Tuesday, October 02, 2012

運・鈍・根――10/2 <訃報>大滝秀治さん87歳=俳優、舞台や映画で幅広く活躍

<訃報>大滝秀治さん87歳=俳優、舞台や映画で幅広く活躍

毎日新聞 10月5日(金)13時17分配信
<訃報>大滝秀治さん87歳=俳優、舞台や映画で幅広く活躍
拡大写真
俳優の大滝秀治さん=東京都港区で2011年10月、小林努撮影
 重厚な主役から個性的な脇役まで、舞台や映画に幅広く活躍した俳優で文化功労者の大滝秀治(おおたき・ひでじ)さんが2日午後3時17分、肺扁平(へんぺい)上皮がんのため東京都内の自宅で亡くなった。87歳。

【2012レクイエム~さよならあの人】地井武男さんら

 通夜・葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻純子(じゅんこ)さん。「大滝秀治 お別れの会」は22日午後2時、東京都港区南青山の青山葬儀所。

 東京都生まれ。中学卒業後、陸軍に入り、国外で終戦を迎えた。復員後、丸の内の連合国軍総司令部(GHQ)電話部勤務のかたわら、帝国劇場で演劇の魅力 にはまり1948年、民衆芸術劇場(第1次民芸)付属養成所に入所。50年の滝沢修ら率いる劇団民芸創立に研究生として参加し、同年「風の吹く一幕」で初 舞台を踏んだ。70年、東京裁判を描いた木下順二作品の舞台「審判」で注目され、以降、劇団の中心俳優となった。

 あくの強い人物造形の一方で、ひょうひょうとしたユーモラスをたたえた演技で存在感を発揮、幅広い役柄をこなした。民芸の舞台は、「巨匠」の老人役、 「審判」の首席弁護人役(いずれも木下順二作品)、「坐漁荘の人びと」の西園寺公望役、「浅草物語」の鈴木市之進役(いずれも小幡欣治作品)など多数。

 その個性と存在感は、テレビドラマや映画、CMでも発揮された。ドラマ「うちのホンカン」(75年、主演)や「特捜最前線」、映画「不毛地帯」「あにいもうと」「お葬式」など代表作は多い。

 80歳を過ぎてからもほぼ毎年、「どろんどろん」「らくだ」など民芸の舞台の主演を務め、円熟の芸境を見せていた。「らくだ」の演技で文化庁芸術祭大賞など受賞多数。88年紫綬褒章、2011年文化功労者。奈良岡朋子さんとともに劇団民芸代表。

 12年4月20日、種田山頭火役で主演予定だった6月の民芸舞台「うしろ姿のしぐれてゆくか」(宮本研作)を体調不良のため降板、病気療養中だった。 11年の「帰還」(坂手洋二作)が最後の舞台となった。また、現在公開中の高倉健さん主演「あなたへ」(降旗康男監督)が映画では最後となった。【濱田元 子】

俳優の大滝秀治さんが死去した。芸能面「日曜日のヒーロー」の復刻記事。
【2006年4月9日紙面から】
(…) 「僕より才能がある役者はたくさんいますよ。でも、僕には『運・鈍・根』があった。運と、ゆっくり鈍重に、根気よくやってきた。役者って、つぶし がきかないからね。若手に僕が俳優にならなかったら、何になったか聞いたら『競馬・競輪の予想屋』って言うんだ。僕は絵も描けなければ、文章もだめ。で も、役者は今日までやってこられた。ただ前を向いてやってきたのがよかったのかな」。
 「審判」の後に、今年12月には新作の舞台が控えている。ゼロからせりふを覚えなくてはいけない新作に、ここ数年、毎年のように挑戦している。  「主治医の先生に『このごろ芝居がしんどくて、俳優をやめたい』と言ったら『君は10年前から言ってる。今やめたら確実にボケちゃうよ』って言う んだな。80歳になって、ぎりぎりの時期と思ってる。宇野先生に言われた言葉があるんだ。『人を刺激しなくなった役者はダメ。戦力外と思え』って。表現 力、集中力、記憶力が衰え、肉体的にも老化してくる。芝居が僕の命を延ばしているのか、縮めているのか。ものをつくる人間に欲がなくなったらだめだと思う よ」。
 不器用な人間が、役者という仕事を愛して愚直に歩んできた。56年の歴史が今の大滝に息づいている。【取材・林尚之】
 [2012年10月5日13時34分]


高倉健、“素晴らしい先輩”大滝秀治に感謝

ぴあ映画生活 10月5日(金)17時16分配信
高倉健、“素晴らしい先輩”大滝秀治に感謝

『あなたへ』で共演した大滝秀治と高倉健 (C)2012「あなたへ」製作委員会
今月2日に亡くなった俳優、大滝秀治の訃報を受け、公開中の映画『あなたへ』で大滝と共演した高倉健がコメントを発表した。

高倉は、訃報を受け「大滝さんが今年に入り体調を崩され、入院なさっている間、お手紙の遣り取りを続けておりました。大滝さんの最後のお仕事の相手を務め させて戴き、感謝しております。今までご一緒させて頂いたいろいろな場面が思い浮かびます。本当に素晴らしい先輩でした。静かなお別れができました。心よ りご冥福をお祈り申し上げます」とコメントした。

大滝は、1925年生まれの俳優で、1948年に東京民衆芸術劇場附属俳優養成所に入所。1950年に民藝創設に参加。以降、舞台を中心に活動を続ける一 方で、『不毛地帯』や『あにいもうと』などの映画や、CMでも活動を続けてきた。今年6月の民藝公演『「うしろ姿のしぐれてゆくか』を体調不良のために降 板し、療養していたが、今月2日に都内の自宅で亡くなった。

『あなたへ』は、亡き妻の遺した絵手紙をきっかけにその真意を知るため、妻の故郷・九州へと旅に出る夫(高倉)の姿を描いたロードムービーで、高倉、大滝のほか、ビートたけし、佐藤浩市、草なぎ剛、綾瀬はるか、田中裕子、浅野忠信らが出演している。

No comments: