Tuesday, June 24, 2014

誰にでも分かる比喩で説明する(2)オーナーの役割

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プロ球団のオーナーが就任後、真っ先にやるべきことは何だろうか?それは現場の激励、視察ではあるまいか。「ご苦労さん、よくやってくれているね。さらに一層の奮起を期待します」などなど。そして、少なくとも現場を自分の目で確認したうえで、自分が野球の素人であるということを肝に銘じたうえで、なすべき緊急の改革があるならば、現場の声にしっかりと耳を傾けながら、その改革を行なっていくというのがあるべき姿勢なのではないのか。

大学の理事長が就任後、真っ先にやるべきことは何だろうか?なるほど、大学の各種施設の視察、それも大事なことには違いない。だが、最も大事なことは、今自らの大学でどのような教育が実際になされているのか、その現場を見ることから始めることではないのか。売り場を実際に見に行かない、現場に足を運ばない経営者に、”健全経営”を云々されても困る。

まともな民間企業のトップなら、そこから始めるはずだ。「まず激励、そのうえで、改善点の具体的な(抽象的な精神論ではない)指摘」が基本中の基本だからだ。大学教員は、勉強しない学生たちにさえ、日々そのように接している。「まず激励、そして具体的な改善の奨励」と。いきなりダメ出しから、それも根拠も論拠もない精神論的な完全否定から入るなどとは、教育産業のトップにあるまじき振る舞いであると言わざるを得ない。

現場を見たこともない、生の野球を見たこともない、球場に足を運んだこともないオーナーに、球団の経営改善ではなく――それは完全にプロ野球選手の仕事ではない――、チームのプレイ改善やファンサービス向上による観客動員アップ――それが唯一選手にできることだ――について、何か有意義なことが言えるだろうか?

教室に足を運んだこともない、実際の講義やゼミの風景を見たこともない理事長に、しかもこともあろうに50年前の自分の(しかもろくに勉強しなかったと公言して憚らない自分の)うっすらとした記憶を頼りに、教育の質向上による志願率アップについて、何か有意義なことが言えるだろうか?

「だいたい、あなたがたのプレイはなっていない。私はプロ野球のド素人であり、かつあなた方のプレイを一度も見たことはないが、あなたたちが一生懸命やっているとは到底思えない。あなた方のプレイに魅力がないから、観客動員が悪いのだ」なんて。

一度も講義やゼミに足を運んだことのない理事長が、「あなたがたの教育に魅力がないから、学生が集まらないのだ」とおっしゃる。そんなことがありえるだろうか?まさか。

ひとくちにプロ野球チームといっても、その内部はさまざまであり、例えば、選手に限ってみても、部門によって大きく性質を異にし、選手の気質も、彼らが抱える問題もさまざまであるという基本的事実すらわきまえないオーナーや球団社長に、「プレイの質改善による観客動員」を云々する資格は果たしてあるのだろうか。

ひとくちに大学といっても、その内部はさまざまであり、学部によって大きく性質を異にし、学生気質も、彼らが抱える問題もさまざまであるという基本的事実すらわきまえない理事長が、あるべき大学像を云々する。それは理のあることだろうか?



学内でも学外でも業務は山積しており、急いで書いたので、言い足りない、不十分な点も多々あろうかと思う。だが、日本にとってのW杯がほぼ終わりつつある(?)現在、経営陣にも分かりやすい、使える比喩を提示しておこうと考えた次第である。もしお役に立つようなことがあれば幸いです。

私は無意味な感情的対立は不毛だと思っています。相手がどれほど非合理的で、むやみに好戦的で、理不尽であろうとも、最後の最後まで、理性的に、時にユーモアをもって、言論で応戦することが学者として正しい在り方だと信じています。

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