Saturday, March 10, 2012

大学生に勉強させる?大学の時間とは何か

大学生に勉強させない大学に業を煮やした国が重い腰を上げたのだという。勉強をさせるよう尻を叩く大学には財政的な支援を考えるのだという。

けっこうなことだ。勉強させるよう尻を叩く?――そんなことは少なくとも学生獲得競争が激化して以来、どこの大学でもやっていることだ。尻に火が付いている大学ほどやっていることだ。

大学に来ない日を作らないよう、必修の授業を散在させる。出席率を上げるために、わざわざ一限に必修を入れ、なるべく長い時間を大学で過ごさせる。

今の学生たちは「大学に馴染めない」という理由で辞めていく。それを防ぐために、学生の居場所をつくる。先生たちが学生の気軽な話し相手になるために、オフィスアワーをする。それも、研究室で実施すると学生が来にくいというので、わざわざ学生の来やすい部屋を設置し、先生がそこに出向いて、学生が来るのを待つ。

ゼミで数回欠席が続くと、担当教員は電話やメールなどでコンタクトを取り、ケアをする。授業に来なかった学生に対して、授業についてこられない学生に対して、授業外に補習を行なう。

かつての大学生であったみなさんが思い描く「大学」とはほど遠いところまで、すでに私たちは来ているのだ。


「勉強をしない」学生に勉強をさせるべく、国が重い腰を上げたのだという。繰り返すが、けっこうなことだ。ならば、国には、「シュウカツ」という名目のもとに大学生の時間を大幅に奪う企業に対して根本的な対策も取ってもらいたい。

人々は故意に目をそむけている。いわゆる有力大学の学生よりも、そうでない大学の学生のほうが、「三流大学」の学生のほうが、「シュウカツ」においてより多くの時間を取られ、より多くのエネルギーを費やしながら、より多く落とされ続け、より多く踏みつけられ続けているという事実に。

人々はきれいごとで済ませようとしている。企業イメージのピラミッドを作り、自分たちは暗黙のうちにそれを承認しておきながら、人気ランキング上位の企業に殺到する学生たちには、「世間の目なんか気にせず、自分にあった職業を選びなさい。世間的には評価されていないかもしれないけれど、小さくても自分を活かせる企業を選びなさい」などという。それはたしかに正しい助言だが、学生がその言葉に素直に頷けるようになるのに時間がかかることにもまた、何ら不思議はない。


何度でも繰り返す。《一見すると公平そうで、水面下で学歴差別を行い、絶対にエントリーシートを読まない大学の学生にもムダな努力をさせている》企業、《楽しいパンフレット、説明会を作り上げ、どうせ採らないのに選考に学生を呼び、楽しいイメージを植えつけて人気企業ランキングに投票させている企業》のほうをこそ、政府および産業界は問題視すべきだ。なぜなら、若い学生たちがそれらの真にブラックな企業に対して投入した努力の総量こそ、途方もないエネルギーの無駄遣いであるからだ。

「エコ」を売りにしている政府および産業界は、若い人的エネルギーの天文学的な損失に敏感であるべきだ。就活を苦に自殺する学生が年々増えている現状をどうしたいのか。

せめて、四年生の10月や11月に、内定を与えた学生に、「研修」の名目のもとに、一か月も拘束するブラック企業に、何らかの規制をかけてもらいたい。規制をかけるよう、他省庁に働きかけてもらいたい。

文科省は、自分たちの言うことを聞く(しか手がない)弱小大学に圧力をかけるよりもむしろ、真っ向から「強い者たち」に批判の声を上げるべきであろう。そんなこともできずして、教育の未来を語るなど、笑わせる。

 

大学生に勉強させよ…対策の大学に財政優遇案

読売新聞 3月7日(水)18時18分配信
大学生の勉強時間を増やせ――。

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の大学分科会大学教育部会は7日、学生の勉強時間を調べたり、勉強時間を増やす方策を講じたりした大学を、財政面で優遇するべきとする素案をまとめた。勉強しない学生を放置する大学に改善を促す狙い。大学分科会の審議を経て、文科省に答申される予定で、同省は 2013年度にも実施する方針。大学生を勉強させるために、とうとう国が尻をたたく。

日本の大学生は国際比較でも勉強時間が短いとされ、大学教育部会は、「日本の学生が主体的に勉強する時間は1日に講義を含めて4・6時間」とするデータ をもとに、「必要時間の半分程度」と分析した。そして、このことが大学の学部教育への国民や企業からの評価が低い要因だとしている。

素案では、こうした学生の評価を覆してグローバル化時代に対応できる能力を育成するために、大学に対し、学生の知性を鍛える課題解決型の授業の導入など、質の高い教育に転換するよう求めている。

No comments: