Tuesday, May 26, 2009

アテナイの学堂

というわけで、アリストテレスである。プラトンに講義三回分を費やし、身も心も疲れたと思っていたが、考えてみれば、哲学の歴史は真面目にやれば重量級ハードパンチャーの連続だ。またもや入門書・概説書の類を読みふけり、原典を可能な限りフォローし、画像を探しまくる(今時の学生たちには必要なのだ、目を休ませる偶像が…)。

ラファエロの有名な「アテナイの学堂」。今道大先生は1502年完成とされているが(『アリストテレス』、講談社学術文庫)、1509-10年が正しいようである。「美の巨人たち」は、この絵が、数十メートルしか離れていないシスティーナ礼拝堂で同時に進行中だったミケランジェロに対する讃嘆の念から、ある重要な変更を加えたことを指摘していて興味深かった。番組HPにはこうある

「ラファエロの受けた衝撃の強さを知るヒントが、この下絵の中に隠されています。当初ラファエロは、中央階段部分を広く開ける構図を考えていました。 しかし実際の作品はこうなります。

そう、当初予定していなかった人物が、そこに描かれたのです。 右手にペンを持ちながら考え込む男・ヘラクレイトス。 このギリシャの哲学者のモデルこそ、ミケランジェロなのです。絵全体のなかで、前方のほぼ中央に描かれたミケランジェロ。それはラファエロがミケランジェロを、最大限に評価した現れでした。天才が天才に魅了されたのです。研究者「ラファエロがミケランジェロの描きかけの天井画を見たことは間違いないでしょう。それ以降、彼の描くタッチが明らかにミケランジェロの影響を受けるようになるのです。一番判るのは、ミケランジェロをモデルにした、ヘラクレイトスです。あれはミケランジェロのタッチで描かれています。ヘラクレイ トスのタッチが、周りに描かれた人々とは全く違うのです。ミケランジェロは天才だということを、みんなにアピールするために、ラファエロは絵の真ん中に、ミケランジェロをどうしても描きたくなったんだと思います。」」


しかし、素朴な疑問が生じる。ラファエロがそんなにミケランジェロに入れあげたのなら、なぜプラトン=ダヴィンチに匹敵するアリストテレスの位置を与えなかったのか。Wikiを見ても、アリストテレスのモデルについて説明がない。

こちらのブログに書いてあったことが説得力がある気がする。つまり、

「その右隣がアリストテレスです。最初そのモデルはミケランジェロだったらしいですが、ダ・ヴィンチと並ぶのが嫌だった彼がラファエロにクレームをつけたそうです。それで、ラファエロは急遽、画面手前にミケランジェロをモデルとしたヘラクレイトスを加えたそうです。」

なるほど、それで、ミケランジェロはskoteinos(闇の=晦渋な=気難しい)として知られるヘラクレイトスに…。からかいつつも、その重要性はしっかり認め、違った形で中心的な場所を与える。ラファエロのようなしなやかな知性に見習いたいものです。

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