Wednesday, April 22, 2009

叢書の地政学ふたたび

最近読んでいる本。

ジュリア・アナス、『1冊でわかる 古代哲学』、岩波書店、2004年9月。
ジュリア・アナス、『1冊でわかる プラトン』、岩波書店、2008年12月。

哲学の専門家として、「1冊でわかる」シリーズを読んでいるなどと公言するのは、私も人並みに恥ずかしいのであるが、しかしジュリア・アナスには前から勝手に親近感を覚えている。というのも、彼女のプラトン「国家篇」についての詳細な読解の仏語訳がPUFでマシュレが(フランシス・ヴォルフとともに)監修していた叢書から出ているのだ。

Julia Annas, Introduction à la République de Platon, préface de Jacques Bruschvicg, traduction par Béatrice Han, PUF, coll. "Les grands livres de la philosophie", 1994.

それに、入門書だろうが、手軽な新書本だろうが、いい本はいい本だ。それから裨益を被っていることを堂々と言えないのはむしろ哲学に携わる者としておかしいとも思っている。

例えば日本人でもフランス人でも、他の著書はコレクション(叢書)名を明記しているのに、クセジュだと明記しない人がいる。白水社とかPUFとか書く。

前から言っているようにどのコレクション(叢書)から出ているかは、その本の思想史的な位置づけを知るための重要な手がかりになる。だから私は自分の研究論文に、他の研究者の著作や論文を引用する際には、それがどんなにマイナーな叢書・雑誌であれ、あるいは「入門的」と称されている叢書、「異端的」と見なされる雑誌であれ、できるかぎり明記するようにしている。

制度への眼差しは、実はこんなところにも表れている。誰にも気づかれないけど(笑)。

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