Sunday, June 07, 2009

アリストテレスの入門書(2)

藤沢令夫(1925-2004)「アリストテレス」、『岩波講座 哲学』第16巻(哲学の歴史I)、岩波書店、1972年。

田中美知太郎亡き後のプラトン研究の第一人者がアリストテレスを描いたらどうなるのか。関心を持って読んでみたが、後の『プラトンの哲学』(岩波新書、1998年)から予想された通り、露骨な「反アリストテレス」であった。最後が「残された問題」としてアリストテレスの不備を列挙して終わっている。

0.生涯と著作および序(3頁)、1.イデア論批判(4頁)、2.自然・メタ自然・人間――見取り図(9頁)、3.残された問題(7頁)

アリストテレス批判が彼の論文の眼目なので、そこを取り上げておこう。藤沢は三つの問題を指摘している。

1)「何であるか」というソクラテス的問いに対応するものを、それ自体で独立に存在する実体と考えたという点――いわゆる「イデアの離在」――こそイデア論の欠点だと考えたアリストテレスは、プラトンが切断したイデアと事物を「実体」概念につめこもうとする。

《かくてアリストテレスにおいて、「実体」という言葉は、「独立に存在するこのもの」と、「このものをしてこのものたらしめている本質的形相」という、しょせんは相容れぬ二つの意味を担わされたままで放置され、何が最もリアルなものであるかについて、アリストテレスの考えはこの両極の間を揺れ動く。》

2)「善」と「価値」の関係

3)『ニコマコス倫理学』は結局、至高の価値を扱いえていないではないか、と。これらについて、アリストテレス側から反論することは可能だと思う。

以下はざっと。

山本光雄(1905-1981)『アリストテレス――自然学・政治学』、岩波新書、1977年。

ジャン・ベルナール(Jean Bernhardt, 1927-)「アリストテレス」、『シャトレ哲学史』第1巻(ギリシア哲学)、白水社、1976年。

藤井義夫(1905-)『ギリシアの古典――よく生きるための知恵』、中公新書、1966年。

ジャン・ブラン(1919-1994)
『アリストテレス』、文庫クセジュ、1962年。

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