Monday, January 08, 2001

『王女メディア』を読むために (1) (k00641)

1. メディアとは誰か(ピエール・グリマル『ギリシャ・ローマ神話事典』より、「メディア」の項目)

 メディアは、黒海東部にあった古代の王国コルキスの王アエテス(Aeetes)の娘である。したがって彼女は、太陽神ヘリオスの孫娘であり、アイアイエ島に住む魔女キルケの姪である。彼女の母は、大洋神オケアノスの娘たち(海の精オケアニデス)の一人イディーである。しかし時に、その母として、すべての魔女の守護者たる女神ヘカテの名が挙げられることもある。ディオドロス(Diodore)も踏襲したこの伝承によれば、ヘカテがアエテスの妻であり、メディアがキルケの妹であるということになる。

 メディアは、アレキサンドリア文学においては、それにローマにおいても、魔女の典型となった。これは、彼女がすでにアッティカ悲劇において、そしてアルゴー船の乗組員たちの伝説において果たしていた役割である。

 メディアなしでは、ジェイソンは、金羊毛を手に入れることはできなかったであろう。ヘファイストスの雄牛たちの吐く火による火傷から彼を守ってくれる軟膏を与えてくれたのも彼女なら、竜を魔力で眠り込ませてくれたのも彼女なのである。ディオドロスによってもたらされる比較的後の伝承が我々に教えてくれるところによれば、メディアは実際には人間性に満ちた王女で、王国にやってきたすべての外国人を殺すという父の政策に激しく反対していたということになる。彼女の内に秘めた反発に業を煮やした父アエテスは、彼女を牢に閉じ込めるが、彼女は苦もなくそこから脱することができた。さて、まさに運命の日がやってきた。コルコス海岸にアルゴー船の乗組員たちが上陸したのである。彼女は、もしジェイソンが望みを果たすのに尽力し、彼を、遥か彼方から探し求めてやってきた金羊毛の主にしてやるならば、自分を娶ってくれるよう約束させて、即座に自分の運命を彼らのそれと堅く縛って結びつけた。ジェイソンが約束したので、メディアは王国についての知識を利用しつつ、貴重な毛皮の保管されている寺院を開かせた。しかしにもかかわらずアルゴー船の乗組員たちは、兵士たちを襲って彼らを蹴散らしてしまう。エウエメロス説[神話の神々は実在の英雄などが死後神格化されたもの、とするギリシアの哲学者エウエメロスの説]の影響を受けたこの伝承は、伝説の様々なエピソードの「合理的」解釈にすぎない。例えば、火を吐く雄牛[taureaux]がタウリドス[Tauride]出身の兵士になる、といった具合である。金羊毛も、アタマスの息子たる若きフリクソスの家庭教師をしていた(それまでは道に迷っていた)ある牡羊座の男の皮にすぎないということになる。

 ともかくも、ひとたび金羊毛を手に入れるや、メディアはジェイソンとアルゴー船の乗組員たちと共に逃げ出す。次の点に関してだけは、すべての伝承が一致している。すなわちジェイソンはメディアに結婚を約束したということである。メディアが後に犯すことになるすべての犯罪は、ジェイソンのこの偽りの宣誓によって弁解、ないし少なくとも説明される。ジェイソンについていくために、彼に勝利をもたらすために、メディアは父アエテスを裏切り捨てたばかりか、脱出の際に実兄アプシルトスを人質にとり、父の追跡を遅らせるためにためらうことなく彼を殺し、切り刻んでばらばらにしたのである。

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