Friday, January 18, 2013

今、大学が過保護すぎる理由とは?

「イマドキの学生は…」とお決まりの文句を言う前に、自分と自分の周りをよく見てみたほうがいい。

会社もまた対人関係に悩み、必然的な出会いの場を用意してきたし、用意しようとしているのではないか。それは新入社員に対してだけではない。これからは、中年以降のリメディアル教育も重要になっていくはずだ。

家族関係も同じではないか。80歳の親が60歳の子どもの心配をして、いろいろと動いている。シュウカツに口を出し、婚活に口を出し、人生に干渉する。

これらすべての動きとの関連で、学生を見ていく必要があるのだ。 

 

学食に“おひとり様”席を設置、学園祭には強制参加。今、大学が過保護すぎる理由とは?

[2012年06月13日]


国内778校の四年生大学すべてに足を運んだ大学研究家の山内太地氏が明かす、近年の過保護すぎる大学カリキュラム
英語のシラバスがアルファベットの書き方から始まる、入学試験の不合格者数がゼロだったなどなど。低偏差値のいわゆる「Fラン大学」のおかしなエピソードは、定期的にネットをにぎわしている。
だが、今の大学は偏差値の高低を問わず、もっとすごいことになっていると言うのが、大学研究家の山内太地氏。日本国内の四年制大学778校すべてを訪問し、『22歳負け組の恐怖』をまとめた山内氏に、“最高学府”の実態について聞いてみた。
「高卒者の半数が大学に進学していますから、学生が皆、勉強する気のない学校があっても当然です。授業内容が低レベルだなんて、そんな話をしても意 味がない。それより大きな問題があります。サークルに入らずバイトもせず、1年次で友達ができないままひとりで浮いてしまい、居場所がなくて退学してしま う学生が少なくないことです。これは偏差値が高い学校も同じ。東大には保健室に精神科まであるのですが、人間関係に悩む学生が多く、診察まで10日待ちも ザラだそうです」
―学生は皆、かつてなかったレベルで対人関係に悩んでいると。
「今、学食で増えているものをご存じですか? 横一列に並ぶカウンター形式で、壁に向かって食べるスペースです。ひとりでごはんを食べていても気にならない場所を大学側が用意している。そうしないと学生が来なくなってしまうのです」
―就活でも、友達が多そうかどうかは、面接官が見るポイントのひとつだといわれていますね。
「日本の産業の多くがサービス業ですからね。対人スキルが高くないと、大学を出てからも苦労します。結婚も危ぶまれるでしょう。ですから、あの手こ の手でひとりぼっちにさせないようにして、学生のコミュニケーション力を上げさせようとする大学が出てきています。例えば、嘉悦(かえつ)大学という東京 の小平市の学校では、学園祭の参加は強制です」
―なんて過保護な!
「学園祭だけではありませんよ。入学のとき、スタンプラリー形式でサークルの先輩や教員の話を聞いて回るオリエンテーションがあります。授業でもグループワークを多用するなどして、かつては30%を超えていた退学率も大幅に減ったそうです。
ほかでは、立教大学の経営学部も面白いですね。1年生を全員、数人のチームに割り振って、企業の人を講師にして商品開発などをテーマに議論させま す。ここで重要なのが、お互い顔も名前もわからない新入生にグループワークをさせる点。そして男女比は半々です。ここで、いろいろなドラマが生まれます」
―つまり、必然の出会いを無理やりつくっていると……。
「『将来、恋愛や結婚できるようになるための訓練が今の学生には必要なんだ』と、この授業をやっている教授に言われましたよ。
1年次からグループワークをやる授業は多くの大学にありますが、その授業を全員に受けさせるところはあまりない。でも、履修は自由としていたら、コ ミュニケーション弱者の学生がそんな授業を取るはずがありません。人間関係ができる前の新入生に強制参加させることがこの授業のポイントです」
―学生を放っておいてくれるのが大学のいいところだと思っていました。
「コミュニケーション能力が高い人はそういう学校でいいでしょう。また、対人スキルとは場を盛り上げる能力というふうに思われがちですが、これが本 当のコミュニケーション能力といってよいものか、議論はあると思います。しかし現実に、放任では学校に来なくなってしまう学生が大勢いる。そして、彼らは 将来にわたって損をしかねない。ですから、こうしたカリキュラムにあきれているのは周回遅れの反応というべきだと思います
(撮影/高橋定敬)
●山内太地(やまうち・たいじ)
フリーライター、大学研究家。47都道府県11ヵ国および3地域の865大学1152キャンパスを見学。著書に、『アホ大学のバカ学生』(共著、光文社新 書)、『大学生図鑑2012』(晋遊舎)など。メールマガジン『親が知らない進学のヤバい話』を発行。ツイッターアカウント@yamauchitaiji
『22歳負け組の恐怖』
中経出版 1365円

人間関係の格差化、経済のグローバル化で、高校・大学という時期を普通に過ごしていたのでは「普通の幸せ」も得られない世の中になりつつある。そんななかで、対人スキルも高くない普通の若者はどうしたらよいのか。数々の大学の試みから探る


“親子就活”が加速する理由は、親にとって「子育て最終決戦」だから

週プレNEWS 1月10日(木)17時10分配信

“親子就活”が加速する理由は、親にとって「子育て最終決戦」だから
早稲田、明治などの有名大学でも相次いで保護者向けセミナーを開催。企業や就職情報会社、大学キャリアセンター、就活塾などを巻き込み、“親子就活”の広がりが加速している
今年も本格的に動き出した就職活動。ここ数年のトレンドでは、企業説明会の同伴やOB訪問のセッティングなど、親子二人三脚で内定を目指す「親子就活」が広まっている。

就活解禁を2ヵ月後に控えた昨年10月、明治大学・駿河台キャンパスで開かれた保護者向けセミナーに約2000人が詰めかけたように、今や就活は親にとっても重大な関心ごとになっているのだ。

早稲田大学でも昨年12月に保護者向けセミナーを学内で開催。約200人の保護者が集まった会場で、キャリアセンターのベテラン職員が約1時間半、就活の現状や早大生の就職実績、学生に求められる能力といった点をみっちり講演した。

「今や大学進学率50%時代。多くの18歳が大学に来るのでピンキリの格差が拡大し、キリのほうは『就職活動』という漢字が書けない。『割合』の意味がわからない。息子さんは大丈夫ですか?」

ざわめく参加者たちを黙らせたのは、講師の次のひと言だった。

「選考の過程で『あ、この学生には親の影響力があるな』と面接官に見透かされたら終わり。『親の意見を聞かないと行動しないタイプ』『自立心が希薄』と判断されます」

セミナー終了後、「ウチは大丈夫。息子の意思に任せていますから」と動じない親がいる一方で、「これから娘とどう接すればいいのよ」と混乱を隠せない声も聞かれた。

親の影響が見えると面接に落ちる――。こう指摘されているのにも関わらず、今度は“塾”に頼る親も後を絶たない。その熱烈な需要と就職難に支えられ、目 下、急成長を遂げているのが就活塾だ。国内最大級の就活支援塾とうたう「内定塾」には東京校、大阪校を合わせ、就活生500人が通う。

わが子を塾に入れる親の心境はこうだ。ある塾生の母親が話す。

「息子は去年、就活に失敗し、いま一浪中。もう自分たちだけじゃ手に負えないから入塾させたのよ。費用は自己分析&面接講座に個別面談、グループディス カッションと集団面接の練習会や回数無制限のエントリーシート添削がセットで年間16万8000円。一流企業と中小企業じゃ生涯賃金がナン億も変わるわけ でしょ? それを思えば安い!」

ただ、子供のためとはいえ過保護になるのはよくない。東京都内にある就活塾「就活ゼミ」の有川智浩代表がこう話す。

「子供の就活に過干渉な親もいます。自宅で面接練習に付き合うくらいならいいが、エントリーシートの代筆をする親まで。塾の講義で個人指導をしていると、 その学生のレベルがおおよそわかるものなんですが、添削依頼してきたエントリーシートの出来があまりにも違う。本人に問い詰めたら、『実は親が……』と。 それどころか、『家族がwebテストを受けてくれるのでSPI(適性検査)は落ちたことがない』という子もいました」

どうして、今どきの親は、これほど“わが子の就活”に熱心になるのか? 『東洋経済HRオンライン』編集長で、『親子で勝つ就活』(東洋経済新報社)の著者、田宮寛之氏がこう話す。

「昨今の大学生の保護者は、子供が小中学校に入る時点から私立受験などで熱心だった人が少なくありません。塾の月謝、塾への送迎、受験のストレス、学校の 授業料……。重たい負担に耐え抜いてきたのは、いい会社に就職させるためと考える保護者がほとんど。たとえ東大に入学できても大企業に就職できなければ 『子育て失敗』と考える親も少なくありません。そんな親にとって就活は『子育て最終決戦』ともいえるのです」

子供をいい企業に入社させることが、子育ての集大成。“親子就活”の広がりの背景には、こうした親世代の意識が強く関わっているようだ。

(取材・文/興山英雄)

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