Wednesday, February 12, 2014

さざ波…(感想に代えて)

行ってきました、久しぶりの京都。といっても、シンポの会場は京都駅すぐ前のキャンパスプラザ、宿泊したのは目の前のホテル、懇親会場も歩いてすぐのところと、結局駅から半径300メートルを出ませんでしたが。

それにしてもあらためてすごいタイトルですよね。「日本の大学、このごろ焦ってませんか?~『社会に役立つ大学』の価値を問う~」っていう(笑)。それほど知名度があるわけでもない若手三人の登壇者の割に、50名ほどの聴衆が集まって下さったのは、京都の大学教育ネットワーク(ASAGAO)での告知、インパクトのあるタイトルと力のこもったチラシのデザインの素晴らしさ、そしてツイッターなどで情報を拡散していただいた友人・知人の方々のお力添え(ありがとうございました!)が大きく作用していたと思われます。

始まる前に、関係者で昼食をとりながら打ち合わせをしたのですが、事務職員の方の情熱的な献身が強く印象に残りました。ポスターデザインもそこに登場する模型もすべてご自分で制作されたそうですが、「聴衆に是が非でも行きたいと思わせたい、先生方にもやる気になってもらいたい、そのメッセージをポスターに込めた」とおっしゃっておられ、私たち三人もそれに煽られ、さらにやる気が増しました。大学の一期生だそうで、「自分の母校を良くしていくんだ」という情熱を持つ職員と、その自由で創造性あふれる情熱の発露を許す上司や周囲、こういうのって大事だなと思いました。

飄々としながらも内に熱いものを秘めた、ダンディな司会のk先生は冒頭で「うちの研究所はタブーを破ることが売りだと自覚している」といった趣旨のことをおっしゃっておられました。大学は「右にならえ」の中身のない宣伝をやめて、もっとこういった知的アピールを売りにしたほうがいい。こういう展開ってアリだなと思います。危機感をもって攻める大学とその所属機関・研究所。

昨年度の公開シンポジウムは、日本初の春画に関するシンポジウムだったそうで、業界関係者からは「うちも『日本初』をやりたかったのに、先を越された」と羨望の的だったそうです。これまでも様々な大学で企画が持ち上がっては、その都度、理事会等でつぶされてしまっていたとのことでした。

大学とはその手の先入観・固定観念・因習・タブーを破る場所であるはずなのに、そして現場はそれを変えようとしているのに、トップに知的冒険を面白がる見識・度量がない。けれども、私たちは粛々と、ミクロな規模で、現場で、そのような冒険を続け、トライし続けていかねばならない。それを続けていけば、きっとどこかで見てくれている人がいる。

そもそもこの企画にお誘いいただいたのは、nさんの「哲学と大学」企画でご一緒したfさんと懇親会で「このあいだ、単位に関する論文を書いたんですよ」と私がお話ししたのがきっかけだったと、今回伺いました。ミクロの知的冒険はそのようにして、耳伝えで、口コミで、密かにさざ波のように広がっていく。小さなさざ波なので、すぐに消えていってしまいもするけれども(笑)。

今回心がけたのは、なるべく学生アルバイトたちに話しかけること。懇親会にも誘いました。そういう学生たちというのは多少とも先生と近い距離にいる学生たちなわけで、彼らに大学の”知的”イベントに参加してもらう、彼らをさらにいっそう”大学的なもの”に巻き込んでいくことが重要なのではないか。最近特にそういう意識を持っています。それに成功したかどうかはともかくとして。

議論の中で「学者芸人論」を展開したのは、そういう学生や一般聴衆を意識しつつ、社会と大学の両方に同時に語り掛けようとした結果の、直観的な行動でした。芸人も、いつの時代にも社会のニーズや人々の欲望に合わせながらも、自分のやりたいことをそこに紛れ込ませてきた。やらねばならないこととやりたいことを思い通りに調和させられるのは、ごく一握りの選ばれた人たち。ひな壇芸人やレッドカーペットのように、瞬発力重視・即興性重視の、注文に合わせた、本人たちにとっては不本意な形でも、面白い芸人は面白い。もちろんそんな芸はやりたくないという芸人もいてよくて、そういった制度の外部で成功していく芸人もいる。

ひな壇を経ずに、若くして成功し、いきなり冠番組をもつことのできる芸人もいれば、長い下積み生活の後で花開く芸人、一発屋で終わる芸人、終わるかと思いきや再ブレイクを果たす芸人、芸以外の部分で売れる芸人、そして消えていく多くの芸人、芸人予備軍たち…。やりたいことばかりできるわけではないと分かっていても、きわめて不安定な、先の見えない職業だと分かっていても、それでも芸を披露したい、芸人になりたいという若者はいつの時代にも一定数いる。

現状は決して楽観視できないけれど、あまりパセティックに悲観しすぎてもしょうがない。私たちは学者として、知的な”芸”を磨いていくほかない。そう改めて再認識した夜でした。

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