだ大著、迫力ありました。


西山雄二編『カタストロフィと人文学』(勁草書房、2014年9月)
私が「カタストロフィ」とまったく向き合えないままに時を過ごしている間に、西山さんは果敢に喫緊の課題と取り組まれていたのだなと感じました。どういう言葉も自分の無能と怠惰を正当化することはできません。この本を傍らに置きつつ、また零から頑張っていきたいと思います。


原大地(たいち)『マラルメ 不在の懐胎』、慶應義塾大学出版会、2014年6月。
博論Lautréamont : vers l'autre. Etude sur la création et la communication littéraires (L'Harmattan, 2006)で2007年の「渋クロ」を受賞した俊英にして畏友の原氏による第3作。第2作『牧神の午後――マラルメを読もう』(慶應義塾大学教養研究センター選書、2011年)で一般読者に開かれた文体を会得した氏が、今や精妙にコントロールされたゆるやかさとともに、「来るべきポエジーを準備するために」「詩に関する情報を世に引き渡しておく」決意をもって、マラルメの幾つかの詩を読み乾す。


中田光雄『差異と協成-B.スティグレールと新ヨーロッパ構想』(水声社、2014年4月)
2008年の時には二冊同時刊行だったと記憶しておりますが、今回はなんと三冊同時刊行なのですね。博識と粘り強い分析、そしてお幾つになられても着実にひたむきにお仕事を続けて行かれる姿に感服しました。


郷原佳以訳、デリダ+シクスー『ヴェール』(みすず書房、2014年3月)
いつもながらの流麗な翻訳と、実に丹念な関連研究調査(これって見過ごされがちだけど、やっぱり研究の基本ですよね)、切れ味鋭い解説に惚れ惚れと致しました。いろいろお忙しいはずですが、丁寧なお仕事ぶりに脱帽です。デリダやシクスーの論にも触発されるところが多々ありました。


川口茂雄+長谷川琢哉+根無一行訳、ジャン・ルフランの『19世紀フランス哲学』(白水社・文庫クセジュ、2014年3月
フランス語で読んでいましたが、この領域の研究をさらに活性化させるために、ぜひともどなたか翻訳されるべきと長年思っていただけに、川口さんというこれ以上ない適役を得て、見事な翻訳が誕生したこと、喜ばしい限りです(見事なsyntheseにもなっているあとがきも含め!)。


合田正人編『顔とその彼方――レヴィナス『全体性と無限』のプリズム』(知泉書館、2014年3月)
合田先生があとがきでお書きになっている通り、海外の一線級の研究者と、国内の俊英たちの見事な対決の場になりえていますね。ベルクソン研究の現状を鑑み、自らの非力を反省するばかりですが、自分なりに前進していければと思っております。


中里まき子編『トラウマと喪を語る文学』(朝日出版社、2014年2月)
絶えずしなやかに変貌を続けておられる中里さん。力作ぞろいの論文の内容もさることながら、このような一連のシンポをオーガナイズし、出版社に話をつけて、論集化するまでに至る中里さんの卓抜な企画力とそれを実現させる驚異的なエネルギーに感服しています。


杉田敦編『岩波講座 政治哲学・第4巻 国家と社会』(岩波書店、2014年2月)
並みいる気鋭の論者たちに伍して、金山さんがソレルを論じておられる雄姿を拝見し、シュミットやウェーバーと並んでソレルの重要性が認知されることとてもうれしく思いました。私も非常に拙いながら、ソレルとベルクソンの関係について論じた論文があります。
①「言葉の暴力II : アナーキーとアナロジー―ベルクソンとソレルにおける言語の経済」
   『フランス語フランス文学研究』(日本フランス語フランス文学会)第94号、2009年3月、119‐131頁。
②Alexandre Lefebvre and Melanie White (eds.), "Anarchy and Analogy:
The Violence of Language in Bergson and Sorel", in "Bergson, Politics,
and Religion", Duke University Press, 2012, p. 126-143.


杉村靖彦訳、ジャン・ナベール『悪についての試論』(法政大学出版局、2014年2月)
『二源泉』における悪の扱いの限界を考えながら、拝読させていただきました。本当に幅広くお仕事をされている中で、このフランス反省哲学の伝統を日本に導入するという作業もまた、杉村先生以外に適任の方が見つからないというお仕事の一つではないでしょうか。


最後に、ENSA VersaillesでMaître de conférencesをしているVincent Jacques という人から、新著紹介のメールが送られてきましたので、ご紹介を。下記リンクから目次も見られますが、啓蒙的でオーソドックスな感じかなという印象を受けました。
http://www.editions-ellipses.fr/product_info.php?products_id=9935

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