ynさんによるシンポジウム「哲学と大学」の報告文がUTCPサイト上に掲載されたので、興味にある方は是非どうぞ。私のコメントも記憶に残っているうちにこのブログにまとめておきたいと思ってはいるのですが、なにしろ体に無理がきかない状態なので。。
大学論:3月17日に『高学歴ワーキングプア―人文系大学院の未来』の著者水月昭道さんを招いて「哲学と大学」ワークショップが行われますので、お誘い合わせのうえぜひお越しください。日仏の比較に興味のある方は、
マリー・ドュリュ=ベラ、『フランスの学歴インフレと格差社会』、明石書店、2007年12月。
を併読されることをお勧めします。例えばこんな感じ。
《ここ四、五十年来のフランスにおける学業期間の長期化には目覚ましいものがある。中等教育修了後に取得する学位であるバカロレアの保有者の割合は二倍に増えた。この割合は現在、およそ63%であるが、政府はこれを80%にまで引き上げようと目論んでいる。
フランスでは、「さらに多くの」教育を施すことは当然良いことであるとして、とくに高等教育における学業期間の長期化を推進し続ける方針に対して、絶大なるコンセンサスがあるが、本書の意義とは、こうした政治的意向に疑問を呈するところにある。
これまで五十年間で教育レベルは飛躍的に上昇したが、それと同等の社会移動は確認されていない(特に中流階級の子供たちの雇用機会増大は確認されていない)。この事実は何よりもまず、フランスの教育を万能と見なしがちな傾向に反して、雇用を創出するためには学位を生産するだけでは不十分であることを物語っている。つまり、世代の推移に伴う社会移動とは、何よりもまず経済的背景が生み出す雇用環境に左右される、ということだ。
不平等を削減するための唯一の効果的な手段とは、その根源から悪を取り除くことであり、教育の初期の段階から顕在化する、成功から生じる社会的不平等に取り組むことであろう。》(3‐6頁)
教育だけで完結してしまうことの危険、文部省と東大法学部教授の「結託」を非難するだけであれば、政治の世界にありがちな陰謀論に終わってしまう。その陰謀論がどれほど説得力をもったものであろうと、それは所詮陰謀論の域を出ない。その先へ一歩を踏み出すことが明澄な眼差しをもつことにつながる。哲学・教育・政治の三位一体の重要性がそこにある。
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