Wednesday, December 24, 2008

違和感

今起こりつつあることはすべて過去の遺産であり、負債である。

大学教員を採用する際に「博士号取得」を前提し、「模擬授業」を課す。それは原則的によいことだと思う。ただ、それらの義務を課されなかった者が、自らの世代に落とし前をつけることなしに、それらの義務を若い世代に押しつけることに違和感がある。現在の教員にも遡って「博士号取得」「模擬授業」を継続採用の義務として課すべきではないか。

育英会にきちんと返済するよう促すシステムを作る。やり方についてはともかく、それは原則的に当たり前のことだと思う。ただ、きちんと返済しなかった人々を大量に含む世代が自分の世代の「負債」に対する反省なしに厳罰化を若い世代に押しつけることに違和感がある。たとえ現在滞納者数が増えているとしても、である。滞納者の金融機関への通報というなら、最も古い滞納者から始めるべきであろう。

大学できちんとした学力を養うことが求められるシステムを作る。それは原則的に良いことだ。ただ、大学を勉強する場と捉えず、「四年間の休暇」「就職のためのパスポート」と捉えてきたすべての人々の蓄積が今、大学をこのような場たらしめたのだという自覚と反省なしの厳格化には違和感がある。たとえ現在加速度的に「学力低下」「学級崩壊」が進んでいるとしても、である。かつて「レジャーランド大学」で遊んで卒業した者たちはどうするのか。

今日本の社会を中核的に担う50代、40代の世代がきちんと自らの世代の負債と向き合ったのか、疑問がある。


卒業認定の厳格化を答申 中教審、学士課程めぐり
12月24日13時33分配信 産経新聞

 大学の学部(学士課程)の教育水準の向上を検討していた中央教育審議会(中教審)は24日の総会で、成績評価や卒業認定について厳格に判断することなどを求めた報告をまとめ、塩谷立文部科学相に答申した。具体的には、学内で統一した評価基準をつくり、学力を的確に把握するよう促している。

 「大学全入時代」を迎えた一方、約半数の私大が定員割れし、地方の小規模大学を中心に経営難が深刻化するなど、大学の抱える課題は多い。学生の学力低下も指摘されており、中教審では平成19年3月から議論を進めていた。

 答申は、大学を取り巻く環境が急激に変化していることを踏まえ、「質の維持、向上の努力を怠るなら、淘汰(とうた)は避けられない」と厳しく指摘。「入りにくく、出やすい」とされる日本の大学に対し、卒業評価の厳格化を求めた。

 その上で、具体策として大学内で学力測定の統一した評価基準を策定、公表することや、客観性のある試験の実施などを挙げている。さらに、学力評価が甘いとされる推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試にも厳格な学力把握の措置を求めた。

 さらに、学生の職業観や勤労観をはぐくむキャリア教育についても、教育課程の中に位置づけることを盛り込んでいる。

 これとは別に、大学教育をめぐっては、鈴木恒夫前文科相が9月、教育制度の再構築や質保証の対策など中長期的な大学のあり方について、中教審に諮問している。
奨学金滞納者を通報へ 日本学生支援機構、金融機関に
 大学生らに奨学金を貸与している日本学生支援機構は、増加する滞納に歯止めをかけるため、金融機関でつくる個人信用情報機関に年内に加盟し、滞納者情報を通報する制度を導入する方針を固めた。通報された対象者は銀行ローンやクレジットカードの利用が難しくなる可能性がある。
 支援機構が加盟を予定している信用情報機関は銀行など約1400の金融機関が会員。平成22年度の新規貸与者から「長期滞納した場合は通報する」という条件で奨学金を貸与する。所在不明の滞納者情報の提供を受けることも検討している。
 支援機構を所管する文部科学省などによると、奨学金は大学などを卒業後、一定期間内に返還しなければならないが、滞納は年々増加。19年度の要回収額は3175億円だったが回収率は8割を切り、660億円が未返済。貸し倒れの可能性がある3カ月以上の延滞債権額も2253億円に上っている。

奨学金「回収努力を」 財務省が日本学生支援機構に
 財務省は24日、奨学金事業を行っている独立行政法人の日本学生支援機構(旧日本育英会)に、奨学金の回収努力が不十分だとして改善を求めたと財政制度等審議会に報告した。保証制度があるにもかかわらず、機構の督促が不十分であるなどの理由で要件を満たさず、代位弁済請求ができていない債権が今年2月現在で10億2100万円あることが確認された。
 保証制度は財団法人の日本国際教育支援協会が行っており、保証人を立てられない学生は、毎月数千円の保証料を支払うことで制度を利用できる。返済期限から1年たてば、機構は協会に対して弁済を求めることができるが、18年度の請求は11件700万円にとどまっている。
 代位弁済を請求するには、機構による債務者への督促が前提となる。だが、返済が遅れている債務者が引っ越してしまい、住所が判明しないために機構が督促できず、代位弁済請求の要件が整わないケースが多いという。
 機構は国の財政投融資資金を利用しており、19年度末の残高は2兆3686億円。回収も代位弁済も進まなければ、こうした資金の償還が進まない可能性が出てくる。

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