朝靄に包まれたトゥールーズのブラニャック空港(aéroport de Toulouse Blagnac)に朝8時半ごろに到着。空港では大きな荷物を受け取るのに、またも運良く早めに受け取ることができた。
早い時間にもかかわらず、温厚なほほ笑みとともに出迎えてくれたのは、応用物理学者のジャン・Mさん。豊かな白髪と白い髭をたくわえた小柄な初老の姿は、まさに科学者。
12月の中旬ごろに、物理学者でエピステモローグでもあるジャン=マルク・レヴィ=ルブロン氏の講演会で通訳を務めたとき、まだ家が決まっていない、フランス側のアドミニの対応は日本側のそれとずいぶん違うように思うという話をしたら、親切にお友達を紹介してくださったのである。レヴィ=ルブロンさんも温厚そのものという感じの人だったが、ジャンさんも本当に親切な方である。なんというか、このお二方が友人であるというのが必然以外の何物でもないという感じがする。
ジャンさんの車に荷物を積み込み、彼のお宅へ。お宅はカラス通り(rue Jean Calas)。フランスの街路の名前は、たいてい歴史上有名な人物の名前がとられており、簡単な説明が添えられている。たとえば、rue Blaise Pascal, physicien du XVIIe siècleという感じ(この説明が妥当かどうかはともかく、実際そう書いてあったのである)。
Jean Calasという名前にはvictime de l'intoléranceという説明が添えられている。…とここまでで誰だか分かった人は(学部生なら)なかなかのもの。ヴォルテールが介入する「カラス事件」の犠牲者である。
(カラス事件とは…知りたい方はこちら)
ジャンさんのお宅の庭の片隅に離れがあり、ここに住まわせてもらえることになったのである。離れとはいっても、二階建てで、キッチン、トイレ、シャワー完備(一階がジャンさんの研究室)。二ヶ月半という中途半端な期間の滞在で問題になるのは、meubléを探すことだが、彼らはかなりの生活必需品を揃えてくれていた。
もちろん、それでも買い足していかなければならないものはあるが、ゼロからすべて、というのとは天と地の開きがある。ただ、ひたすら感謝、である。
おなかが減っていたので、朝食をいただき、しばし歓談。その後、部屋で荷解きをして、昼前に中心街へ。昼食を済ませて、まず入ったのが、大型書店FNAC(笑)。久しぶりにフランス語の哲学書コーナーを見て、なんだかうれしくなる。と同時に、昔のように、そこにいつまでも佇んだりはしなくなった。体力も持たないし、家に帰ってやるべき仕事もたくさんある。
その後、大型スーパーへ行って買い物。留学時代の初心に帰って、小さなメモ帳を買うことにした。もう一度、分からない言葉や表現を書き留めるなどして、この機会にさらなるレベルアップを目指したい。
フランスに住んでいた時もずっと思っていたのだが、街路がいちいち大きいので、買い物に行っただけで疲れてしまう。
帰ってきて、しばし休息。夜は、奥さんのドミニックさん、娘さん二人らも交えて、歓迎の晩餐。昔はこういう機会に、よく表現をメモしていたのだが、いつの間にかしなくなっていた。今回学んだのは、à la bonne franquetteという表現。「ざっくばらんに」といった意味。ジャンさん宅を間借りしての二ヶ月半の滞在を始めるにあたって、悪くない出だしである。
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