Tuesday, December 19, 2023

2023/11/12 KANさん逝去

ずっと好きだった。曲の緻密なつくり、歌詞で展開するストーリーの秀逸さ、ふざけたライブパフォーマンスをやりきるサービス精神、自分の歌やピアノの技術に対する謙虚さ、音楽へのひたむきな情熱。業界はまったく違うのだが、いつも憧れていた。

去年刊行した著作の帯には《安息》の歌詞を、あとがきでは《エキストラ》をそのまま引用したかったのだが、著作権の関係で難しいということで、多少変えて使わせていただいた。

《エキストラ》はミュージシャンが音楽への愛を歌った歌だと思う。《かなわぬ恋なんて言うに及ばぬ途方にくれるような片思い 決してこの思いが届かなくても 大好きです それだけ》

曲を分析的に聴いているからだろう。特徴を捉えて、自分のものにすることに長けている。元々ビリー・ジョエルっぽい曲、ビートルズっぽい曲などもけっこうあるが、日本のミュージシャンの特徴をうまく掬い取った曲も多い。Perfumeっぽい曲として作られた《REGIKOSTAR~レジ子スターの刺激~》(2010)や槇原敬之の楽曲を「理論的に分析」して作られた《車は走る》(2010)も悪くない。個人的に曲として好きなのは、ASKAを意識して作られた共作《予定どおりに偶然に》(2010)とスキマスイッチの20以上の曲を文字通りパズルのように自在に組み上げた《回奏パズル》(2017)である。

もちろん何のご縁もなく、ライブに行ったこともなかったのだが、とても悲しく、最近は追悼のラジオや過去のライブ映像をよく聴いている。

追悼ラジオでは、槇原敬之さん、秦基博さんのもよかったが、スタレビの根本要さん、ウルフルズのトータス松本さんのラジオは特に好きだった。

過去のライブ映像としては、ミスチルの《and I love you》を歌っている映像が一番惹かれる。あの夏の感じ。もう何回観たか分からないくらい観ているが、何度観てもいい。

ライブ音源として好きなのは《予定通りに偶然に》。ASKAとのセッションは、アルバム版より好きだ。

好きな曲は上に挙げた曲以外にも《50年後も》《永遠》《1989》《世界でいちばん好きな人》《けやき通りがいろづく頃》《よければ一緒に》《秋、多摩川にて》《カサナルキセキ》《君が好き 胸が痛い》《何の変哲もないLove Song》《Day By Day》《Moon》《まゆみ》《すべての悲しみにさよならするために》などなど、本当にたくさんあるのだが、《東京ライフ》は個人的に本当に好きなので、平井堅さんが名前を挙げてくれたり、

《ちょうどKANさんがベストアルバムを出す寸前だったんですね。The Very Best of KAN。で、そのときに私はもう、何様かという、ちょっとダメ出しをしてしまいまして。選曲にね。やれ《永遠》が入ってないだの、《東京ライフ》とか《恋する二人の[834km]》…いつも数字が覚えられない》(2008年1月のラジオ)

大江千里さんが2023年12月17日の追悼ラジオで《東京ライフ》をかけてくれたのはとてもうれしかった。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

Saturday, December 16, 2023

2023/12/16 トニ・ネグリ氏逝去

昨晩未明にパリのご自宅で亡くなったとのことです。最後の数か月、哲学とはあまり関係ないところでご縁があったので驚いています。ご冥福をお祈りいたします。

https://www.philomag.com/articles/le-philosophe-italien-toni-negri-est-mort

Wednesday, December 13, 2023

2024/03/13 ベルクソン『記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度』刊行記念イベント第二弾:思想史との邂逅編

刊行記念第二弾のイベントは、アリストテレスとコンディヤックの専門家にお越しいただき、講義後半の哲学史的な内容を読み解いていただきます。もちろんお二人は哲学史家であると同時にそれぞれ実に独創的な哲学者でもあり、その視点からのコメントもいただけるものと期待しております。情報拡散をお願い致します。

日時:2024年3月13日(水)19:00-22:00

イベントタイトル:ベルクソン『記憶理論の歴史 コレージュ・ド・フランス講義 1903-04年度』刊行記念イベント第二弾:思想史編

開催形態:ZOOM
※下記URLからご登録ください。参加URLは前日夜までにお送りします。
https://forms.office.com/r/TqKa25mFtn

参加:無料

登壇者:中畑正志(アリストテレス研究)×山口裕之(コンディヤック研究)

応答者:訳者(藤田尚志・平井靖史・天野恵美理・岡嶋隆佑・木山裕登)

Tuesday, December 12, 2023

Friday, December 08, 2023

書評をいただきました。

新たに書評をいただきました。本当にありがとうございます。励みになります。

『西日本哲学年報』第31号 2023年10月(評者 平井靖史氏 慶応義塾大学)
『フランス哲学・思想研究』 第28号 2023年10月1日(評者 平岡紘氏 流通経済大学)

これまでにいただいた書評は勁草書房HPにて。

Wednesday, December 06, 2023

2024/01/29 ベルクソン『記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度』刊行記念イベント第一弾:現代諸科学との接合編

刊行記念イベント第一弾は講義前半の内容に対応して、現在第一線で活躍しておられる科学者(精神病理学者、学習心理学者)の方々にお話をいただきます。

ベルクソン『記憶理論の歴史――コレージュ・ド・フランス講義 1903-1904年度』刊行記念イベント第一弾:現代諸科学との接合編

日時:1月29日(月)19:00-22:00
場所:ZOOM
参加希望者はFormsにてお申し込みください。
 https://forms.office.com/r/XLpT7BdMuj

イベントまでに開催URLをお知らせします。

登壇者:兼本浩祐(精神病理学)× 澤幸祐(学習心理学)
応答者:訳者一同(藤田尚志・平井靖史・天野恵美理・岡嶋隆佑・木山裕登)

Wednesday, November 15, 2023

掛け金と賭け金

掛金、掛け金(かけがね)
戸や箱などに取り付け、もう一方の金具に掛けて開かないようにする金具のこと。

掛金、掛け金(かけきん)
定期的に積み立てしたり、支払ったりする金銭のこと。例えば、保険の場合は、保険会社が負担する責任に対する対価(保険契約した側から保険会社に対して支払われる金銭)。具体的に言えば、保険料や営業保険料。あるいは企業年金制度の場合、年金および一時金たる給付を支給する事業に係る費用として、定期的に事業主や加入員(加入者)が拠出・負担する資金。

賭金、賭け金(かけきん)
賭け事・賭博において賭けた金、ベット(bet)した金。その行方を賭けの勝敗に委ねた金のこと。

enjeu
➊ 賭(か)け金.miser un enjeu 金を賭ける.
➋(賭けられたものの意味で)重大な焦点,大きな争点.enjeu politique 政治的争点.

Friday, October 13, 2023

EMS=クロノポストの話

以下は、2023年8月中旬から下旬にかけて起こったトラブルである。知人であるフランス人研究者が手を加えてくれた(かなり激しい調子の)Chronopostに対するréclamationの自動翻訳とそのフランス語原文を以下に貼り付けておく。

今回の一件は本当にひどい。その知人曰く、郵便局は元々はまあまあのクオリティだったが、政府の人員削減でクオリティが下がり、政府はその質の低下を基に「だから民営化を進めるべきだ」とネオリベ的政策を進めようとしている、とのこと。

事の真相=深層はともかく、私と同様の目に遭っている人がこれほどいるとは・・・。

https://fr.trustpilot.com/review/chronoposte.fr

いずれにしても疲れ果てた。これと、NAVIGOの話と、病院の話がトリプルで襲ってきたので、ちょっと精神的に参ってしまった。

***

こんにちは、

クロノポストで私たちに起こったことの概要を以下に記載します。私たちは、貴社にこの損害を修復するよう強く求めます。私たちは、この問題をあらゆる法的機関や消費者保護サービスに訴える用意があり、あまりにグロテスクなので公表します。

私はフランスに1年間滞在している日本人研究者です。妻はフランスでの研究に使うため、日本から学術書を3小包送ってくれた。妻はその後フランスで私と合流したので、我が家にはもう日本の人はいない。

小包の番号はXXX、XXX、XXX。

送料は約700ユーロでした。送り先の住所と名前 受取人の住所と氏名は明確に記載されており、疑う余地はなかった。間違いありませんでした。

Chrionopostのウェブサイト上の追跡は、小包が8月18日にフランスに到着したことを証明している。それから2週間、何の連絡もなかった。この間、クロノポストのカスタマーサービスに7回電話した。

1回目:先週8月24日(木)、以下の小包についてカスタマーサービスに電話し、必要な情報を提供した。アドバイザーの回答は「明日配達されます」だった。翌日、小包は届かなかった。

8月25日(金)に2度目の電話: 昨日のデータ入力が遅れたため、金曜日の日中の配達は難しい、明日郵送されるとのこと。土曜日は一日中待った。配達は来なかった。

3回目の電話:8月28日(月)の朝、カスタマーサービスに電話したところ、アドバイザーは翌日に配達されると言った。必要な情報を再度確認すると、オペレーターは「問題ありません。明日お届けします" 荷物は配達されなかった。

4度目の電話:8月29日(火): 翌日配達されるとのこと。必要な情報を再度確認すると、オペレーターはこう答えた。「問題ありません。明日お届けします」。荷物は配達されなかった。

5度目の電話: クロノポストのウェブサイトに突然、「小包は拒否されました。その後、理由:返送料請求可能」と表示された。すぐにカスタマーサービスに電話して状況を確認し(アドバイザーの名前は クリステル)、すぐに日本への返送手続きを止めた。この電話の後、サイトには私が求めていたことが記録されていた。「選択された指示:配達日の再スケジュール 再配達日:2023年8月31日」。

しかしその後、事態はさらにおかしくなった。クロノポストのウェブサイトが クロノポストのウェブサイトが表示され始めた:

2023年8月30日(水)17:36 アルフォートヴィル・クロノポスト
出発オフィスで仕分け作業。コメント : 小包の引き取り クロノポストにて集荷中。

水曜日 30/08/2023(水)21:55 ロワシーインタークロノポスト
小包輸送中

水曜日 30/08/2023(水)21:55 クロノポスト・フランス
小包輸送中 場所: ロワシー - パリ - フランス

水曜日 30/08/2023(水)21:58 ロワシーインタークロノポスト
小包が送付先国(日本)に入国しました。

水曜日 30/08/2023(水)22:01 ロワシーインタークロノポスト
小包が差出人に返送されました。場所 : CDX
理由 : 配達拒否

水曜日 30/08/2023(水)22:03 ロワシーインタークロノポスト
小包が送付先国(日本)に到着

水曜日 30/08/2023(水)22:03 ロワシーインタークロノポスト
小包が差出人に返送されました。
理由:小包が拒否された

6回目の電話:8月31日(木)、すぐにカスタマーサービスに電話した。アドバイザーは、日本郵便に電話をして取り消しを阻止するようアドバイスしてくれた。そうしたが、無駄だった。日本郵便側の回答は、返送は日本郵便ではなくクロノポストで行われるから、とのことだった。私はクロノポストのカスタマーサービス担当者に、返送の「原因」を教えてほしいと要請した。連絡はなかった。

午後3時半、6番目の電話アドバイザーから連絡があり、上司は不在で、代わりに国際関係を専門とするアドバイザーに連絡を取ってくれた。この専門家は、日本の郵便局に電話して「クロノポストに連絡するように日本の郵便局に要請すること」とアドバイスしてくれた。

日本の郵便局のどのセクションの誰に連絡すればいいのか、と尋ねたところ、彼の答えは、日本の郵便局が私の小包の番号を入力するので、どのセクションに連絡すればいいかは彼らが知っている、というものだった。

要約しよう:
私は研究のために1年間フランスに招かれた科学者である。私の研究書は小包の中に入っている。日本の郵便局がフランスに送った。クロノポストは2週間以上もひどい対応をした(例えば、小包が返送されたと言ったとき)。発送には700ユーロかかり、損害は甚大だ(私は研究者であり、仕事をするためには本が必要であり、そのために私はここにいる)。この状況を解決するよう強く求めます。

***

Bonjour,
Je vous prie de trouver ci-dessous le résumé de la catastrophe qui nous est arrivée avec Chronopost, et nous vous demandons instamment de réparer le préjudice occasionné - nous sommes prêts à saisir toutes les instances légales et les services juridiques de défense des consommateurs à cet effet, et à rendre publique l'affaire tellement elle est grotesque.

Je suis un chercheur japonais invité en France pendant un an. J'ai fait expédier par ma femme depuis le Japon, trois colis de livres scientifiques qui me servent pour ma recherche en France. Ma femme m'a depuis rejoint en France ; il n'y a donc plus personne au Japon à notre domicile.

Les colis sont: XXX, XXX, XXX.

Le coût de l'envoi a été d'environ  700 euros. L'adresse et le nom du destinataire étaient clairement indiqués, il n'y avait aucun doute.

Le tracking du site Chrionopost prouve que les colis sont rentrés France le 18 août. Puis plus aucune nouvelle pendant quinze jours. J'ai, pendant cette période, appelé le service-client de Chronopost sept fois.

1er appel : La semaine dernière, le 24 août (jeudi), j'ai appelé le service-client concernant le colis suivant et j'ai fourni les informations nécessaires. La réponse de la conseillère a été: "Ils seront livrés demain". Les colisne sont pas arrivés le lendemain.

2nd appel, le 25 août (vendredi) : La conseillère m'a informé que l'entrée des données d'hier avait été retardée, rendant la livraison difficile pendant la journée du vendredi, et m'a dit qu'elle aurait lieu le samedi. J'ai attendu toute la journée du samedi. La livraison n'a pas eu lieu.

3e appel : Le 28 août (lundi) matin, j'ai appelé le service-client et le conseiller m'a dit que la livraison serait faite le lendemain. J'ai vérifié à nouveau les informations nécessaires et l'opérateur m'a répondu "Il n'y a pas de problème. Nous le livrerons demain." Les colis n'ont pas été livrés.

4e appel : Le 29 août (mardi) : Le conseiller m'a dit que la livraison sera faite le lendemain. J'ai vérifié à nouveau les informations nécessaires et l'opérateur m'a répondu "Il n'y a pas de problème. Nous le livrerons demain." Les colis n'ont pas été livrés.

5e appel : Sur le site de Chronopost soudainement apparu le message : "Motif : Colis refusé. Puis motif : Retour expéditeur facturable". J'ai appelé tout de suite le service clientèle pour comprendre et arrêter immédiatement la procédure de retournement au Japon. Après cet appel, le site a enregistré ce que je demandais: "Origine : Service Client. Instruction choisie : Reprogrammation de la date de livraison Date de relivraison : 31/08/2023". (La conseillère s'appelle Christelle).

Mais à la suite de cela, tout devient encore plus délirant. Le site de Chronopost se met à indiquer:

mercredi 30/08/2023
17:36 ALFORTVILLE CHRONOPOST
Tri effectué dans l'agence de départ. Commentaire : Colis pris en charge par Chronopost, en cours d'acheminement

mercredi 30/08/2023
21:55 ROISSY INTER CHRONOPOST
Colis en transit

mercredi 30/08/2023
21:55 Chronopost France
Colis en transit. Lieu : Roissy - Paris - FR

mercredi 30/08/2023
21:58 ROISSY INTER CHRONOPOST
Colis entré dans le pays de destination

mercredi 30/08/2023
22:01 ROISSY INTER CHRONOPOST
Colis retourné à l'expéditeur. Lieu : CDX
Motif : Colis refusé

mercredi 30/08/2023
22:03 ROISSY INTER CHRONOPOST
Colis entré dans le pays de destination N° :XXX

mercredi 30/08/2023
22:03 ROISSY INTER CHRONOPOST
Colis retourné à l'expéditeur Lieu : Roissy - Paris - FR
Motif : Colis refusé

6e appel : le 31 août (jeudi), j'ai immédiatement appelé le service-client. Le conseiller m'a conseillé d'appeler la poste japonaise pour bloquer le retournement. Je l'ai fait, mais en vain. Le retournement est fait par Chronopost, et non par la poste japonaise. J'ai insisté auprès du conseiller de Chronopost sur savoir la "cause" de ce retournement, et il m'a dit que son supérieur me contacterait "au plus tard à 13h". Il n'a pas appelé.

15h30, le conseiller du 6e appel m'a contacté en disant que le supérieur n'est pas disponible, et à sa place, il met en contact avec le conseiller spécialiste des relations internationales. Ce spécialiste m'a conseillé d'appeler la Poste japonaise pour lui demander de "contacter Chronopost tout simplement".

Je lui ai plusieurs fois demandé: "Appeler qui de quelle section de Chronopost?" Sa réponse était: comme la Poste japonaise saisit le numéro de mon colis, elle sait à quelle section s'adresser.

Je résume:
Je suis un scientifique invité en France pendant un an pour faire de la recherche, mes livres de recherche sont dans les colis, j'ai payé 700 euros pour les envoyer, la poste japonaise les a fait arriver en France (elle est efficace), puis Chronopost s'est fichu de moi pendant plus de quinze jours en me promettant des livraisons qui ne sont jamais arrivées, des suivis qui n'ont jamais été faits, en mentant (quand il est dit que le colis a été refusé par exemple, ou en prétendant que je serais recontacté par un supérieur).

L'opération m'a coûté 700 euros, le dommage est énorme (je suis un scientifique, j'ai besoin de mes livres pour travailler et je suis ici pour cela). Je vous demande donc instamment de résoudre la situation.

Cordialement,
XXX

mail: XXX
téléphone: XXX

Friday, October 06, 2023

NAVIGOと銀行の話

普通に研究者として滞在しているだけなら、日本のクレジットカードだけでほぼ対応できると思いますが、子どもが絡んだり、病気が関係すると、少し事情が違ってくるかもしれません。今回の滞在ではかなり苦い思いを何度もしたので、後続の人のために記しておきます(あくまで個人の体験談なので、正確さは保証の限りではありません)。

子どもが毎日パリの高校に通うとなると、NAVIGO Imagine R(イマジネールと読む)Scolaireという定期券を買った方がよい。メトロの切符一枚が2ユーロ少々。往復で4ユーロ少々、一週間で20ユーロ、年間に100日程度休みがあるそうだから、30週通うとして、単純計算で600ユーロかかる。上述の定期だと年間370ユーロ前後なので、定期を買うという選択肢一択である。9月4日(月)に作業開始。

ここでクレカの問題になる。NAVIGOのアカウントを作り、Imagine Rの申し込みをしようとしても、どうしても最後の段階で日本の銀行のクレカの情報を受け付けてくれない。

2023年9月5日(火)近くの小さな駅に行って、駅員に尋ねる。ネットでしか受け付けは出来ないとのこと。定期は駅で簡単に買えるだろうという甘い期待は打ち砕かれる。

しょうがないので、カスタマーサービスに電話をするのだが、サービスのクオリティが信じられないくらいひどい。悪夢のような悪循環を4回繰り返した。

A1:NAVIGOの電話カスタマーサービス:「駅のサービスカウンターでないと出来ません。とにかく駅に行ってください」

9月16日(土)どうしようもないので、駅に行く。どこの駅でもいいというわけではない。いくつかの大きな駅しか駄目。私はサンラザール駅に行った。

B1:駅のNAVIGOサービスカウンター:毎回人によって言うことが違う。一回目の説明:あなたは子供の名前でアカウントを作っていた。それが入金できなかった原因」。アカウントを私の名前に変え、すべての情報変更をやってくれた。しかし入金出来ない。家族の病気のこともあり、抜本的な対策を見出せぬまま、ただクレカの入力を試しては失敗するということを繰り返しながら、十日以上が過ぎていった。

A2:気持ちを奮い立たせて「どうしてもクレカの情報を入れられない」と電話で訴えると、「明日やり直してください」。すでに二週間以上やっているんだが、というと「明日やり直してください」という無表情な青年の声。いや、だからこちらとしては手は尽くして、どうしていいかわからないから電話してるんです。「明日やり直してください」。いやそうですか、どうもありがとうございました、と電話を切る。

怒りを抑えてもう一度電話すると、今度は若い女性の的確な指示(のように聞こえた):「生年月日と性別が違っていたから(だけど、それは駅の係の人がやったんだけどね)、出来なかったんだと思います。残念ながら生年月日の変更は駅の窓口でしか出来ないので、行ってみてください」

B2:9月20日(水)二度目のサンラザール駅:駅に行って性別と生年月日を変更してもらう。しかしクレカの入力は出来ない。二回目の説明:「申請を一度すべて取り消して、もう一度初めから申請し直すしかない」。もう一度最初から申請し直すも、クレカの入金は出来ず。疲れ果てて帰る。

しょうがなく、フランスの銀行口座を作ることにする。ところが、研究滞在であり、しかもある研究者のお宅に間借りさせてもらっているので、税法的にはséjournerであって、résiderではないらしく、普通の支店では口座を作れないという(BNP Paribasのパンテオン支店でそう言われた)。それでBNPのアジア方面専用だというオペラ支店に電話したり、BNPのHPで予約したりしたのだが、一向に返事がない。

A3:どうしても入金できないんですがと電話すると、またしてもあの青年。「明日やり直してください」。この人には一週間の間に二度当たったので、Réessayez demainという言葉を自動音声のように繰り返すフランス人青年の声が今も耳にこびりついている。

向こうからは何も提案してこないので、こちらから「駅の窓口で現金で入金できるのか?」と訊くと、「できます」との答え。「本当にそうなのか?もう二度も駅に行ってるんだが」ともう一度念を押すと、うんざりしたような溜息とともに「そうです」との答え。うんざりしているのはこちらなのだが。

B3:9月21日(木)三度目のサンラザール駅:駅の窓口「二回目以降はたしかに現金で入金できますが、一回目だけはクレカ(CB)でないとダメです」。日本のクレカも使えず、フランスの銀行に口座を作れず、困っているのだがと相談すると、Nickelというカードならタバコ屋で簡単に作れるという。「これ以上詳しいこと(あなたが入金できない原因)は私たちには分かりません。NAVIGOのカスタマーサービスに問い合わせてください」。疲れ果てて帰る。

ちなみに、出来る限り親切に対応してくれたこの駅員は、NAVIGOのカスタマーサービスの質の悪さについて、こう推測していた。「今は新学期で大量の問い合わせが来ていて、アルバイトが大量に雇われていますが、必ずしもしっかりとした教育を受けないままに現場に出されているので、適当なことを言ってしまうんだと思います」。まあ、銀行の窓口でも、クロノポストのカスタマーサービスでも、郵便局の窓口でも対応の悪さは同じだったのだが、「新学期」「アルバイト」というのはたしかに関係しているかもしれない。

ところが、NICKELの口座をネットで作ろうとすると、最初の質問がDans quel pays résidez-vous?であり、しかも対象国がヨーロッパ諸国しかない。これでは作れないのでは…?

途方に暮れていると、最近親しくなったカンボジア系フランス人のビジネスマンがRevolutというイギリスのネット銀行なら住所などの情報もなしで数分で口座を作れるよ、と提案してくれた。実際、早速口座は作れた。もちろんお金はまったく入っていないのだが。口座情報を入力すると、なぜかNAVIGO Imagine R Scolaireの申請は受諾される。

B4:しかし、実際問題として引き落としが出来ず、また申請が却下されては元も子もない。そこで週明けに早速、駅に向かう。

9月25日(月)駅の窓口に前述の友人(カンボジア系のフランス人)が一緒に行ってくれるというので待ち合わせ。彼はサンシールの陸軍士官学校を出たという経歴の持ち主で、私の周りにはあまりいない、いわゆるビジネスエリート?なので、話していると、世界がまったく違っていて面白い。

待ち合わせ場所は、将校(と関係者)しか入れないというCercle national des Armées。今後二度と来なさそうな、威圧感のある場所でしばらくお茶をして、いざサンラザール駅へ。

駅員の説明:「なぜかわからないけど、8回の分割払いになっていて(私は一回払いで申し込んでいた)、最初の一回目が引き落とされていないので、利息として8ユーロかかっている。一回目に関しては現金で払えるが、全額を今すべて現金払いすることはできない」。

もはや理解することを諦め、とにかく一回目の支払いだけ現金で済ませる。

9月25日(月)の夜に「imagine R : Demande de souscription validée et passe en cours de fabrication」というメールを受け取る。

残りの支払いは何としてもRevolutで済ませねばならない。ところが、入金しようとすると、最後に日本のクレカからお金を入れる段階でまたもストップ。日本の銀行側がストップをかけているという。クレジットカード専用の電話窓口にわざわざ国際電話をかけても、「Revolut?なんですかそれ?クレカで銀行に入金?」という対応であった。

しかし「入金=チャージ」であることを説明すると、「それなら可能かも」となり、上司との相談を経て「できます」に変化。これが9月28日(木)のことである。最終的には入金できたので良かったのだが、AIが自動識別でストップをかけているため、今後もいちいち入金のたびに日本の銀行に国際電話をかけることが必要だと言われた。そんな入金ってありますか・・・?福岡の銀行だからなのか?日本の銀行全般がそうなのか?

ともあれ、これで一件落着である。9月4日から始めて、すべての手続きを終了したのが9月25日、子どもの手に定期が渡ったのが9月30日である。この件だけで三週間以上を費やしました。もちろん、私の情報不足、認識不足が原因かもしれず、もっと簡便に済ませることもできたのかもしれませんが、、

ここまでくると、やはりフランスの銀行口座も開いておいた方が安全だという結論に至り、クレディ・リヨネで口座を開くことにしました。

パリに腰を据えて生活をされている方はこういう経験はないと思いますが、一年だけの研究滞在で家族同伴という場合は、上記のようなケースもありうると思います。

Thursday, September 28, 2023

パリの緊急医療

今訳あって、研究よりも毎日、病院や銀行関連の雑事に時間をほとんどとられている。

自分で詳しく調べたわけではないが、信頼するフランス人から聞いた病院関連のことを参考までにメモしておく。

緊急医療に関しては、「SOS~」もあるが、今一つ。こちらが絶対にお勧めだとのこと。

もちろん責任はとれませんので、ご利用の際は自己責任でご利用ください。


Wednesday, September 27, 2023

【フランス語】ふきん掛け、シャワーヘッド

日常よく目にするものでも、意外と名前を知らないものだ。日本語ですらそうなので、ましてフランス語だと分からない。


ふきん掛け/ふきんハンガー Porte serviettes pivotant(e)/ rotatif

日本語だと回転するやつとしないやつの区別がつかないので、フランス語のほうが親切かも。



シャワーヘッドとホース pommeau de douche et flexible de douche
tuyau flexible とも。


Saturday, September 23, 2023

ゴミの分別(tri sélectif)に関する語彙

20年ぶりにフランスで(一年だけ)生活することになった。住んでいるのは、デリダやナンシーの本で名を馳せたéd. Galiléeや文学系の出版社éd. Sillageのすぐ近くである。

集合住宅の管理人らしき人からゴミの分別に関する紙を渡された。生活するにはさほど支障のない程度にフランス語はできるつもりなのだが、生活に関する語彙力が本当になく、いくつか分からない語彙があった。自分の無知を晒すようで恥ずかしいのだが、無知は無知なのでしょうがない。調べてみた。

以下は2023年9月現在のパリ市内のとある集合住宅のゴミ出し情報である。別に「パリにおけるゴミ分別の仕方」を丁寧に解説するつもりはないので(日本語で知りたい方はこちら「パリのゴミの捨て方完全版」)、もちろん自分が調べた語彙しか載せていない。

なので、正確に言えば、「ゴミの分別(tri sélectif)に関する語彙」というよりは「ゴミの分別について調べる際に分かりにくかったいくつかの語彙」である。

***

suremballage
自動翻訳させると「オーバーラッピング」と出てくるのだが、そうなると「教材のスクリプトを読みながら、流れる英語の音声と同時に発声を行うことで、リスニング力とスピーキング力を同時に鍛えることができる効率的な英語の学習方法」という意味との混乱が生じる。

文脈によっては「過剰包装」と訳して良い場合ももちろんあるのだが、ゴミの分別の文脈で「Pas de petits emballages, suremballages...」などと書いてある場合は意味が通じなくなる。

この場合は「ラップ包装」とでも訳せばいいのではないだろうか。



管理人は「ラップ包装」は通常のゴミ(緑色のゴミ箱)に出せと言っているのだが、パリ市の分別情報を調べると「tous les emballages」と書いてあるし、上述の「完全ガイド」にも「ラップフィルム」は分別ゴミ(黄色のゴミ箱)とあるのだが、、、


briques alimentaires

要するに「紙パック」のことですね。これはもちろんリサイクル可能。




cubitainers

自動翻訳させると「キュービテナー」と出てきて、「そんな日本語あるわけない」と思っていたのだが、あった・・・。イベントなどでウォーターサーバーとして使われたり、箱ワイン(バッグインボックス)に使われたりするアレのことでした。

日本でも今どきのゴミ分別の説明には「キュービテナー」とか書いてあるのだろうか。「高齢者が多い集合住宅だからなのか?」とか、「フランスでは(日本でも?)個人宅にかなり普及しているのだろうか?」とか、いろいろ気になった。

polystyrène

そのままだが、「ポリスチレン」と訳すのがよさそうだ。最初検索に出てきた画像群からすると「発泡スチロール」と訳せそうだったが、もう少し調べてみると、ヨーグルトカップなどの食品容器、CDケースや使い捨てカミソリなど、つい「プラスチック」と呼んで、発泡スチロールとは区別しそうになるものまで含まれているらしい。ちなみに、wikiには「英語の学術文献を書く場合、「plastic」は厳密性を欠いた全く通用しない用語であることを認識すべきで、「resin」(樹脂、合成樹脂)などと明確に表現するのが一般的である」とあった。

管理人は、プラスチック製品やポリスチレン製品、アルミ製品はリサイクル容器に入れるなと書いているのだが、昔はそうだったのだろうか。

Le bac jaune accepte maintenant tous les emballages, peu importe la matière dans laquelle ils ont été fabriqués : tous les plastiques (PET, polystyrene, PVC..), cannettes ou aérosols en aluminium, boites de conserve en acier, et bien sûr les papiers et cartons. TF1 Info, 2023/01/30

先の完全ガイドによれば、CDケースは生ゴミのほう(bac vert)だというのですが、しかし上述の情報によれば、ポリスチレンを含むすべてのプラスチック製品はリサイクル(bac jaune)へということになっています、、


sopalin

自動翻訳すると「ペーパータオル」と出てくる。「セロテープ」や「バンドエイド」と同じで、一企業の商品名が一般的な名称として通用している(していた?)ということのようです。Sopalin社のサイトには、誇らしげに「Marque mythique d'essuie-tout Sopalin」とか「Dans les rayons de France depuis 1948, l'essuie-tout Sopalin® trouve son utilité partout.」とあります。

管理人の「ペーパータオルがダメ」というのは正解ですね。「紙(レシート、封筒、紙袋、雑誌など)」はリサイクル。「トイレットペーパーやキッチンペーパー、ティッシュペーパーや紙ナプキン」は生ゴミへ、ということのようです。


colonne à verre と conteneur à verre

次の文章がよく分からなかったので、調べてみた。"Déposez le verre dans les colonnes à verre situées dans le quartier. Les conteneurs spécifiques à verre des copropriétés voisines sont sortis sur le trottoir, ils sont rarement pleins, vous pouvez y déposer le verre le jeudi matin avant 9h."

文中の colonne à verre と conteneur à verre の違いがよく分からなかったのである。文脈からすると、街中に置いてある瓶ゴミ専用の収集ボックスはたいてい一杯になっているけれど、近くの集合住宅の瓶ゴミ専用ゴミ箱が一杯になっていることは滅多にないから、前者に入らない場合は、木曜の朝9時までなら後者に捨ててもいいよ(迷惑になるかもしれないから、捨てるなら水曜の夜に)、ということかと。


Sunday, July 30, 2023

8/1-4 集中講義「時間と生命――ベルクソン哲学入門」@東大・駒場

 超域文化科学特別講義II

日程
(火)
【3限】 13:15 ~ 14:45(90分)←2限開始ではないので注意してください。
【4限】 15:10 ~ 16:40(90分)
【5限】 17:05 ~ 18:35(90分)
(水)
【3限】 13:15 ~ 14:45(90分)
【4限】 15:10 ~ 16:40(90分)
【5限】 17:05 ~ 18:35(90分)
(木)
【3限】 13:15 ~ 14:45(90分)
【4限】 15:10 ~ 16:40(90分)
【5限】 17:05 ~ 18:35(90分)
(金)
【2限】 10:25 ~ 11:55(90分)
【3限】 13:15 ~ 14:45(90分)
【4限】 15:10 ~ 16:40(90分)
【5限】 17:05 ~ 18:35(90分)
「時間と生命――ベルクソン哲学入門 Time and Life. Introduction to the Philosophy of Bergson」
ベルクソン哲学の概要について学び、時間・記憶・生命進化・道徳・宗教について考察することにより、哲学的思考を身につけることができるようになる。

具体的な目標としては、
1)ベルクソンの四大著作『時間と自由』(1889年)『物質と記憶』(1896年)『創造的進化』(1907年)『道徳と宗教の二源泉』(1932年)の概要をおさえ、ベルクソン哲学の全体像を理解できるようになる。

2)ドゥルーズやジャンケレヴィッチらの古典的な研究から最新の研究まで、それらのエッセンスを紹介しつつ、研究者ごとに異なるアプローチの射程と理由を理解し、「哲学研究とはいかなる営為か」を理解できるようになる。

3)上記を通じて、時間や記憶、生命進化や神秘主義といった「事柄そのものへ」肉薄する哲学の営みを垣間見ることで、「哲学とは何か」を身をもって実感できるようになる。

ベルクソン研究は今「ベルクソン・ルネサンス」とか「第4段階」と言われる新たなステージを迎えつつある。研究の最前線を紹介しつつ、ベルクソン哲学の全体像を浮かび上がらせるようにしたい。
※下記はあくまでもイメージです。
【第一日】第一主著『時間と自由』を読む 第一講 方法の問題:概念とイメージ、直観的理解と知性的理解 第二講 時間の哲学(ベルクソン、カント、ハイデガー) 第三講 持続のリズム 【第二日】第二主著『物質と記憶』を読む 第四講 記憶の哲学(記憶の現代哲学) 第五講 記憶の場所論 第六講 崇高とパノラマ記憶(カント、ハイデガー) 【第三日】第三主著『創造的進化』を読む 第七講 進化論の哲学(タノ・ポステラーロと米田翼) 第八講 器官学(organologie):ユク・ホイ『再帰性と偶然性』を参照しつつ 第九講 ハイデガーの超越論的生きものの哲学 【第四日】第四主著『道徳と宗教の二源泉』を読む  第一〇講 神秘主義の哲学(平賀裕貴) 第一一講 響存(écho-sistence)と憧れ(aspiration) 第一二講 ハイデガーの脱自(Ek-sistenz)と退屈(Langeweile) 第一三講 総括:反時代的哲学としてのベルクソン哲学 

Monday, July 24, 2023

マキコミヤ2023無事終了!

ボロボロになりながらもなんとか走りきりました、、

 1)7月14日(金)14:30-17:30

場所:佐賀大学教育学部
愛の労働ーケアとセックスワーク
講演:尾崎日菜子
応答者:後藤正英、逆巻しとね、吉岡剛彦
司会:藤田尚志

2)7月16日(日)16:00-18:00
場所:本のあるところajiro
どぶ川のルソーと呼ばれた男――はじめてのレチフ・ド・ラ・ブルトンヌ
鼎談:辻川慶子・藤田尚志・森本淳生
告知ページ
https://note.com/kankanbou_e/n/na5b0815f7658
会場チケット
https://ajirobooks.stores.jp/items/64992920921a700031ffc8fd
オンラインチケット
https://ajirobooks.stores.jp/items/64992a002d3496004989e3c0
初回告知ツイート
https://twitter.com/ajirobooks/status/1673214340303028232

3)7月18日(火)19:30-20:45
場所:南山大学(名古屋)
社倫研トークラボ#3:かゆみと哲学

4)7月21日(金)19:00-21:00
場所:本のあるところajiro
「寺山修司は死んだのかーー演劇・短歌・競馬・映画から問い直す」
登壇者:伊藤徹・檜垣立哉・渡部泰明
司会:藤田尚志

Monday, July 03, 2023

平芳幸浩編『現代の皮膚感覚を探る』書評掲載

 読売新聞の書評欄(7/2)に掲載されました。郷原佳以さんの書評、今もまさにかゆいので(笑)、とても励まされます。ありがとうございます。

Sunday, May 07, 2023

いただきもの(2023年4月②)

2023年4月11日、京都薬科大学の坂本尚志(たかし)さんよりご恵投いただきました。

ギヨーム・ルブラン『カンギレム『正常と病理』を読む――生命と規範の哲学』(坂本尚志訳、以文社、2023年3月31日)

ルブランの著作全般についての目配りの行き届いた紹介、カンギレムと『正常と病理』のフランス現代思想における位置づけ、フランス、英語圏、日本におけるカンギレム研究の現状など、まさに痒い所に手が届く解説でした。(解説で触れられている山下尚一さんとは最近交流があるのですが、ボルドーで坂本さんと一緒だったそうですね。)

この著作は確か、マシュレが監修していたPhilosophiesの一冊として刊行されたのではなかったでしょうか?La vie humaineやLes maladiesなど、ルブランの著作には近づきつつも、しっかりと読んだとはとても言えない状態だったので、これを機会にもう一度読み直します。


2023年4月11日、立教大学の澤田直先生、明治大学の岩野卓司先生、東京大学の郷原佳以さん、早稲田大学の福島勲さんからご恵投いただきました。

澤田直・岩野卓司編著『はじまりのバタイユー贈与・共同体・アナキズム』、法政大学出版局、2023年4月10日。

まだざっと眺めた程度にすぎませんが、非常に丁寧な本づくりに感銘を受けました。

つかみとして中沢新一さんと岩野先生の対談を配し、鵜飼哲先生や栗原康さんなど(あるいはそもそも澤田先生ご自身も?)、バタイユ界隈で見かけることが稀な、力のある書き手にバタイユを自由に論じてもらい、これに対して一線級の専門家たちが目配りの行き届いたコメントと参考文献で応じる。「はじめての~」と冠するにふさわしい構成ですね。

フェスの最後に大物歌手を囲んで全員で歌うように、巻末にはバタイユの名言集を囲んで、寄稿者たちの関連論文からの抜粋が散りばめられていましたが、寡聞にして、この形式は初めて目にした気がします。

内容的な構成の緻密さもさることながら、物質的な丁寧さも印象的です。
単著を出して以来、カバーをとって本体を眺めることが増えたので、今回も表紙と背表紙に小さな文字(嘔吐をこらえながら~、途切るな)を見つけ、隠れたメッセージを受け取ったような気になりました。他にも、本家の『ドキュマン』を模したセクション区切り、最後の頁にはゴダールの『ウィークエンド』の引用などなど、本作りを楽しんでおられる感じがして、こちらも楽しい気分になりました。

最後に、言うまでもなく個人的関心が最も重要ですが、
1)ベルクソンーバタイユ関係についての井岡さんの新たな視座(314頁)、バタイユの「書きながら書かない書法」(275頁)とベルクソンとの対比可能性、
2)愛・性・家族の脱構築を考える場合、いずれバタイユには本格的に向き合わねばならないと思っており、その点で「家族と共同体」も、アンティゴネー論も、死とマゾヒズムの問題も、バタイユ的贈与論とモースやレヴィ=ストロースとの関係もきちんと勉強し直さねば、と気が引き締まりました。

Saturday, April 29, 2023

いただきもの(2023年4月①)

2023年4月1日

武蔵大学の土屋武久先生より、ご高訳ニール・アーチャー『ロードムービーの想像力:旅と映画、魂の再生』(晃洋書房、2022年12月)をご恵投いただきました。

まったく縁もゆかりもない私にどうしていただけたのか分かりませんが、ともかく不思議なご縁を感じました。

実は数日前までひと月近くパリに研究滞在していたのですが、往路の飛行機で遅ればせながらようやく『ドライブ・マイ・カー』を観たこと。到着したパリで、仕事を終えた後、夜に映画を観る習慣を徐々に取り戻し、いろいろ観た中にヴェンダースの『パリ、テキサス』があったこと

また、先生の仕事を検索するうちに、『映画で実践!アカデミック・ライティング』(小鳥遊書房、2019年)の訳者でもあるということを発見して驚きました。映画で卒論を書きたいと言う学生によく薦めている一冊だったからです。

そして最後に、私自身はフランス哲学研究を主にしているのですがいずれ手掛けたいと願っていたのが「旅の哲学」だったのでした。

まだパラパラとめくったばかりですが、本の造りもとても手に取りやすく、旅の供にぴったりですね。これからじっくり拝読させていただきます。

2023年4月5日
中京大学の山崎敦さんより、待望のご高著 Bouvard et Pécuchet, roman philosophique. Une archéologie comique des idées au XIXe siècle, Presses universitaires de Vincennes, coll. "Manuscrits Modernes", 2022.をご恵投いただきました。

苦節二十年とのこと、私の博論も2007年提出だったので、ご苦労はよく分かります。まずはお疲れさまでしたと心から申し上げたいです。

まだ序論に目を通したにすぎませんが、やはり「哲学的小説」の「哲学」が興味深いです。その「哲学的射程」はもちろん何らかの哲学的教説やテーゼを標榜することから来るのではない。そうではなく、「知的言説とその記憶が、奇妙に歪曲されながらも、物語の展開に沿って、登場人物の語りや身振りのうちに、細かなディテールのうちに巧みに統合されている」ということからこの哲学的小説の「力」は来ている。

そこでは概念が小説の登場人物と同じ役割を果たしている。人物と同じように動き、ぶつかり、戦い、破壊し合う。その概念的人物たちが演じるエピステモロジックなシナリオ、
ドラマ化、その演出がcomiqueなのであって、登場人物たちがcomiquesなのではない。フローベールにtournant comiqueがあったとしてーーそもそもcomiqueはどう訳すのが正解なのでしょうーーその場合のcomiqueはcomique singulierであって、そこで問題となるのは、idées comiquesではなくcomique d'idéesである、というのはそういうことですね。

ドゥルーズ=ガタリのそれとはかなり異なる概念的人物たちはむしろ、至極真面目な、時に滑稽なほど真面目で、皮相なほど悲壮だというのが、『ブヴァールとペキュシェ』の中で作動している観念の喜劇のメカニズムだ、と。パスカルの「哲学を嗤う反哲学的哲学」、自らをソクラテスと素朴な百姓の間の「中間者」の位置に置くモンテーニュを彷彿とさせるポジショニングですが、そこにフローベール独自のcomiqueが差し挟まれる。といった読みが正しいのかどうか、これから楽しみに読ませていただきます。

2023年4月8日
北海道教育大学の古川雄嗣さんより『近現代日本思想史 「知」の巨人100人の200冊』(平凡社新書、2023年2月15日)をご恵投いただきました。

ひとまず古川さんの手になる五篇ーー「阿部次郎」「鈴木大拙」「西田幾多郎」「柳宗悦」「九鬼周造」だけ拝読しました。面白いもので、そういう読み方をすると、やはり書き手の個性が浮かび上がってくる気がします。

1)安易な日本主義への警戒感(私の言葉で言えば、「反時代的」姿勢)と単なるコスモポリタニズムでもグローバリズムでもない「世界」への開かれ
 阿部「多くの知識人が日本回帰になだれ込んでいったこの時代にあって、阿部があくまでも人格主義という理想を手放さなかったことの意味」(86頁)
 鈴木「禅とキリスト教、東洋と西洋といった分別を越えた無分別こそが、まさに禅の第一義なのである。大拙にとって禅とは、その深みにおいて人が真に「世界」と出会う道行だったのである」(107頁)。
 西田「行為によって世界を知り歴史を作るのであるとする行為的直観」(113頁)
 柳「日本の同化主義政策を批判」(126頁)。「民藝とは「民衆的工藝」であると同時に「民族的工藝」であり、柳にとってそれは単なる美の問題ではなく、人間と国家と世界のあり方の根本に関わる問題であった」(127頁)。「柳にとって「日本」とは、それぞれに固有な自然風土と歴史をもつ「地方」の総合である。(…)確かに我々は日本を誇るべきであるが、それは「具体的な形のあるものを通して」であり、それによって我々は「世界は一つに結ばれているものだということを、かえって固有のものから学ぶ」のだと、柳は言うのである」(128頁)。
 九鬼「敢然と「外国文化に対して或る度の度量を示すことを怠ったならば日本的性格は単なる固陋の犠牲となって退嬰と委縮との運命を見るであろう」と言い放ったところに、彼の「いき(意気)」を見ることができる」(163頁)。

2)手触りのある、経験に根差した哲学
 鈴木「いわば霊性に貫かれた感性的世界を生きる」ことで「より深い意味が立ち現れる」(106頁)。
 西田「哲学の動機は深い人生の悲哀でなければならない」(111頁)。
 九鬼「苦界に生きるすべての人々の生を、美的・倫理的に肯定しようとした」「胸に暗黒なものを有って、暗黒のために悩まなければ哲学らしい哲学は生まれてこない」(162頁)。

とても共感するフレーズがたくさんあって、つい引用しすぎてしまいました(笑)。

Saturday, April 08, 2023

いただきもの(2023年1月-3月)

2023年1月25日
愛知医科大学の兼本浩祐先生からご高著『普通という異常 健常発達という病』(講談社現代新書、2023年1月20日)をご恵投いただきました。

《「人間とは一つの症状なのだ」という世紀末に流行ったプロパガンダをもう一度声高に喧伝しようという意図はないのですが、健常発達的特性が極端になれば、それはそれでやはり耐え難くしんどいことはあるのであって、健常発達という病を考えることは、そのまま人間とは何かを考えることにつながるのではないかという方向性には、今も何がしかの有効性があるのではないかとは考えています。》という先生の方向性には共感するところが大きいです。

同じ方向性をもつ「人間であることは疲れること」に関するベルクソンの指摘(240頁)には精神科臨床と響き合うものがあると私も感じており、以前兼本先生からもメールでうれしいお言葉をいただいていたのですが、私のリズムの議論を平井さんの「生の未完了的感覚クォリア」の議論と接続して論じておられる(88‐89頁)のを見て、はっとさせられました。まだ明確に論じられるわけではありませんが、今後ぜひとも深めていきたい論点です。大切に読ませていただきます。

2023年2月5日
専修大学の宮﨑裕助さんより、ご高訳ジャック・デリダ『メモワールーーポール・ド・マンのために』(水声社、2023年1月10日)をご恵投いただきました。

私がベルクソンを読むに際してデリダから学んだことは数多いのですが、とりわけ「読解と分析と解釈の省略(エコノミー)」(305頁)「これで最後だ、ケリがついた」と短絡的に考える「最悪の健忘症」(337頁)に抗し、粘り強く読解を展開することでした。

この点は特に「歴史家デリダの眼」を通してミクロとマクロの両次元で実践された「読むことのレッスン」である第Ⅱ部で再確認されますが、理論的には何といっても第Ⅰ部が興味を惹きます。ハイデガー的言語論・記憶論(言語の自己呈示作用=起源へのノスタルジー)のド・マンによる書き換え(自己撤回作用=起源との乖離)という対比は、ベルクソンとハイデガーの対決について考えている私にとっては示唆するところの大きいものです。

2023年2月5日
鹿児島大学の太田純貴さんより、ご高訳ユッシ・パリッカ『メディア地質学——ごみ・鉱物・テクノロジーから人新世のメディア環境を考える』(フィルムアート社、2023年2月5日)をご恵投いただきました。

「自然とテクノロジーの連続体をいかに考えるべきか」をめぐるメディアエコロジー三部作を締めくくるデジタル唯物論的な作品として、特に「非有機的なもの」に焦点を合わせ(308頁)、「傍若無人新世」(素晴らしい訳語ですね)、つまり人類が電子廃棄物やそれが引き起こす影響(ダーティで危険な物質性)によってゆるやかな時間スケール(地質学的な持続時間)で地球を改変しつつ、それによって人類自身を改変し条件づけている時代を描き出す(315頁)。

ただし、太田さん自身は、パリッカの「生真面目さ」に「若干の息苦しさ」を感じる読者には、アクティヴィスト的な問題意識はいったん傍らに置き、むしろ「ときに蛮勇に見えても、さまざまな領域を横断して議論をすることに対して、強く背中を押してくれる」側面に目を向け、「新たな論点や視角を構築するための推進剤」として利用することを勧めていらっしゃいますね。ベルクソンの四大著作のさまざまな議論との関連を喚起させる刺激的な議論で、楽しみに読ませていただきます。

2023年3月1日
檜垣立哉先生より、ご高著『生命と身体 フランス哲学論考』(勁草書房、2023年1月26日)をご恵投いただきました。

「フランス現代思想は、実は現時点において、ようやくその本領を発揮する「とば口」にたったのではないか」(iii頁)、「すべてが「これからだ」、という段階である」(iv頁)、「書かれたものは、見知らぬ者、場合によってこの世で生を共にしない他者に、「これからだ」という声を引き継ぐことでもある」(同)

これは実は三十年来、檜垣先生の「哲学的眼差し」の根幹にあるものかもしれませんね。このひと月の間に、第Ⅱ部・第Ⅲ部を中心としてすでに複数の論考を再読させていただいております。地力としか言いようがありませんが、このレベルのものを毎月のように書き続けていらっしゃるのは、本当に尊敬と畏怖を覚えております。

2023年3月1日
東京大学の王寺賢太さんより、ご高著『消え去る立法者――フランス啓蒙にける政治と歴史』(名古屋大学出版会、2023年2月28日)をご恵投いただきました。

昨年拙著を送りする際に話されていた待望の単著刊行めでとうございます。二段組でこの分厚さは凄いですね!ディドロが中心と想像してりましたので、ルソーが圧倒的な部分を占めていてびっくりしました。この夏から一年間フランスに研究滞在しますので、じっくり読ませていただきます。

2023年3月1日
専修大学の佐藤岳詩さんより、勢力尚雅・古田徹也編『英米哲学の挑戦―文学と懐疑―』(放送大学教育振興会、2023年3月20日)をご恵投いただきました。

ご担当された第9章から第11章を早速拝読しました。第9章では道徳判断に関してヘアとウィンチの間で「単純にどちらかが間違っていると断ずるのを避ける一つの途」(153頁)を探し、第10章ではその道徳判断の(主観性と)客観性に関してフットとマードックの間で「両社は相補的なものであると考えることもできる」(173頁)とし、第11章では判断の確実性(真理)を目指す意義に関してローティとウィリアムズの間で「両者は完全に対立するものというわけではない」(187頁)と見て、読者に「考えてみてほしい」と問いかける。佐藤節ですね。

特に興味深かったのは、「道徳を時間的に幅を持った仕方で捉える可能性」「時間の流れの中で自己を捉える」といった視点です。ベルクソンの道徳哲学(著作で言えば『道徳と宗教の二源泉』)とどのような関係を持ちうるのか、今後考えていきたいと思います。

いただきもの(2022年7月-12月)

2022年7月12日

小林康夫先生より、ご高著『クリスチャンにささやく 現代アート論集』(水声社、2022年5月30日)をご恵投いただきました。

「現代アート論集というよりは、アートへと接近するわたしなりのクリティークの方法を、
ある種のゆるやかな物語(レシ)の構成として編集したもの」(191-192頁)、
つまり先生なりの「哲学」ないし「思考」の実践と受け止めました。

84年に訳されたデュラスの『死の病』に始まり、90年代初期から2020年代まで、
「一貫した「スタイル」(…)一言で言えば、三人称的に論じるのではなくて、
二人称的に語りかける「態度」、「二人称のクリティーク」(…)あくまでも一‐二人称の語りのエクリチュールを、わたしはずっと実践してきた」(176-177頁)。以前伺った「自分なりの哲学を」を今一度、身をもって示していただいた気がしています。私も私なりの思考の舞踊に精進してまいります。

2022年7月16日
平井靖史さんより、ご高著『世界は時間でできている――ベルクソン時間哲学入門』(青土社、2022年)をご恵投いただきました。

圧倒的な本ですね。「「その先」について100号の絵を描いて見せてくれたものはどこにもなかった。だから書いた」(363頁)。時間の哲学者として知られる人物の時間哲学入門が今までなかったとは、、今まで折に触れて平井さんのご発表を聴き、ご論文を読んできましたが、このサイズ感は圧倒的です。ようやく全貌が見えた感じです。とはいえ、私の手にはまったく余るものであり、「全貌が見えた」などとは到底言えませんが。

この本を英語に翻訳するのは、世界のベルクソン研究にとってのみならず、「心理学、生物学、物理学、脳科学や人工知能学の分野に身を置きながら意識や心の理論化に関心を抱くすべての人」(362頁)にとっても、本当に大切なことだと思います。お忙しいのは重々承知していますが、この数年で何を措いてもなされるべき仕事だと考えます。

2022年8月27日
川瀬雅也先生、越門勝彦さんより『ミシェル・アンリ読本』をご恵投いただきました。

現象学者としてのみならず、レジスタンス活動に身を投じ、野蛮やマルクスを論じた政治的・社会的側面や、小説家としての側面などから、実に多面的にアンリを描き出しておられますね。しかも松永先生のような大家から若手まで老壮青が絶妙に協働されており、日本ミシェル・アンリ哲学会を切り盛りされてこられた川瀬先生のご尽力によるところが大きいと拝察いたします。

2022年9月28日
馬場智一さんより『レヴィナス読本』(法政大学出版局、2022年9月30日)をご恵投いただきました。

本当に恥ずかしいことながら、2018年にレヴィナス協会が設立されていたとは存じ上げませんでした。峰尾公也さんなど最近お仕事をご一緒させていただいた方もいらっしゃるのにと猛省しております。ネット検索もあまりやらないので、どんどん取り残されていきますね、、、

馬場さんの執筆部分だけとりあえず大急ぎで拝読しました。「全体性」の部分では、百科事典の項目として執筆された「全体性と全体化」(1970年)における全体性の扱いには存在論批判に収まらないより精緻な議論が見られるという点、『貨幣の哲学』では、血で血を洗う復讐を超える貨幣による補償としての「損害賠償」にも貨幣の肯定的機能を見出していたという点など、勉強させていただきました。

『諸国民の時に』や「レヴィナスと哲学史①古代~中世」では、実に繊細な手つきで解説されており、とりわけヘブライ語とギリシア語の関係やプラトンの正当な嫡子としてのレヴィナスといった側面にあらためて気づかされました。私もいつだったか書いたレヴィナスとベルクソン論のバージョンアップが特に共同体問題について必要だと痛感した次第です、、他の方々の御論考も追って拝読させていただきます。

2022年9月29日
澤田直先生より、ご高訳エドガール・モラン『百歳の哲学者が語る人生のこと』(河出書房新社、2022年6月20日)をご恵投いただきました。

モランはクラカウアーに似た存在なのかと何となく思っておりましたが、哲学者・社会学者という枠組みに収まらず、自然科学まで自在に横断する存在という澤田先生の解説を拝読して、そう言えば、フランスにはミシェル・セールやコスタス・アクセロスなど、最良の意味での「知識人」、18世紀的な意味での「フィロゾーフ」が未だに現れてくるなと思いました。

2022年11月30日
檜垣立哉先生より、『日本近代思想論――技術・科学・生命』(青土社、2022年11月30日)をご恵投いただきました。

大学の内外であまりにお忙しく、また重責を担われているなかで、これほどの圧倒的な質・量を誇る著書を次々と送り出すのは、本当に人間業とは思えません。「自分も道半ばでありつづけ、可能なかぎり、本書で提示した課題をさらに追いつづけ、自分の生をまっとうしたいと考えるのみである」(379頁)。檜垣先生の背中を遠く仰ぎ見つつ、私も(規模は全く違いますが)同じ道を歩むことができればと願っております。

2022年11月30日
日本大学の久保田裕之さんより、『結婚の自由――「最小結婚」から考える』(白澤社、2022年11月22日)をご恵投いただきました。まさに「私の関心そのものズバリ」の論点ですので、興味深く拝読させていただきます。

2022年12月28日
東北大学の森一郎先生より、ご高著『アーレントとの革命の哲学——『革命論』を読む』(みすず書房、2022年12月16日)をご恵投いただきました。

『革命論』のご高訳をいただいたのが4月、あれからほとんど時を経ずして、その副読本とも言うべきテクスト読解が出るとは。しかも、現代日本の状況に照らし合わせるための目配せがふんだんに散りばめられ、最後には「革命やれたらきっともっと愉しいだろうなあ」(307頁)という本音まで(笑)。

ちょうど刊行日である12月16日には安保3文書が閣議決定され、まったく逆方向への「歴史的転換」がなされつつありますが、私もまた、私の道程の上で「革命」へのささやかな
(あまりにもささやかな)寄与をできればと願っています。まずはアーレントとベルクソンについての或る種の政治哲学的考察から、、


いただきもの(2022年2月‐6月)

2022年2月20日

独立研究者の逆巻しとねさんより 『メディウム』(

https://mediensysteme2019.wordpress.com/

)のダナ・ハラウェイ特集をご恵投いただきました。

https://medium-schrift.booth.pm/

今のベルクソン論が終わったら、いずれ愛・性・家族本を仕上げるべく、ハラウェイも読みなおさねばと思っています。特集以外もユク・ホイの書評など、面白そうですね。

2022年3月2日
名古屋文理大学の青山太郎さんより、ご高著『中動態の映像学――東日本大震災を記録する作家たちの生成変化』(堀之内出版、2022年1月31日)をご恵投いただきました。

後半でベルクソンが登場し、デイントンが出てきて「おおっ!」となり、そこから中動態の議論、さらにはご自身のオリジナルの「複眼的中動態」――「肉眼で見るという関係性」における「一般的な芸術学的中動態」に対して、「自分の目で見るという関係」と「レンズ越しに見るという関係」の相互的異質性において「主体と対象が同時に複数の関係性を取り結ぶこと」(324-325頁)――というところまでぐいぐい引き込まれて、それこそ本書と中動態的な関係を結んでしまいました。とても面白かったですし、取り上げられている記録作家
たちの映像を見てみたくなりました。

2022年3月6日
立教大学の平賀裕貴さんよりご高著『アンリ・ベルクソンの神秘主義』(論創社、2022年2月20日)
をご恵投いただきました。

日本では特に現在MMが人気で、今まで本格的な研究が少なかったことを考えれば、それはそれで必要なことですが、DSもさらなる研究の深化が必要ですよね。平賀さんのご著書のどの章も『二源泉』のさらに深めるべきポイントを魅力的に提示されていますね。

2022年5月4日
明治大学の岩野卓司先生よりお誘いいただいた講義に関する報告が掲載された明治大学大学院教養デザイン研究科紀要『いすみあ』を研究科のほうからお送りいただきました。拙い発表にもかかわらず、過分なご報告を岩野先生自らいただいたことにも深く感謝申し上げます。

おっしゃるとおりで、ヘーゲルに関しては今回発表の機会を与えていただいたおかげで或る程度輪郭が見えたのですが、キルケゴール、マルクスに関してはまったく時間もなく、要点すら述べられませんでした。申し訳ない限りです。ただ手がかりは掴みました。単著がようやく完成しましたので、次は結婚の脱構築の完成に向けて気長にやっていきたいと思います。

2022年5月19日
大阪大学の檜垣立哉先生より『ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定』新版をご恵投いただきました。もちろんすでに旧版を拝読しており、今回の私の単著でも引用させていただいておりますが、あらためて勉強させていただきます。

2022年6月5日
大阪大学の米田翼さんより、ご高著『生ける物質 アンリ・ベルクソンと生命個体化の思想』(青土社、2022年6月1日)をご恵投いただきました。すごい密度の著作ですね。34歳?でこれを出せるというのもすごい。ブックイベントでご一緒できるのを楽しみにしています。

2022年6月11日
帝京大学の福島知己さんより、フーリエのご高訳『産業の新世界』をご恵投いただきました。お礼を申し上げるために読もうとして、カバンに入れた日にそのカバンごと紛失してしまい、お礼が大変遅くなってしまいました(現在購入して配送待ちです)。申し訳ありません。

2022年6月12日
東北大学の森一郎先生より、ご高訳ハンナ・アーレント『革命論』(みすず書房、2022年5月)をご恵投いただきました。

『活動的生』の時もドイツ語版から出す重要性(アーレントのより生き生きとした声を聴く)を思いましたが、今回は、森先生も書いておられる現代日本の改憲論議(の低調さ)とも相まって、よりアクチュアルですね。来年、サバティカルでベルクソンとフランクフルト学派周辺の人々(アーレント、ベンヤミン)の関係について考えてみたいと考えているので、ぜひ拝読させていただきます。「同じ場所に大勢集まって自由に議論を交わすー-とともに酒を酌み交わす--」ことを普通に再開できる日がもうそこまで来ているようにも感じられます。また近々対面でお会いできることを願いつつ。

2022年6月14日
岡本裕一朗先生より、拙著への返礼として『ヘーゲルと現代思想の臨界 ポストモダンのフクロウたち』(ナカニシヤ出版、2009年)をご恵投いただきました。実は・・・所持し(岡本先生の既刊のものは、おおよそ所持しております)、もちろんすでに拝読しておりました。お手数を取らせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。ヘーゲルの本と伺い、てっきり新著だと思い込んでしまい、「お願いします!」と申し上げてしまった次第です。しかしこの機会にふたたび読み直すことに致します。

2022年6月19日
西山雄二さんからベルクソンのブックイベントに素敵な花を送りいただき、
またイベント終盤には場を盛り上げるさすがの質問もいただき、本当にありがとうございました!イベントに花を贈るという発想がなかったので、心底びっくりしました。いつも送っていただいてばかりですみません。

2022年6月27日
檜垣立哉先生より、ご高著『バロックの哲学』(岩波書店、2022年)をご恵投いただきました。先日のZOOM会議でうっかりまだ購入していないことに気づき、実はあの後、慌ててアマゾンで購入してしまっていたのでした、、お手数をお掛けしてしまい、すみませんでした。ともあれ熟読してイベントに向かいたいと思います。

いただきもの(2021年9月-12月)

2021年9月4日
佐藤岳詩さんより『心とからだの倫理学――エンハンスメントから考える』 (ちくまプリマ―新書、2021年8月10日)をご恵投いただきました。

 4月に『倫問』が出たと思ったら、もう二冊目、、、 そんなに急いで偉くならないでください(笑)。 まだパラパラ拝見しただけですが、今回もまた、 丁寧に議論を積み重ねられており、 ゼミで学生たちと読んでいくのにぴったりの本だと思い、 早速教科書に指定致しました。 

2021年9月4日
江川隆男先生より、ご高著『残酷と無能力』(月曜社、2021年8月30日)をご恵投いただきました。

先生とは、一昨年のスピノザ研究会の合評会後の懇親会(と二次会)で、ほぼ初対面ながら、実に気さくに接していただきました。今でも温かく愉快な思い出として心に残っております。

ご著書はいつもながら圧倒的な強度に満ちており、(間違いなく日本人哲学者のなかで「強度」という形容が最もぴったりくる方のお一人です)読むたびに「哲学するとはどういうことか」と迫ってきて、刺激をいただいております。

テーマ的には、昨年とある学会シンポで「分身論」について発表いたしましたので、
先生がすでに十五年以上も前に考えておられたことを遅まきながら知り、驚きました。

2021年9月4日
京都国立近代美術館学芸課の主任研究員の牧口千夏さんより、展覧会「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island」のカタログをご恵投いただきました。最近なかなか美術館に足を運べていないので、今回いただいたカタログを眺めて、久々にアートに触れた気がして、うれしい気持ちになりました。カラフルでポップ、挑発的だけれどユーモアを忘れない、今の時代にとてもあっているのかもしれませんね。

皮膚感覚科研との関係で言えば、ご発表でも話されていましたが、映像の内容自体でも、投影先(鑑賞者の身体、家具)との関係でも、「触覚性をともなう視覚」(Vol.2:テキストブック、13頁)というのが大事になってくるのでしょうか。ともあれ、やはりヴィデオインスタレーションなので、現場に足を運んで、全身で体験してみたいです。
コロナが一刻も早く収束することを願いつつ。

2021年11月30日
青土社の加藤紫苑さんより、『現代思想』大森荘蔵特集をご恵投いただきました。大森門下の方もいらっしゃれば、まったく別筋の方もいて、バランスの良い配置ですね。

2021年11月30日
中田光雄先生より『ドゥルーズ=ガタリ、資本主義、開起せよ、幾千のプラトー』をご恵投いただきました。いつもながら

いただきもの(2021年4月)中里まき子さん

2021年4月 中里まき子さん(岩手大学)より、『智恵子抄』の仏訳をご恵投いただきました。

TAKAMURA Kôtarô, Poèmes à Chieko,
(Pessac : Presses Universitaires de Bordeaux, avril 2021)

『智恵子抄』を2021年にフランスに紹介するにあたって、智恵子の「内面の苦しみ」(tourments intérieurs)から目を逸らし、「子どもの無邪気さ」(innocence d'enfant)を前面に押し出すことで、美化(esthétisation)していたのではないか(p. 16, 17)という指摘は欠かせないと思っていたので、さすが!と思いました。清家雪子さんの『月に吠えらんねえ』にも言及すれば、フランスの読者にも良かったかなと思います。

詩に疎い人間としては、『智恵子抄』が、真実の「もう半分」(l'autre moitié)を描いていないにもかかわらず、
「日本で最も読まれた詩集の一つ」(p. 9)となった理由や、戦後の七年間、良心の呵責から花巻に閉じこもった経験によって開かれたという「彼の詩の新たな境地」(p. 19)がどのようなものであったのか、知りたいところです。

Tuesday, April 04, 2023

2022年‐2023年度の教育業績

①2022年7月16日()14:00-16:00 あなたの"性"とは?セクシュアリティについて考える
主催者: 藤田尚志+九産大藤田ゼミ生

ゲスト:池袋真(女性医療クリニックLUNA トランスジェンダー外来担当医)

②7月20日(水)17:30~19:30 札幌から福岡へ~LGBTQと社会

主催者:藤田尚志+九産大藤田ゼミ生

ゲスト:さっぽろレインボープライド実行委員会有志

③7月21日(木)17:30-19:30 土肥いつきさんと語る若者のトランスジェンダーの悩み
主催者:藤田尚志+九産大藤田ゼミ生

ゲスト:土肥いつきさん(トランスジェンダー生徒交流会世話人)

④7月22日(金)14:40-16:10 土肥いつきさんと語る、学校教育とトランスジェンダー@佐賀大 主催者:科研費プロジェクト「日本・英米との比較から見たフランス現代哲学の主体・人格概念(愛・性・家族を軸に)」(研究課題番号22K00022)+佐賀大学教員有志(吉岡剛彦+後藤正英)

⑤12月21日(水)17:30-19:30 皮膚と心 亜鶴Azu氏講演会
主催:国際文化学部国際文化学科藤田尚志研究室

Monday, April 03, 2023

2022‐2023年度の研究業績

 例年同様、本年度の研究も、1)ベルクソンを中心とする近現代フランス哲学研究を軸に、2)哲学と大学、3)愛・性・家族の形而上学とその脱構築について進められた。

単著が1つ(日本語)、共著が3つ(日本語2つ・英語1つ)、論文が3つ(英語2つ、日本語1つ)、翻訳が1つ(仏語⇒日本語)。

口頭発表が7つ(すべて単独。日本語2つ、フランス語3つ、英語2つ)。

出版物:著作・論文・翻訳

01. 藤田尚志『ベルクソン 反時代的哲学』、勁草書房、2022年6月1日。

02. 藤田尚志「講義の時間——ベルクソンのコレージュ・ド・フランス講義録を読む」
 『フランス哲学・思想研究』第27号、2022年09月、3-20頁。シンポジウム依頼論文。
03. "Diremption and Intersection: The Violence of Language in Bergson and Sorel", Parrhesia: A Journal of Critical Philosophy No. 36 (October 2022), pp. 180-200.

04檜垣立哉・平井靖史・平賀裕貴・藤田尚志・米田翼『ベルクソン思想の現在』、書肆侃房、2022年12月23日

05. 平芳幸浩編『現代の皮膚感覚をさぐる――言語、表象、身体春風社、2023323日共著、担当部分:第1章「かゆみの哲学断章――哲学的触覚論のゆくえ」

06. Yasushi Hirai (ed.), Bergson's Scientific Metaphysics: Matter and Memory Today, London: Bloomsbury Publishing.5月刊行予定

07. アンリ・ベルクソン1903‐1904年度コレージュ・ド・フランス講義 記憶理論の歴史』(平井靖史・天野恵美里・岡嶋隆佑・木山裕登との共訳)、書肆心水より夏ごろ刊行予定?

08. 藤田尚志「Sublime and Panoramic Vision: Bergson, Kant and Heidegger on Schematism」、Bergsoniana』第3号、2023??月、??頁。査読有

発表


01. On Panoramic Memory: Analytic and Bergsonian Perspectives
International Workshop "Remembering: Analytic and Bergsonian Perspectives 2" (Sunday 2 October 2022, Seminar Room A701, Fukuoka University / Zoom)(口頭発表①、2022-2023年度)

02. フーリエ的思考と結婚の脱構築——ベルクソン、ドゥルーズを参照しつつ
セッション「フーリエ研究の現在」@社会思想史学会:福島知己さん、清水雄大さん、金山準さん、篠原洋治さん(世話人)とともに。 (2022年10月16日(日)10:00-12:00 @専修大学生田キャンパス(神奈川県川崎市)第3会場(スタジオ202))(口頭発表②、2022-2023年度)

03. On Expressive Personality. Analytic and Bergsonian Approaches
Project Bergson in Japan 2022: Analytic and Bergsonian Perspectives Day 2 with Emmanuel Picavet and Tatsuya Murayama (chair)(2022年11月4日(金)21:00-23:00 (JST) @ZOOM)(口頭発表③、2022-2023年度)

04. 感覚を計測するとはどういうことか?――カント、フェヒナー、ベルクソン
PBJ(Project Bergson in Japan)主催ワークショップ「精神物理学の起源と展望:フェヒナー、ベルクソン、そして…」 、登壇者:福元圭太先生(九州大学)・本吉勇先生(東京大学)、司会:平井靖史さんとともに (2023年1月7日(土)14:00-16:30 @福岡大学七隈キャンパスA棟A701教室+オンライン配信あり)(口頭発表④、2022-2023年度)

05. Déconstruire - Les revies de Rétif de la Bretonne

Colloque international "Les Revies - de Rétif de la Bretonne" co-organisé avec Atsuo Morimoto et Keiko Tsujikawa(2023年2月22-23日(金)21:00-23:00 (JST) @ZOOM)(口頭発表⑤、2022-2023年度)

06. Bergson et Heidegger I: deux voies de l’organologie (autour de l’être vivant)

Séminaire de recherche international "Bergson extrême-orientable : Actualité des études japonaises" dans le cadre de l’IRN CNRS « Un chapitre dans l’histoire globale de la philosophie. Nouvelles perspectives sur le bergsonisme » (Organisation : Caterina Zanfi) Lundi 13 mars 2023, 11h-13h, Salle Pasteur (et Zoom))(口頭発表⑥、2022-2023年度)

07. Bergson et Heidegger II: deux voies de l’éthique originelle (autour de l’appel)

Séminaire de recherche international "Bergson extrême-orientable : Actualité des études japonaises" dans le cadre de l’IRN CNRS « Un chapitre dans l’histoire globale de la philosophie. Nouvelles perspectives sur le bergsonisme » (Organisation : Caterina Zanfi) Jeudi 16 mars 2023, 16h-18h, Salle Pasteur (et Zoom))(口頭発表⑦、2022-2023年度)