Wednesday, February 29, 2012

【クリップ】ニートでも引きこもりでもない「レイブル」

ニートでも引きこもりでもない「レイブル」

2012/02/23 10:00更新

「レイブル」を広めるため、演劇の練習に励むレイブルの若者ら =大阪府門真市

ニートと呼ばれる中でも働く意思のある若者を「レイブル」(「遅咲き」の意味)と呼び、就労支援を強化する事業が大阪で本格的に動き始めている。「親に依存する」というネガティブなイメージのあるニートに抵抗を感じる若者からも支持を受け、名称の定着が広がりつつある。(佐々木詩)

 ◆NPOが橋渡し

「僕の夢は仕事に就いて1人暮らしをすること」「彼女が欲しい、結婚したい」…。大阪府が主催し、新名称「レイブル」を広める目的で21日、大阪市内で上演された演劇。そこでは、役者として参加するレイブル本人たちの本音が響いていた。

レイブルとは、英語で遅咲きの人間を意味する「レイト・ブルーマー」の略語。長期にわたって自宅に閉じこもり社会活動に参加しない状態の「引きこもり」や、職に就かず家事・通学をしていないニートと区別し、就職面接を受けに行くなど働く意思はあるものの、肉体的・精神的な事情から就職に至らない若者を指す。昨年11月、大阪府が若者の自立支援事業として、ニートと呼ばれる若者を集めた会議でこの名称が決まった。

不登校の 後、社会的なキャリアの再構築ができず履歴書が真っ白だったり、いじめや虐待の経験から人間関係が苦手な若者は就職活動が困難。働きづらさや生きづらさを 抱えて生きている」。こう話すのは、大阪府から事業委託を受けているNPO法人「トイボックス」事務局長、栗田拓さん。

レイブルの定義の周知と「電話対応は難しいがデータ入力は得意」など、個人の特性を企業側に理解してもらい、“適材適所”で雇用してもらうシステムの拡充を目指す。

レイブルたちも企業と自分を取り持つ支援団体の存在を知らず、適性に気付かないまま就職活動を行うケースが多い。栗田さんは「ハローワークに行く前に違う 入り口があることをイベントなどを通じて広めている」という。トイボックスでは実際、15人のレイブルを昨年10月から今年3月末まで雇用。公共施設の指 定管理業務などを任せて仕事のスキルを身に付けさせながら、就職活動をサポートしている。

◆生活保護歯止めにも

レイブルの支援は若者側や人材確保に悩む企業にメリットがあるだけではない。生活保護受給者の多さが問題になっている府にとっても重要だ。府内に5万人超いるとされるニートのうち約55%存在すると推定されるレイブルが就業することは、将来の生活保護世帯の増加防止と新たな税収確保につながる。

新名称によるイメージ刷新に期待する声も上がる。演劇に参加した樋口昂さん(24)は「今まで『お前、ニートだろう』と言われて嫌な思いをしてきた。『言葉が変わっただけ』と言う人もいるかもしれないが、僕たちからすればよく考えてくれたなと思います」。府の雇用 対策課も「他の自治体から事業に関する問い合わせが寄せられています。レイブルという名称が自然に広がってほしい」と期待を寄せている。

ニートと引きこもり、全国に90万人

厚生労働省によると、ニートと呼ばれるのは15~34歳の若者で、全国に63万人いると推定される。一方、引きこもり状態にある子供を抱える世帯は全国に26万世帯あると推計されている。しかし、生活がほぼ家庭内に限定されるので正確な数の把握は難しいのが現状だ。

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