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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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高山裕二
『トクヴィルの憂鬱--フランス・ロマン主義と<世代>の誕生』
白水社2600円
面白い本でした。本書は、『アメリカの民主主義』
トクヴィルを、フランス・
者はまだ30代前半。新進気鋭の政治思想史研究者です。
全著作を読破したその語学力と、
俯瞰する博識には敬服脱帽する他ありません。トクヴィル、
う言われてもぴんとくる人は少ないでしょう。しかし、
史というジャンルを超えた普遍的な広がりをもつ問題を提起してい
トクヴィルは1805年生まれ。
紀病」と呼ばれた、何者かにならんと志す「大望」の病原菌を、
トクヴィルと同年代の若者たちの間に撒いていたのです。
た頃のフランス社会では産業が発達し、
ていました。
マン主義の文化運動です。一つの<世代>
情を欠く機械文明と俗物の支配に呵責ない論難を加えていったので
法律家となった若きトクヴィルは、
ます。平等な人々が、
ていくアメリカの共和主義をトクヴィルは高く評価していました。
リカは、
りました。『アメリカの民主主義』のなかでトクヴィルは、
て過度に個人の利益を追求し孤独に陥ったアメリカ人たちが、
めるために、
豊かな社会のなかでは、労せずとも必要なものが手に入るので、
は小さくなります。
になるので、他者が行動の基準になります。そうした人間は、
るものを自分がもっていないと不安に陥りやすい。
ない人は、羨望に支配されやすくなるとトクヴィルは言います。「
呼ばれるいまの若者は、
ちでもあります。トクヴィルのこの洞察は、
トクヴィルは、現実政治の世界にも身を投じています。
内務大臣の地位に就きました。しかし、当時のフランス政界では、
ような利益誘導に政治家たちが血道をあげていました。そして、
かり、理想を語ることのできない俗物に支配された政界に、
を覚えます。利益誘導の政治。教養を欠いた俗物政治家。
昔も変わりません。深い憂鬱にとらわれ、
と並ぶ「世紀病」であった結核のために、この世を去っています。
◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、
ノが書けることに感謝。
最新刊「若者は日本を変えるか-世代間断絶の社会学」世界思想社
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