哲学史と結婚論にエネルギーのかなりの部分を割いている。哲学史はようやくアリストテレスに別れを告げ、ストア派へ向かう。
結婚論は、ルターの後、ルソー、ヘーゲルと重量級が続いたが、今度のキルケゴールも、これはこれで手強い。
キルケゴールなのか、キ「ェ」ルケゴールなのか、などというのは瑣末な問題のようだ。デンマーク語を正確に転記すると「キアケゴー」だそうなので。
とにかく大学図書館にある彼の著作全集すべてにざっと目を通し、できるかぎり関連図書を読む。
すでに言われていることであろうが、私の見るところ、『人生行路の諸段階』は、キルケゴールの『精神現象学』である。しかも、〈結婚の精神現象学〉だ。
藤野寛「キルケゴール」、『哲学の歴史』第9巻(反哲学と世紀末)所収、中央公論新社、2007年。ゆるい。この企画は確かに立派な企画だと思うのだが、やはり人による出来不出来がある。
久保陽一ほか編『原典による哲学の歴史』、公論社、2002年。 今一つ使いにくい。「原典による哲学史」を一冊でまとめるという基本コンセプトに無理があるように思う。キルケゴールの箇所もそうだが、頁数の関係でどうして「この」引用がその思想家にとって本質的なのかの説明がなかったり、あっても不十分だったり。
F.J.ビレスコウ・ヤンセン『キェルケゴール』(大谷長(まさる)訳)、創言社、1997年。
「本書は元はコペンハーゲンの市立博物館内のキェルケゴール収蔵品展示室を見学に訪れる人々のために、予備的解説書」として書かれたという。「この書は、透徹した把握の仕方とそれを表現するまったくのユニークさと我々が今まであまり気付かなかった多くの事実の指摘と、そして最近の世界各地での研究事情をまとめる卓越した技術とあいまって、キェルケゴールに関する小著としては近来における最良のものとなっている。デンマーク・キェルケゴール協会の前の会長でもあり、北ヨーロッパを代表する文芸史家である人の書いたものだけのことはある」(「訳者のあとがき」)。
オリヴィエ・コーリー『キルケゴール』(村上恭一ほか訳)、文庫クセジュ、1994年。
良い入門書。ただし、諸家口をそろえて、キェルケゴールのいわゆる三段階は単なる「段階」の漸進でない、というのだが、今一つよく分からない。先の藤野氏なども三つの異なる「領域」なのだというが、どうみても審美<倫理<宗教となっていると思うのだが…。
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