Thursday, September 13, 2012

【クリップ】新卒で年収1500万円も 「スーパー大学生」獲得合戦

もし大学生にしっかり勉強してほしいなら、産業界および文科省は、四年間の「学びの時間」を大学がしっかり確保できるよう側面支援すべきである。そのためには次の三条件が欠かせない。

1)学生が就職活動に使う時間を大幅に削減すること。経団連が倫理憲章を改定 し、「公式の」就職活動の開始時期を大学3年の12月に遅らせた。それ自体は評価すべきことだが、さらに前進させていただきたい。就職活動に大幅に時間を割かれ、一年生から就職活動のプレッシャーをかけられる現在の状況を根本から改善すべきである。「即戦力として「使える」学生を」という事柄自体の是非はともかく、どんな勉強にせよ、まず学びの時間を確保しなければならない。

2)学生がアルバイトに使う時間を大幅に削減すること。学生の自由にできるお金が十年前に比べて三割減だという報告もある。学生の経済状況をもっと安定させる施策を国がとらないかぎり、学生はこれからも授業準備よりアルバイトに熱を入れ続けるだろう。他方で、同時進行的に、学問にようやく関心を持ってきた学生が、親の経済状況の悪化によって道半ばにして大学を辞めていくケースも多発している。「学生が勉強しない」という問題を、学生の意識の問題だけに還元してしまうことは問題を矮小化することにつながる。大学側と学生自身が意識改革に取り組まねばならないのは当然として、経済支援によって改善する可能性のある問題(逆に言えば、経済的な状況の変化がない限り、根本的な変化など望むべくもない問題)は、引き続き大きく改善させていってもらいたい。

3)「大学は四年間遊ぶ場所である」という旧世代の認識を改めること。親や周りの大人が、会社では若手社員に「大学で何を学んできたんだ」と言い、他の場所では「大学では何も勉強しなかったよ」と勲章のように言うのは矛盾している。これには現在、高校生や大学生の親にあたる世代への啓蒙活動が重要であると思う。この二十年間、大学は変わり続けている。大学側も自分たちの変化をもっと積極的にアピールしていくべきなのだろう。

時間はなかったが、今回、この点を少しでも深く考えるために、「大学の時間」という小文を書いた。 

 

新卒で年収1500万円も 「スーパー大学生」獲得合戦

週刊朝日 9月11日(火)7時5分配信
 就職活動の長期化を是正するため、経団連は昨年3月、倫理憲章を改定。シューカツの開始時期を大学3年生の10月から、12月へと遅らせた。だがそうした動きに関係なく、水面下では早い時期から優秀な人材の獲得合戦が繰り広げられている。

 就職支援のエキスパートで、『〈就活〉廃止論』(PHP新書)の著者である佐藤孝治さんもこう話す。

「企業が欲しいと思うような大学生の出現率は、100人募集して5人、つまり5%というのが経験則です。採用の現場では、この5%を巡って熾烈な獲得競争が行われているのです」

 実際、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、学年にこだわらない採用の一環として、今年は現役の大学1、2年生約10人に、卒業後の入社を 認める内々定を出している。"スーパー大学生"を早めに確保し、卒業までの間、ユニクロの店舗でアルバイトしてもらうことで、入社までに即戦力として育成 するのが狙いだ。

 同社広報チームによれば、学生はいずれも目標や目的意識がしっかりしていて、コミュニケーション能力も高いという。他社に流れて入社してくれない可能性はあるが、「そこはやむを得ない」と割り切っているそうだ。

"スーパー大学生"を獲得するため、破格の好待遇を打ち出した企業もある。

 ソーシャルゲーム運営大手のグリーは、来春の新卒採用の大学生と大学院生について、実績と能力に応じ、最大で年俸1500万円支払うことを募集要項に明記した。グリーが狙うのは、新卒でも即戦力になりうる学生だ。

「かつては採用してから1、2年かけて人材を育てる余裕が企業にあったため、いい大学に入っておけば就職はなんとかなりました。しかし競争環境が激化し、 企業は即戦力になる優秀な人材を新卒にも求めるようになった。その結果、一部の学生だけが、優位に働き先を選べる時代になってきたのです」(前出の佐藤さ ん)

※週刊朝日 2012年9月21日号

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